司法書士の過去問
平成31年度
午前の部 問6
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問題
平成31年度 司法書士試験 午前の部 問6 (訂正依頼・報告はこちら)
取得時効に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。
ア 土地の所有権は、一筆の土地の一部のものであっても、時効により取得することができる。
イ 建物の賃借人は、当該建物の賃貸人による当該建物の敷地の取得時効を援用することができる。
ウ 賃借権は、時効により取得することができる。
エ 被相続人の占有によって取得時効が完成した場合に、その共同相続人のうちの一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
オ 他人の土地を20年間通路を開設することのないまま通行した隣地の所有者は、その他人の土地について、通行地役権を時効により取得することができる。
ア 土地の所有権は、一筆の土地の一部のものであっても、時効により取得することができる。
イ 建物の賃借人は、当該建物の賃貸人による当該建物の敷地の取得時効を援用することができる。
ウ 賃借権は、時効により取得することができる。
エ 被相続人の占有によって取得時効が完成した場合に、その共同相続人のうちの一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
オ 他人の土地を20年間通路を開設することのないまま通行した隣地の所有者は、その他人の土地について、通行地役権を時効により取得することができる。
- アイ
- アエ
- イオ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:正
一筆の土地の一部についても、所有権の時効取得が認められます(大判大13.10.7)。
イ:誤
建物を貸借しているにすぎない当該建物の賃借人は、敷地の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないから、当該建物の賃貸人による当該建物の敷地の取得時効を援用することができません(最判昭44.7.15)。
ウ:正
判例は、土地賃借権の時効取得については、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、民法163条に従い土地賃借権の時効取得が可能であると解するのが相当である(最判昭43.10.8)としています。
エ:正
被相続人の占有によって取得時効が完成した場合において、その共同相続人の1人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができます(最判平13.7.10)。
オ:誤
地役権の取得時効の要件として、承役地が継続して利用されていることが必要です。この「継続」について、判例は、通行地役権における継続とは、通路が開設したことが必要であり、また、この通路の開設は要役地所有権者によってなされることが必要である(最判昭30.12.26)としています。
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02
ア…正しいです。一筆の土地の一部について、譲渡または時効取得を認める必要が生じた場合には、その範囲が客観的に特定できるものである限り、当該一筆の土地の一部に所有権が成立します(大連判大13・10・7)。
イ…誤りです。建物賃借人は、建物賃貸人が土地を取得することによって直接に利益を得る者ではないため、敷地所有権の取得時効を援用できません(最判昭45・7・15)。
ウ…正しいです。他人の不動産の継続的な用益という外形的事実の存在と、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要件に、不動産賃借権にも取得時効が認められています(最判昭43・10・8)。不動産賃借権は債権ですが、物権と同様に扱うことができるためです。
エ…正しいです。判例では、時効の完成により利益を受ける者は、自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用できるものと解すべきであって、共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用できるにすぎない、としています(最判平13・7・10)。
オ…誤りです。地役権も取得時効の対象ですが、継続的に行使されており、かつ外形上認識できるものに限り時効取得することができます(283条)。「継続」の要件を満たすには、要役地の所有者によって承役地となる土地の上に通路が開設されたものであることを要するとされています(先例)。本問では通路が開設されておらず、認められる条件に該当しないと考えられます。
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03
ア:正
判例は、一筆の土地の一部のものであっても、その所有権を時効により取得することができるとしています(大民連判大正13年10月7日民集3巻509頁)。
よって、正しい記述です。
イ:誤
時効の援用は、「時効によって直接に利益を受けるべき者」(大判明治43年1月25日民録16輯22頁)にのみ認められます。
判例は、建物賃借人は、建物賃貸人の敷地所有権の取得時効について「時効によって直接利益を受けるべき者」にあたらないとし、その時効の援用を否定しています(最判昭和44年7月15日民集23巻8号1520頁)。
よって、誤った記述です。
ウ:正
民法163条は、「所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別[引用者注:所有権の取得時効について定めた162条の善意・悪意の区別]に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する」と定めていますので、所有権以外の財産権も事項による取得の可能性があります。
賃借権の時効取得について、判例は、「土地賃借権の時効取得については、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、民法163条に従い土地賃借権の時効取得が可能である」としています(最判昭和43年10月8日民集22巻10号2145頁)。
よって、正しい記述です。
エ:正
判例は、「時効の完成により利益を受ける者は自己が直接に受けるべき利益の存する限度で時効を援用することができるものと解すべきであって、被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができるにすぎないと解するのが相当である」(最判平成13年7月10日家月54巻2号134頁)
よって、正しい記述です。
オ:誤
時効による通行地役権の取得は、「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り」認められます(民法283条)。
判例は、この要件について、通路が開設されており、この通路が要役地の所有者によって行わたのでなければならないとしています(最判昭和30年12月26日民集9巻14号2097頁、最判昭和33年2月14日民集12巻2号268頁、最判平成6年12月16日判時1521号37頁)。
よって、誤った記述です。
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