司法書士の過去問
平成31年度
午前の部 問33

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問題

平成31年度 司法書士試験 午前の部 問33 (訂正依頼・報告はこちら)

持分会社に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  合名会社の定款には、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録することを要しない。

イ  合名会社の業務を執行する社員が、自己若しくは第三者の利益を図り又は当該合名会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該合名会社に財産上の損害を加えたときは、当該社員には会社法上の特別背任罪が成立する。

ウ  合資会社の債権者は、当該合資会社の計算書類の閲覧又は謄写の請求をすることはできない。

工  合同会社は、定款又は総社員の同意によって、当該合同会社が総社員の同意によって解散した場合における当該合同会社の財産の処分の方法を定めることができる。

オ  合同会社は、株式移転設立完全親会社になることはできない。
  • アイ
  • アオ
  • イエ
  • ウエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解:5

ア:誤
合名会社の定款には、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければなりません(会576Ⅰ⑤、Ⅱ)。

イ:誤
特別背任罪の適用対象は、会社法においては会社法第960条(取締役等の特別背任罪)および第961条(代表社債権者等の特別背任罪)に規定されている者であり、持分会社はその対象にはなっておりません。

ウ:正
合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類(作成した日から5年以内のものに限る。)について閲覧等の請求をすることができます(会625)。しかし、合名会社、合資会社の債権者は、当該請求をすることはできません。

エ:誤
合名会社及び合資会社は、定款又は総社員の同意によって、当該持分会社が①定款で定めた存続期間の満了②定款で定めた解散の事由の発生③総社員の同意によって解散した場合における当該持分会社の財産の処分の方法を定めることができます(任意清算:会668、641①②③)。しかし、無限責任社員のいない合同会社では、任意清算はできず、必ず法定清算の方法によらなければなりません。

オ:正
株式移転とは1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう(会2㉜)ので、持分会社は、株式移転設立完全親会社になることはできません。

参考になった数16

02

正解:5

ア:誤
設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、定款記載・記録事項である「社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別」(会社法576条1項5号)として、「その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない」と定められています(会社法576条2項)。
よって、誤った記述です。

イ:誤
特別背任罪の主体となる構成要件(身分)は、会社法960条、961条に定められたもののみですが、合名会社の業務を執行する社員の地位は含まれていません。
よって、誤った記述です。

ウ:正
持分会社の計算書類の閲覧・謄写請求権については、会社法618条に規定がありますが、この規定は「持分会社の社員」の請求権について定めています。
持分会社の債権者の、計算書類の閲覧・謄写請求権について一般的に定めた規定は存在せず、持分会社の計算書類の閲覧に関する特則である会社法625条が、「合同会社の債権者」について定めるのみです。
したがって、合資会社の債権者には、当該合資会社の計算書類の閲覧又は謄写の請求は認められていません。
よって、正しい記述です。

エ:誤
会社法668条1項は、「持分会社(合名会社及び合資会社に限る。以下この節において同じ。)は、定款又は総社員の同意によって、当該株式会社が第641条第1号から第3号までに掲げる事由によって解散した場合における当該持分会社の財産の処分の方法を定めることができる」と規定しています。この規定では、かっこ書きにおいて、持分会社の総社員の同意によって解散した場合において、定款又は総社員の同意によって持分会社の財産処分の方法を定めることができる「持分会社」から「合同会社」が除外されています。
これは、合同会社の清算手続については、合名会社及び合資会社が任意清算をすることができるのに対して、会社法第3編第8章第2節から第6節までの定める法定清算によらなければならないということです。
したがって、合同会社は、定款又は総社員の同意によって、当該合同会社が総社員の同意によって解散した場合において当該合同会社の財産処分の方法を定めることはできません。
よって、誤った記述です。

オ:正
会社法2条32号は、株式移転を、「一又は二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させること」と定義しています。会社法は、株式移転の結果、親会社となる会社を株式会社のみとしているのです。
したがって、合同会社は、株式移転設立親会社となることはできません。
よって、正しい記述です。

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03


正解 5

ア 誤り
合名会社の定款には、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければなりません(会社法576条2項)。

イ 誤り
会社法上の特別背任罪は、株式会社における取締役等(会社法960条)と代表社債権者等(同961条)を対象としてのみ成立する犯罪です。
よって、本肢のように、合名会社の業務を執行する社員に特別背任罪が成立することはありません。

ウ 正しい
合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類(作成した日から五年以内のものに限る。)について閲覧等の請求をすることができます(会社法625条)。
しかし、合名会社、合資会社の債権者が、その計算書類について閲覧等の請求をすることができるという規定は存在しません。

エ 誤り
持分会社(合名会社及び合資会社に限る。)は、定款又は総社員の同意によって、当該持分会社が総社員の同意によって解散した場合における当該持分会社の財産の処分の方法を定めることができます(会社法668条)。
しかし、合同会社は、無限責任社員がいないため、定款又は総社員の同意によって、合同会社の財産の処分の方法を定めることはできません。

オ 正しい
株式移転とは、一又は二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます(会社法2条32号)。
よって、持分会社である合同会社が株式移転設立完全親会社になることはできません。

以上から、正しい選択肢はウとオとなり、正解は5となります。

参考になった数4