司法書士の過去問
平成30年度
午後の部 問61
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問題
平成30年度 司法書士試験 午後の部 問61 (訂正依頼・報告はこちら)
Aを所有権の登記名義人とする甲土地についての仮登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア AからBへの所有権の移転の仮登記がされている場合には、Bを設定者、Cを抵当権者とする抵当権設定請求権の保全の仮登記を申請することができる。
イ AからBへの売買予約を登記原因とする所有権移転請求権の保全の仮登記がされた後、BからCへの当該請求権の一部の移転の登記がされた場合には、当該仮登記に基づく本登記は、A及びCが共同して申請することができる。
ウ AからBへの売買予約を登記原因とする所有権移転請求権の保全の仮登記がされた後、Bが当該売買を完結する意思表示をしたことにより、当該仮登記に基づく本登記がされた場合において、Bの当該意思表示に錯誤があるときは、A及びBが共同して当該本登記の抹消を申請することができる。
エ AからBへの所有権の移転の仮登記がされた後、当該仮登記を目的としてCを仮処分の債権者とする所有権の移転の仮登記の処分禁止の登記がされている場合において、当該仮登記に基づく本登記を申請するときは、Cの承諾を証する情報を提供しなければならない。
オ Bを抵当権者とする抵当権の設定の仮登記がされた後、AからCへの売買を登記原因とする所有権の移転の登記がされた場合には、当該仮登記に基づく本登記は、A及びBが共同して申請することができる。
ア AからBへの所有権の移転の仮登記がされている場合には、Bを設定者、Cを抵当権者とする抵当権設定請求権の保全の仮登記を申請することができる。
イ AからBへの売買予約を登記原因とする所有権移転請求権の保全の仮登記がされた後、BからCへの当該請求権の一部の移転の登記がされた場合には、当該仮登記に基づく本登記は、A及びCが共同して申請することができる。
ウ AからBへの売買予約を登記原因とする所有権移転請求権の保全の仮登記がされた後、Bが当該売買を完結する意思表示をしたことにより、当該仮登記に基づく本登記がされた場合において、Bの当該意思表示に錯誤があるときは、A及びBが共同して当該本登記の抹消を申請することができる。
エ AからBへの所有権の移転の仮登記がされた後、当該仮登記を目的としてCを仮処分の債権者とする所有権の移転の仮登記の処分禁止の登記がされている場合において、当該仮登記に基づく本登記を申請するときは、Cの承諾を証する情報を提供しなければならない。
オ Bを抵当権者とする抵当権の設定の仮登記がされた後、AからCへの売買を登記原因とする所有権の移転の登記がされた場合には、当該仮登記に基づく本登記は、A及びBが共同して申請することができる。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:正
1号仮登記された所有権であっても所有権であることに変わりはないので、仮登記された所有権を目的として第三者のために抵当権の設定をすることができます。ただし、仮登記所有権は対抗力のない権利なので、これを目的とする抵当権の設定も仮登記によって申請することになります。
イ:誤
仮登記された所有権移転請求権の一部が、第三者に移転し、所有権移転請求権の一部移転登記がされている場合、当該仮登記に基づく本登記は、仮登記権利者全員が同時に申請することを要します(昭35.5.10民三328号)。したがって、B及びCが登記権利者、Aが登記義務者となって申請します。
ウ:正
売買を完結する意思表示について錯誤があるので、当該仮登記に基づく本登記のみの抹消の申請をすることができます。したがって、Aが登記権利者、Bが登記義務者となって共同して当該本登記の抹消を申請することができます。
エ:誤
所有権の移転の仮登記を目的として処分禁上の登記がされている場合において、当該仮登記に基づく本登記を申請するときは、仮処分の債権者は登記上の利害関係を有する第三者に当たりません(昭48.7.21民三5608号)。したがって、仮処分の債権者であるCの承諾を証する情報を提供することを要しません。
オ:正
所有権以外の権利の仮登記がされた後に、第三者に所有権移転登記がされた場合において、当該仮登記に基づく本登記を申請するとき、その申請における登記義務者は、仮登記の登記義務者でも、現在の所有権の登記名義人でもどちらでもよいです(昭37.2.13民三75号)。
