司法書士の過去問
平成31年度
午前の部 問28
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問題
平成31年度 司法書士試験 午前の部 問28 (訂正依頼・報告はこちら)
株式の分割と株式無償割当てに関する次の1から5までの記述のうち、正しいものは、どれか。
- 株式会社が株式無償割当てをする場合には、自己株式を有する当該株式会社に対しても株式を割り当てることができる。
- 株式会社が株式の分割をする場合には、株主の有する株式と異なる種類の株式を当該株主に取得させることができる。
- 株式会社が株式無償割当てをする場合には、当該株式会社の株主に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に1株に満たない端数が生ずることがある。
- 現に2以上の種類の株式を発行している株式会社であっても、株式の分割をする場合には、株主総会の決議によらないで、発行可能株式総数を増加する定款の変更をすることができる。
- 株式会社が株式無償割当てをする場合には、資本金の額が増加する。
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この過去問の解説 (3件)
01
正解 3
1 誤り
株式会社が株式無償割当てをする場合、自己株式を有する当該株式会社に対して株式を割り当てることはできません。
2 誤り
株式会社が株式の分割をする場合は、株主の有する株式と同一の種類の株式を取得させなければなりません。
3 正しい
株式無償割当てを受ける株主に当該株式会社の株式を交付する場合において、その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数があるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければなりません(会社法234条1項3号)。
同規定は、株式会社が株式無償割当てをする場合において、当該株式会社の株主に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数が生ずることがあることを予定している規定であるといえます。
4 誤り
株式会社(現に二以上の種類の株式を発行しているものを除く。)は、株主総会の決議によらないで、株式分割の効力が生じる日における発行可能株式総数をその日の前日の発行可能株式総数に、株式の分割により増加する株式の総数の株式の分割前の発行済株式の総数に対する割合を乗じて得た数の範囲内で増加する定款の変更をすることができます(会社法184条2項)。
本肢における株式会社は、現に二以上の種類の株式を発行しているため、株式の分割をするための定款変更には、株主総会の決議が必要です。
5 誤り
株式会社が株主に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の株式の割当てをすることを「株式無償割当て」といいます(会社法185条)。
よって、株式会社が株式無償割当てをしても資本金の額が増加することはありません。
以上から、正しい選択肢は3となり、正解は3となります。
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02
1:誤
株式会社が株式無償割当てをする場合において、自己株式を有する当該株式会社に対しては株式を割り当てることができません。
2:誤
株式会社が株式の分割をする場合において、株主に取得させることができる株式の種類は、当該株主の有する株式と同一の種類でなければなりません。
3:正
株式無償割当てを受ける株主に当該株式会社の株式を交付する場合において、その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数があるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければなりません(会234Ⅰ③)。
よって、株式会社が株式無償割当てをする場合に、当該株式会社の株主に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に1株に満たない端数が生ずることがあります。
4:誤
株式会社成立後の定款変更は、株主総会の決議によってするのが原則です(会466)。しかし、株式会社(現に二以上の種類の株式を発行しているものを除く。)は、株式の分割をする場合において、株主総会の決議によらないで、株式分割の効力が生じる日における発行可能株式総数をその日の前日の発行可能株式総数に分割の割合を乗じて得た数の範囲内で増加する定款の変更をすることができます(会183、184)。
本肢の株式会社は、現に二以上の種類の株式を発行しているので、当該定款変更をするには株主総会の決議を要します。
5:誤
株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して“新たに払込みをさせないで”当該株式会社の株式の割当て(株式無償割当て)をすることができます(会185)。
よって、株式会社が株式無償割当てをしても資本金の額は増加しません。
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03
1:誤
会社法186条2項は「前項第一号に掲げる事項についての定めは、当該株式会社以外の株主(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の種類株主)の有する株式(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の株式)の数に応じて同項第一号の株式を割り当てることを内容とするものでなければならない」と定め、株式無償割当ての対象から、自己株式を有する当該株式会社を除外しています。
よって、誤った記述です。
2:誤
株式分割によって株主が取得するのは、「基準日に有する株式」に一定の割合を乗じた数の株式です(会社法184条)。つまり、株主が取得するのは従来保有していたものと同一の種類の株式であって、異なる種類の株式を取得させることはできません。
よって、誤った記述です。
3:正
株式無償割当ては、「株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の株式の割当て」をすることで(会社法185条)、株主の有する株式の数に応じて株式を割り当てるので(186条2項)、1株に満たない端数が生ずることがあります。
また、このように端数が生じ得ることから、同法234条1項3号は、株式無償割当てにおいて、その端数の合計数に相当する数の株式を競売し、得られた代金を当該者に交付しなければならないと規定しています。
よって、正しい記述です。
4:誤
会社法184条2項「株式会社(現に2以上の種類の株式を発行しているものを除く。)は、第466条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、前条第2項第2号の日における発行可能株式総数をその日の前日の発行可能株式総数に同項第一号の割合を乗じて得た数の範囲内で増加する定款の変更をすることができる」と規定しており、株主総会決議によらずに、発行可能株式総数を増加する定款の変更をすることができる株式会社から、かっこ書で、「現に2以上の種類の株式を発行しているもの」を除外しています。
したがって、現に2以上の種類の株式を発行している株式会社が、株式の分割をする場合に、株主総会の決議によらないで、発行可能株式総数を増加する定款の変更をすることはできません。
よって、誤った記述です。
5:誤
株式無償割当ては、「新たに払込みをさせないで当該株式会社の株式の割当て」(会社法185条)をするものですから、資本金の額は増加しません。そのため、会社計算規則16条1項も「株式無償割当てをする場合には、資本金等増加限度額は、零とする」と規定しています。
なお、資本金等増加限度額とは「同条第1項[引用者注:会社法445条1項を指します]に規定する株主となる者が当該株式会社に対して払込又は給付をした財産の額」(同規則13条1項かっこ書)をいいます。
よって、誤った記述です。
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