司法書士の過去問
平成31年度
午前の部 問32
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問題
平成31年度 司法書士試験 午前の部 問32 (訂正依頼・報告はこちら)
純資産額が300万円を下回らない株式会社における剰余金の配当に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、どれか。
ア 指名委員会等設置会社は、配当財産を金銭以外の財産とし、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする旨を取締役会が定めることができることを内容とする定款の定めを設けることができる。
イ 株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合において当該剰余金の配当に関する職務を行った業務執行者が当該株式会社に対して負う金銭支払義務は、総株主の同意があるときは、その全額を免除することができる。
ウ 株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合には、当該株式会社の債権者は、当該剰余金の配当を受けた株主に対し、当該債権者が当該株式会社に対して有する債権額を限度として、当該株主が交付を受けた配当財産の帳簿価額に相当する金銭を支払わせることができる。
工 株式会社が定時株主総会の決議に基づき剰余金の配当をした場合において、配当財産の帳簿価額の総額が当該剰余金の配当がその効力を生ずる日における分配可能額を超えないときは当該剰余金の配当をした日の属する事業年度に係る計算書類につき定時株主総会の承認を受けた時において欠損が生じたときであっても、当該剰余金の配当に関する職務を行った業務執行者は、当該株式会社に対し、当該欠損の額を支払う義務を負わない。
オ 清算株式会社は、その株主に対し、剰余金の配当をすることができない。
ア 指名委員会等設置会社は、配当財産を金銭以外の財産とし、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする旨を取締役会が定めることができることを内容とする定款の定めを設けることができる。
イ 株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合において当該剰余金の配当に関する職務を行った業務執行者が当該株式会社に対して負う金銭支払義務は、総株主の同意があるときは、その全額を免除することができる。
ウ 株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合には、当該株式会社の債権者は、当該剰余金の配当を受けた株主に対し、当該債権者が当該株式会社に対して有する債権額を限度として、当該株主が交付を受けた配当財産の帳簿価額に相当する金銭を支払わせることができる。
工 株式会社が定時株主総会の決議に基づき剰余金の配当をした場合において、配当財産の帳簿価額の総額が当該剰余金の配当がその効力を生ずる日における分配可能額を超えないときは当該剰余金の配当をした日の属する事業年度に係る計算書類につき定時株主総会の承認を受けた時において欠損が生じたときであっても、当該剰余金の配当に関する職務を行った業務執行者は、当該株式会社に対し、当該欠損の額を支払う義務を負わない。
オ 清算株式会社は、その株主に対し、剰余金の配当をすることができない。
- アイ
- アエ
- イオ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:誤
会計監査人設置会社(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めを設けることができます。ただし、配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合は当該定款の定めを設けることはできません(会459Ⅰ④本文、但書)。
本肢の会社は指名委員会設置会社なので会計監査人設置会社です(会327Ⅴ)が、配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えない場合に該当するので、剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めを設けることができません。
イ:誤
株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合において、当該剰余金の配当に関する職務を行った業務執行者が当該株式会社に対して負う責任は、総株主の同意があれば、配当時における分配可能額を限度として当該業務執行者の責任を免除することができます。しかし、分配可能額を超える部分については免除することはできません(会462Ⅰ⑥Ⅲ、461Ⅰ⑧)。
ウ:正
株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合において、当該株式会社の債権者は、違法配当を受けた株主に対し、その交付を受けた金銭の帳簿価額に相当する金銭を支払わせることができます。ただし、当該額が当該債権者の有する債権額を超える場合は、当該債権額が限度となります(会462Ⅰ、463Ⅱ)。
エ:正
株式会社が剰余金の配当をした場合において、当該行為をした日の属する事業年度に係る計算書類に対する定時株主総会の承認を受けた時点で欠損が生じたときは、当該行為に関する職務を行った業務執行者は、当該株式会社に対し、当該欠損の額を支払う義務を負います(会465Ⅰ)。ただし、定時株主総会の決議に基づき剰余金の配当をした場合には、当該業務執行者は当該支払義務を負いません。
オ:正
清算株式会社は、その株主に対し、剰余金の配当をすることができません(会509Ⅰ②)。
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02
ア:誤