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02
正解:4
<解説>
ア:正しいです。
1号仮登記によって保全された所有権は、これを目的として抵当権を設定し登記を申請することもできます。
したがって、本肢は正しいです。
イ:誤りです。
仮登記された所有権移転請求権の一部を移転した場合には、その仮登記に基づく本登記の申請は仮登記権利者全員が同時に申請しなければなりません(昭35・5・10民三328号)。
すなわち、本肢の場合には、B及びCがAに対して予約完結権を行使して、B及びCがAと共同して本登記の申請をしなければなりません。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:正しいです。
仮登記がされた後に本登記をし、その本登記をすることとなった原因に錯誤があったことが判明した場合には、仮登記を残して本登記のみを抹消することができます (昭40・3・17民甲533参照)。
その場合の登記は、本登記時の登記権利者を登記義務者、本登記時の登記義務者を登記権利者として共同申請でします。
したがって、本肢は正しいです。
エ:誤りです。
所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、申請するにあたって当該第三者の承諾が必要です (不動産登記法109条①)。
しかし、本肢におけるCは仮登記を目的とした仮処分の債権者として、所有権の移転の仮登記の処分禁止の登記がされているのであるから、仮登記に基づいて本登記がされても、その権利は否定されず不利益を受けないので、登記上の利害関係人には該当しません。
このことからCの承諾を証する情報を提供する必要はありません。
したがって、本肢は誤りです。
オ:正しいです。
抵当権設定の仮登記後に第三者への売買による所有権の移転の登記がされた場合には、抵当権設定の仮登記に基づく本登記の登記義務者は、抵当権設定者又は仮登記後に所有権の取得の登記を受けた者のいずれでも差し支えありません(昭37・2・13民三75号)。
これにより、本肢の場合には、Bは、Aと共同して抵当権設定の登記を申請することも、Cと共同して抵当権設定の本登記を申請することもできます。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、誤っているものは肢イ・エであり、正解は4となります。
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03
正解 4
ア 正しい
所有権の移転の仮登記名義人であっても、所有者であるから、抵当権の設定の予約をすることができます。
よって、本肢において、Bを設定者、Cを抵当権者とする抵当権設定請求権の保全の仮登記をすることができます。
イ 誤り
所有権移転請求権の一部の移転の登記がされた場合、当該仮登記に基づく本登記は、仮登記権利者全員が同時に申請しなければなりません(昭和35年5月10日民三328号)。
本肢の場合、B及びCが登記権利者、Aが登記義務者となって共同で申請する必要があります。
ウ 正しい
仮登記の本登記がされた場合において、本登記の原因に錯誤がある場合は、本登記のみの抹消を申請することができます。
本肢では、前の所有権登記名義人であるAが登記権利者、抹消の対象である本登記の登記名義人であるBが登記義務者となって共同して当該本登記の抹消を申請することができます。
エ 誤り
所有権の移転の仮登記の処分禁止の登記がされている場合において、当該仮登記に基づく本登記を申請するときは、仮処分の債権者は登記上の利害関係を有する第三者に該当しません(昭和48年7月21日民三5608号)。
よって、本肢の場合、仮登記に基づく本登記を申請するときに、仮処分の債権者であるCの承諾証明情報を提供する必要はありません。
オ 正しい
抵当権の設定の仮登記に基づく本登記の申請において、所有権の移転の登記がされている場合の登記義務者は、当初の仮登記義務者、現在の所有権登記名義人のどちらでもよいとされています(昭和37年2月13日民三75号)。
よって、本肢では、Bが登記権利者となり、登記義務者はACのどちらでも構いません。
よって、誤っている肢はイとエとなり、4が正解となります。
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