司法書士の過去問
平成31年度
午前の部 問3
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問題
平成31年度 司法書士試験 午前の部 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
次の三つの見解は、独立行政委員会を合憲とする見解に関するものである。次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、どれか。
第1説 独立行政委員会は、内閣のコントロールの下にあり、合憲である。
第2説 独立行政委員会は国会のコントロールの下にあり、合憲である。
第3説 独立行政委員会は、その職務の特殊性に鑑み、合憲である。
ア 第1説に対しては内閣が人事権と予算権を有することのみでコントロールの下にあるとすれば、裁判所も内閣から独立していないことになるとの批判がある。
イ 第1説の理由の一つとして、独立行政委員会の職務全般に対して、内閣の直接的な指揮監督が及ぶことが挙げられる。
ウ 第1説の理由の一つとして、憲法第65条は、立法権や司法権と異なり、行政権を内閣に専属させるような限定的な文言を用いていないことが挙げられる。
工 第2説の理由の一つとして、憲法第65条は行政への民主的コントロールを最終的に求めているものであり、仮に内閣のコントロールが十分に及ばなくとも、国会が直接にコントロールできるならば憲法上許容されることが挙げられる。
オ 第3説の理由の一つとして、多様な行政の中には、特に政治的に中立の立場で処理されなければならない行政事務があるため、内閣から独立の機関に処理させることが憲法上許容されることが挙げられる。
(参考)憲法 第65条行政権は、内閣に属する。
第1説 独立行政委員会は、内閣のコントロールの下にあり、合憲である。
第2説 独立行政委員会は国会のコントロールの下にあり、合憲である。
第3説 独立行政委員会は、その職務の特殊性に鑑み、合憲である。
ア 第1説に対しては内閣が人事権と予算権を有することのみでコントロールの下にあるとすれば、裁判所も内閣から独立していないことになるとの批判がある。
イ 第1説の理由の一つとして、独立行政委員会の職務全般に対して、内閣の直接的な指揮監督が及ぶことが挙げられる。
ウ 第1説の理由の一つとして、憲法第65条は、立法権や司法権と異なり、行政権を内閣に専属させるような限定的な文言を用いていないことが挙げられる。
工 第2説の理由の一つとして、憲法第65条は行政への民主的コントロールを最終的に求めているものであり、仮に内閣のコントロールが十分に及ばなくとも、国会が直接にコントロールできるならば憲法上許容されることが挙げられる。
オ 第3説の理由の一つとして、多様な行政の中には、特に政治的に中立の立場で処理されなければならない行政事務があるため、内閣から独立の機関に処理させることが憲法上許容されることが挙げられる。
(参考)憲法 第65条行政権は、内閣に属する。
- アイ
- アエ
- イウ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:正
第1説に対し、人事権と予算権を有することのみをもって内閣のコントロールの下にあることを肯定すると、独立である裁判所も内閣のコントロールの下にあることになってしまう、という批判があります。
イ:誤
なんらかの意味で内閣のコントロールの下にあるとしても、独立行政委員会が内閣から独立して職務を行う合議制の行政機関である以上、「独立行政委員会の職務全般に対して、内閣の直接的な指揮監督が及ぶこと」を第1説の理由とすることはできません。
ウ:誤
憲法第65条が「立法権や司法権と異なり、行政権を内閣に専属させるような限定的な文言を用いていない」ということは、つまり、すべての行政権が内閣に帰属することを要求していないと解すべきであって、それに対し、第1説は、すべての行政権が内閣に帰属することを要求しているとする見解なので、第1説の理由にはなりません。
エ:正
「国会が直接にコントロールできるならば憲法上許容される」と国会によるコントロールについて述べられているので、独立行政委員会が国会のコントロールの下にあることにより合憲であると主張する第2説の理由となります。
オ:正
「特に政治的に中立の立場で処理されなければならない行政事務」とあるので、職務の特殊性に基づいて、独立してそれを行使する必要性があると主張する第3説の理由となります。
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02
ア…正しいです。第1説は、独立行政委員会が内閣から完全に独立していないとする説明です。しかし、これについては、本文にある通り、内閣が委員会に人事権と予算権を有することしか根拠がなく、他方、内閣は裁判所にも人事権や予算権を有していることから、権力分立すら否定することになります。