指名等委員会設置会社は、会計監査人設置会社(会社法2条11号、327条5項)ですので、一定の場合には剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めを設けることができます(459条1項柱書)。
剰余金の配当について(454条1項、4項)について定めることも認められます(459条1項4号本文)。
しかし、「配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする」ことは認められません(同号ただし書)。
よって、誤った記述です。
イ:誤
株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合において当該剰余金の配当に関する職務を行った業務執行者が当該株式会社に対して負う金銭支払義務(462条1項柱書、461条1項8号)を免除する場合、総株主の同意による免除は「分配可能額を限度」としてのみ認められます(462条3項ただし書)。
総株主の同意をもってしても、この義務の全額の免除をすることは認められません。
よって、誤った記述です。
ウ:正
株式会社が分配可能額を超えて剰余金を配当した場合(会社法461条1項・2項)には、この分配を受けた株主は、「当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務」を負います(462条1項柱書)。そして、この場合に、株式会社の債権者は、この義務を負う株主に対し、「交付を受けた金銭等の帳簿価額(当該額が当該債権者の株式会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせること」ができます(463条2項)。
よって、正しい記述です。
エ:正
計算書類が株主総会で承認を受けた(会社法438条2項)時点で、分配可能額を超えて剰余金の配当等が行われていた場合には、これに関する職務を行った業務執行者は、会社に対して連帯して、その超過額を支払う義務を負います(465条1項柱書)。
しかし、剰余金の配当については、対象となる場合が、同項10号に定められています。
そこでは、「剰余金の配当(次のイからハまでに掲げるものを除く。) 当該剰余金の配当についての第四百四十六条第六号イからハまでに掲げる額の合計額」とされ、このかっこ書にいうイないしハには、「イ 定時株主総会(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、定時株主総会又は第四百三十六条第三項の取締役会)において第四百五十四条第一項各号に掲げる事項を定める場合における剰余金の配当」があげられています。
設例は、定時株主総会の決議で会社法454条1項各号の事項を定め、これに基づいて剰余金の配当を行っている場合にあたりますので、465条1項10号イにあたります。
したがって、465条1項10号かっこ書により超過額の支払義務の対象から除外されます。
よって、正しい記述です。
オ:正
会社法509条1項2号は、清算株式会社について、「第5章第2節第2款(第435条第4項、第440第3項、第442条及び第443条を除く。)及び第3款並びに第3節から第5節まで」を適用しないと定めています。剰余金の配当について定めているのは、会社法(第2編)第5章第4節と第5節ですので、清算株式会社については適用されません。
よって、正しい記述です。
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03
正解 1
ア 誤り
会計監査人設置会社(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、剰余金の配当に関する事項を取締役会が定めることができる旨を定款で定めることができます。
もっとも、配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合は除かれます(会社法459条1項4号)。
本肢について見ると、指名委員会設置会社は会計監査人設置会社であるため(同327条5項)、剰余金の配当に関する事項を取締役会で定めることができる旨を定款で定めることができますが、配当財産を金銭以外の財産とし、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする旨を取締役会が定めることができることを内容とする定款の定めを設けることはできません。
イ 誤り
株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合において当該剰余金の配当に関する職務を行った業務執行者が当該株式会社に対して負う義務は、免除することができません。もっとも、総株主の同意があることを条件に分配可能額を限度として当該義務を免除することは可能です(会社法462条3項)。
よって、総株主の同意があるとしても、その全額を免除することはできません。
ウ 正しい
株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当をした場合には、株式会社の債権者は、金銭支払義務を負う株主に対し、その交付を受けた金銭の帳簿価額(当該額が当該債権者の株式会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができます(会社法463条2項)。
エ 正しい
株式会社が剰余金の配当をした場合において、当該行為をした日の属する事業年度に係る計算書類につき定時株主総会の承認を受けた時に欠損が生じているときは、当該行為に関する職務を行った業務執行者は、当該株式会社に対し、連帯して、その超過額(欠損額)を支払う義務を負います(会社法465条1項)。
もっとも、定時株主総会の決議により剰余金を配当した場合には、業務執行者はその超過額の支払義務を負いません。
オ 正しい
清算株式会社において、剰余金の配当に関する規定は適用除外とされています(会社法509条1項2号)。
よって、清算株式会社は、その株主に対し、剰余金の配当をすることはできません。
以上から、誤っている選択肢はアとイとなり、正解は1となります。
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