司法書士の過去問
平成30年度
午後の部 問59

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問題

平成30年度 司法書士試験 午後の部 問59 (訂正依頼・報告はこちら)

抵当権又は根抵当権の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  抵当権の設定の登記がされている土地について、当該抵当権の登記名義人である株式会社A銀行の代表者Bは、抵当権設定者Cと共に、登記原因証明情報として、支配人の登記がされていない株式会社A銀行の支店長Dが作成した解除証書を提供して、当該抵当権の抹消の登記を申請することができる。

イ  乙区1番(あ)で登記された抵当権の登記名義人Aが、乙区1番(い)で登記された抵当権の登記名義人Bに対して抵当権の順位を譲渡したときは、A及びBは、共同して抵当権の順位の譲渡の登記を申請することができる。

ウ  Aを根抵当権の登記名義人とする元本確定前の根抵当権についてBへの分割譲渡の登記を申請するときは、申請情報の内容として提供する極度額はBを根抵当権の登記名義人とする根抵当権の極度額で足りる。

エ  共同根抵当権の追加設定をする場合において、既に登記がされている根抵当権の債務者の住所について区制施行による変更があったときは、当該債務者の住所の変更の登記を申請することなく、共同根抵当権の追加設定の登記を申請することができる。

オ  共同根抵当権の設定の登記がされている甲土地及び乙土地について、極度額の変更による当該根抵当権の変更の登記の申請をする場合において、その極度額を変更する契約の締結日の翌日に甲土地の利害関係人が承諾し、更にその翌日に乙土地の利害関係人が承諾したときは、当該根抵当権の変更の登記の申請は、一の申請情報ですることができない。
  • アイ
  • アエ
  • イウ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01


正解 4

ア 正しい
法人が登記義務者である場合、登記原因証明情報は、当該法人の代表者又はこれに代わるべき者が作成したものであることが必要です。ここでいう「これに代わるべき者」には、支配人登記のされている支店長等のほか、支配人登記がされていない支店長等も含まれると解されています。
よって、株式会社A銀行の代表者Bは、支配人登記がされていない株式会社A銀行の支店長Dが作成した解除証書を登記原因証明情報として、抵当権設定者Cと共に、当該抵当権の抹消の登記を申請することができます(昭和58年3月24日民三2205号)。

イ 正しい
同順位の抵当権者間で順位を譲渡する場合、当事者は共同して抵当権の順位の譲渡の登記を申請することができます(昭和28年11月6日民甲1940号)。

ウ 誤り
根抵当権の分割譲渡の登記を申請する場合、申請情報として、分割後の各根抵当権の極度額を提供しなければなりません(不動産登記令別表申請情報ハ)。
よって、本肢においては、Bを登記名義人とする根抵当権の極度額に加え、Aを登記名義人とする根抵当権の極度額を申請情報の内容として提供する必要があります。

エ 正しい
共同根抵当権の追加設定の登記を申請する場合において、根抵当権の債務者の住所に変更がある場合は、その前提として、債務者の住所の変更登記をする必要があります。
もっとも、債務者の住所変更が区制施行による変更である場合には、住所の変更登記を経る必要はありません(平成22年11月1日民二2759号)。

オ 誤り
同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する担保権に関する登記であって、登記の目的が同一であるときは、一の申請情報で登記を申請することができます(不動産登記令4条ただし書、不動産登記規則35条10号)。
本肢のように、共同根抵当権の極度額の変更登記を申請する場合において、各不動産の登記原因日付が異なる場合も同じです。

よって、誤っている肢はウとオとなり、4が正解となります。

参考になった数9

02

正解:4

ア:正
支配人の登記がされていない銀行の支店長が作成した弁済証書または解除証書を登記原因証明情報として提供し、当該銀行の代表者は抵当権設定者と共に抵当権の抹消の登記を申請することができます(昭58.3.24民三2205号)。

イ:正
同順位の抵当権者間において順位を譲渡し、その旨の登記を申請することができます(昭28.11.6民甲1940号)。

ウ:誤
根抵当権の分割譲渡の登記を申請する場合、分割譲渡後の各根抵当権の極度額を申請情報の内容としなければなりません(不登令別表60申ハ)。したがって、本肢の場合、Aを根抵当権の登記名義人とする根抵当権の極度額も申請情報の内容としなければなりません。

エ:正
既に登記されている根抵当権の債務者について、区制施行によって住所が変更された場合においては、共同根抵当権の追加設定の登記の前提として当該債務者の住所の変更登記を申請することを要しません(平22.11.1民二2759号)。

オ:誤
同一の登記所の管轄区域内にある2以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権に関する登記であって、登記の目的が同一であるときは、これらの2以上の登記の申請を一の申請情報で申請することができます(不登規35⑩)。本肢のように極度額の変更に対して、利害関係人が異なる日に承諾したときは、登記原因日付が異なることとなるが、このような場合であっても当該根抵当権の変更の登記の申請は、一の申請情報ですることができます。

参考になった数4

03

正解:4

<解説>

ア:正しいです。

支配人登記のされていない銀行支店長が作成した弁済証書又は解除証書を、登記原因を証する書面として、これを提供して銀行代表者は抵当権の抹消登記を申請することができます(昭58・3・24民三2205号)。

したがって、本肢は正しいです。

イ:正しいです。

同順位で登記された二抵当権者間では、一方が他方に劣後するため、その順位を譲渡することができます。

この場合、後順位に他の抵当権者が存在しても、その承諾は不要です。

(昭28・11・6民甲1940号)

したがって、本肢は正しいです。

ウ:誤りです。

根抵当権の分割譲渡の登記を申請するときは、申請情報の内容として、「分割後の各根抵当権の極度額」を提供しなければならないので(不動産登記令別表60申請情報欄ハ)、本肢の場合、分割した根抵当権であるBの根抵当権の極度額だけでは足りず、分割後の元根抵当権であるAの根抵当権の極度額も申請情報の内容として提供しなければなりません。

したがって、本肢は誤りです。

エ:正しいです。

共同根抵当権の追加設定をする場合には、民法398条の16の規定により「同一の債権の担保として」根抵当権を設定する必要があるため、追加設定する根抵当権の「極度額」「被担保債権の範囲」及び「債務者」は、前の登記と同一であることを要しますが、既に登記がなされている根抵当権の債務者の住所について区政施行による変更があったときは、当該債務者の住所の変更の登記を申請することなく、共同根抵当権の追加設定の登記を申請することができます(平22・11・1民二2759号)。
したがって、本肢は正しいです。

オ:誤りです。

同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する担保権に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき一の申請情報によって申請することができます(不動産登記規則35条(10))。

この要件を満たせば、不動産ごとに利害関係人が異なっていても、登記原因の日付が異なっていても、一の申請情報で登記を申請することができます。

したがって、本肢は誤りです。

以上により、誤っているものは肢ウ・オであり、正解は4となります。

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