イ…誤りです。第1説でも、内閣の直接的な指揮監督が独立行政委員会に及ぶわけではありません。独立行政委員会は、いずれも合議制の機関であり、委員による議決をもとにその事務を行います。
ウ…誤りです。憲法65条には、「唯一の立法機関(41条)」、「すべて司法権は…裁判所に属する(76条)」のように、国会(立法権)、裁判所(司法権)のような限定詞がついておらず、行政権を内閣に限ったものではない、と解することができる、というのが本文の説明です。したがって、独立行政委員会は内閣から独立しているが、もともと行政権は内閣のみに認められた権利ではないと考えることができます。しかしこれは、独立行政委員会が内閣のコントロール下にないことを認める説の根拠となるので、第1説とは矛盾します。
エ…正しいです。民主的コントロール(=権力分立による統制がとれ、行政の責任を負う民主的機関が明確になっている状態)が保たれるのであれば、行政権の行使を内閣にのみ監督させる必要はなく、行政権の一部である独立行政委員会を国会のコントロール下に置いてもよい、ということができます。また、第2説の他の根拠としては、内閣の行政権による過度な人権侵害を抑制するために、国会が内閣とは別個の行政作用を持ち、均衡をはかるべきであるとするものがあり、この別個の行政作用を独立行政委員会とします。
オ…正しいです。第3説は、独立行政委員会は、人事院における公務員の人事や、公正取引委員会における独占禁止法の施行など、政治的中立性が要請される事務のみを限定的に処理するため、内閣のコントロール下に置くのは適切ではなく、独立させることは許容範囲内であるという考え方です。この場合の憲法65条の解釈としては、条文中の「行政権」は内閣が行う行政の高度な政治的作用にのみ言及したものであり、独立行政委員会の扱うような非政治的作用は「行政権」に含まれないとします。なお、第3説の他の根拠としては、独立行政委員会の事務として、裁決などの準司法的作用、規則制定などの準立法的作用が含まれるので、独立させるべきであるというものがあります。
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03
ア:正
第1説のような理解に対しては、裁判所の人事(憲法79条1項・80条1項、裁判所法39条1項・2項、40条1項など参照)と予算(憲法73条5号、86条)に対する内閣の権限からすると、裁判所も内閣から独立していないことになるとの批判が可能です。
よって、正しい記述です
イ:誤
独立行政員会は、内閣の指揮監督から、職権行使上の独立性が認められるものです。第1説も、独立行政員会の職務全般に対して、内閣の直接的な指揮監督が及ぶことを根拠とするのではなく、任命権、予算権等が留保されていることを内閣のコントロールの下にあることの根拠とするものです。
したがって、「独立行政委員会の職務全般に対して、内閣の直接的な指揮監督が及ぶこと」は第1説の根拠とはなりません。
よって、誤った記述です。
ウ:誤
「憲法第65条は、立法権や司法権と異なり、行政権を内閣に専属させるような限定的な文言を用いていない」というのは、次のような意味です。
憲法は、立法権について「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」(41条)と規定し、「唯一の立法機関」という文言で、司法権について「すべて司法権」(76条1項)と規定しており、立法権と司法権とをそれぞれ国家と司法府とに専属させるかのような文言を用いています。これに対して、65条は、65条「行政権は、内閣に属する」と規定するのみで、専属させるような限定的な文言を用いていないため、行政権が内閣以外に属することになっても憲法に反しないということです。
このことは、必ずしも行政権が内閣に帰属する必要はないとするものであって、「内閣のコントロール」が独立行政委員会に及ぶことを重視する第1説とは異なります。
よって、誤った記述です。
エ:正
任命権に関する両議院の同意権などを通して、独立行政員会に対して国会が直接コントロールできるとすれば、独立行政員会を含む行政に対して民主的コントロールが及んでいることになります。
したがって、憲法第65条は行政への民主的コントロールを最終的に求めているものであり、仮に内閣のコントロールが十分に及ばなくとも、国会が直接にコントロールできるならば憲法上許容されることは、第2説の根拠とすることができます。
よって、正しい記述です。
オ:正
第3説は「独立行政委員会は、その職務の特殊性に鑑み、合憲である」と、「職務の特殊性」に着目した見解です。
多様な行政の中には、準司法作用や選挙の管理といった、中立的立場で処理されなければならない行政事務があります。このような職務の特殊性があることは、第3説の理由とすることができます。
よって、正しい記述です。
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