司法書士の過去問
平成31年度
午前の部 問26
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問題
平成31年度 司法書士試験 午前の部 問26 (訂正依頼・報告はこちら)
名誉毀損罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。
ア 名誉毀損罪における名誉の主体である「人」は、自然人に限られ、法人を含まない。
イ 名誉毀損罪が成立するためには現実に人の社会的評価を低下させたことまでは要しない。
ウ 「公然」と事実を摘示したといえるためには、摘示された事実を不特定又は多数人が認識することのできる状態に置くだけでは足りず、現実に認識することを要する。
工 名誉毀損罪が成立するためには、人の社会的評価を低下させる事実を摘示することの認識があれば足り、積極的に人の名誉を毀損する目的・意図を要しない。
オ 専ら公益目的で、公然と公共の利害に関する事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為をした者が当該事実の真実性を証明し得なくとも、真実性を誤信したことにつき確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、名誉毀損罪は成立しない。
ア 名誉毀損罪における名誉の主体である「人」は、自然人に限られ、法人を含まない。
イ 名誉毀損罪が成立するためには現実に人の社会的評価を低下させたことまでは要しない。
ウ 「公然」と事実を摘示したといえるためには、摘示された事実を不特定又は多数人が認識することのできる状態に置くだけでは足りず、現実に認識することを要する。
工 名誉毀損罪が成立するためには、人の社会的評価を低下させる事実を摘示することの認識があれば足り、積極的に人の名誉を毀損する目的・意図を要しない。
オ 専ら公益目的で、公然と公共の利害に関する事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為をした者が当該事実の真実性を証明し得なくとも、真実性を誤信したことにつき確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、名誉毀損罪は成立しない。
- アイ
- アウ
- イエ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:誤
判例・通説においては、名誉毀損罪の保護法益である「名誉」とは外部的名誉であるとし、人物の社会的評価や価値を指し、人の名誉感情ではないとしています。名誉を社会的価値、評価と捉えるならば、自然人に限らず、法人も含まれることになります。
イ:正
名誉毀損罪の「毀損」とは、公然と人の社会的地位を貶するに足るべき具体的事実を適示して、名誉低下の危険状態を発生させることであるから、現実に人の社会的評価を低下させたことまでは要しません(大判昭和13.2.28)。
ウ:誤
刑法第230条の「公然」とは、不特定または多数の視聴に達し得るべき状態をいいます(最判昭34.5.7)。よって、現実に認識することまでは要しません。
エ:正
名誉毀損罪が成立するには、行為が人の名誉を毀損することを認識していれば足り、さらに人の名誉を毀損する目的に出たものであることを要しません(大判大6.7.3)。
オ:正
判例は、刑法第230条の2第1項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である(最大判昭44.6.25)としています。
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02
正解 2
ア 誤り
判例・通説では、名誉毀損罪の保護法益である「名誉」とは、外部的名誉であるとし、具体的には、人の社会的評価や価値を意味するものとされています。
この立場からは、法人も名誉棄損罪における名誉の主体に含まれることになります。
イ 正しい
名誉毀損罪は、抽象的危険犯と解されているため、現実に人の社会的評価が低下することまでは必要ありません(大判昭和13年2月28日)。
ウ 誤り
名誉棄損罪にいう「公然」とは、不特定または多数の人の視聴に達しめ得る状態をいいます(最判昭34年5月7日)。
よって、摘示された事実を不特定又は多数人が認識することのできる状態に置くことで足り、現実に認識することまでは必要ありません。
エ 正しい
名誉毀損罪は、人の名誉を毀損することを認識しながら、公然と事実を摘示することによって成立し、名誉を毀損しようという目的・意図に出ることまで要しません(大判大正6年7月3日)。
オ 正しい
判例は、摘示した事実が真実であることの証明ができなかった場合でも、確実な資料・根拠に基づいて事実を真実と誤信した場合には、故意を欠くため、名誉毀損罪は成立しない(最大判昭和44年6月25日)としています。
以上から、誤っている選択肢はアとウとなり、正解は2となります。
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03
ア:誤
判例は、名誉毀損罪における名誉の主体である「人」に法人を含むとしています(大判大正15年3月24日刑集5巻117頁)。
法人も、一定の社会的評価の対象となるものであり、自然人と同様に社会的な活動を行っているのであるから、そのような評価は保護に値すると考えられるからです。
よって、誤った記述です。
イ:正
判例は、名誉毀損罪が成立するためには現実に人の社会的評価を低下させたことまでは要しないとしています(大判昭和13年2月28日刑集17巻141頁)。
よって、正しい記述です。
ウ:誤
判例は、事実摘示の相手方が特定の少数の者であっても、その者らを通じて不特定多数人へと伝播する可能性がある場合には、「公然」となされたといえるとして、名誉毀損罪の成立を認めています(大判大正8年4月18日新聞1556号25頁、最判昭和34年5月7日刑集13巻5号641頁など)。
よって、誤った記述です。
エ:正
判例は、名誉毀損罪の故意を認めるためには、行為が人の名誉を毀損するとの認識があれば足り、積極的に人の名誉を毀損する意図・目的は必要ないとしています(大判大正6年7月3日刑録23輯728頁)。
よって、正しい記述です。
オ:正
真実性の証明による免責が認められるためには、「真実であることの証明」が必要ですが(刑法230条の2第1項)、判例は、「人権としての個人の名誉の保護と、憲法21条による正当な言論の保障との調和」を図らなければならないとして、次のような場合には故意を否定することで、名誉毀損罪の成立も否定しています。
「行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるとき」は名誉毀損罪の故意が認められず、名誉毀損罪は成立しないとしています(最大判昭和44年6月25日刑集23巻7号975頁)。
よって、正しい記述です。
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