司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問49

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問題

平成31年度 司法書士試験 午後の部 問49 (訂正依頼・報告はこちら)

Aを所有権の登記名義人とする農地である甲土地に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、どれか。

ア  甲土地について、AからBへの売買を登記原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる確定判決の理由中に農地法所定の許可がされている旨の認定がされている場合であっても、Bが単独で所有権の移転の登記を申請するときは、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要する。

イ  AとBとの間で甲土地の売買契約が締結されたが、AがBに対する所有権の移転の登記手続に協力せず、また、A及びBが農地法所定の許可を得ていない場合において、農地法所定の許可を条件にAからBへの所有権の移転の登記を命ずる判決が確定し、当該条件が成就したときは、Bは、当該条件の成就に係る執行文の付与を受けた当該確定判決の判決書の正本を登記原因証明情報として提供して、単独で所有権の移転の登記の申請をすることができる。

ウ  Aが、相続人であるBへ甲土地を特定遺贈する旨の遺言をして死亡し、Bがこの遺言書を提供して所有権の移転の登記を申請するときは、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要する。

工  平成30年10月1日に、AとBとの間で甲土地の売買契約が締結されたが、同年12月1日にAが死亡し、同月14日に農地法所定の許可があった場合において、Bへの所有権の移転の登記を申請するときは、その前提としてAの相続人への所有権の移転の登記を申請しなければならない。

オ  甲土地にBを買戻権者とする買戻しの特約の登記がされている場合において、買戻しの期間中にBがAに対してAが支払った売買代金及び契約の費用を返還して買戻しの意思表示をしたが、買戻しの期間経過後に買戻しによる所有権の移転についての農地法所定の許可があったときは、A及びBは、農地法所定の許可が到達した日を登記原因の日付とする買戻しによる所有権の移転の登記を申請することができる。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01


正解 1

ア 誤り
判決に基づいて農地の所有権の移転の登記を申請する場合において、判決の理由中に農地法所定の許可がされている旨の認定がされている場合は、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供する必要はありません(平成6年1月17日民三373号)。

イ 正しい
意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決が確定したときは、債務者は、その確定時に意思表示をしたものとみなされます。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るときは、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出して執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなされます(民事執行法177条1項)。
本肢の場合、Bが農地法所定の許可を得たことを証する文書を提出して執行文が付与された時に、Aが意思表示をしたものとみなされます。
よって、Bは当該条件の成就に係る執行文の付与を受けた当該確定判決の判決書の正本を登記原因証明情報として提供して、単独で所有権の移転の登記の申請をすることができます。

ウ 誤り
相続人を受遺者とする農地の特定遺贈について、所有権の移転の登記を申請するときは、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供する必要はありません(平成24年12月14日民二3486号)。

エ 正しい
農地を売買する場合において、売主が死亡した後に農地法所定の許可があった場合、相続を登記原因とする相続人への所有権の移転の登記を申請することなく、相続人から買主に対して所有権の移転の登記を申請することはできません(昭和40年3月30日民三309号)。
本肢では、売主であるAが死亡した後に、農地法所定の許可が出ているため、Bへの所有権の移転の登記を申請するときは、その前提としてAの相続人への所有権の移転の登記を申請しなければなりません。

オ 正しい
買戻しの期間中に買戻しの意思表示がなされたものの、買戻しの期間経過後に買戻しによる所有権の移転についての農地法所定の許可があったときは、農地法所定の許可が到達した日を登記原因の日付とする買戻しによる所有権の移転の登記を申請することができます(昭和42年2月8日民濃293号)。

以上から、誤っている選択肢はアとウとなり、1が正解となります。

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02

正解:1

ア:誤
農地について判決により所有権移転登記を申請する場合、その判決の理由中に農地法所定の許可がされている旨の記載がされているときは、申請情報と併せて農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しません(平6.1.17民三373号)。

イ:正
意思表示をすべきことを債務者に命ずる確定判決に基づく登記において、原則として、債務者はその確定時に意思表示をしたものとみなされます(民執177Ⅰ本分)。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したことによって執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなされます(民執27Ⅰ、177Ⅰ但書)。
本肢の場合、農地法所定の許可のあったことを証する書面を提出して執行文が付与されたときに、A(債務者)の意思表示の擬制がなされます。よって、Bは当該条件の成就(農地法所定の許可)に係る執行文の付与を受けた当該確定判決の判決書の正本を登記原因証明情報として提供して、単独で所有権の移転の登記の申請をすることができます。

ウ:誤
相続人を受遺者とする農地の特定遺贈による所有権の移転の登記については、添付情報として、農業委員会の許可を受けたことを証する情報の提供を要しません(平24.12.14民二3486号)。

エ:正
農地売買において、売主が死亡した後に農地法所定の許可があった場合、相続による所有権の移転の登記を申請することなく、相続人は買主と共同して、売主から買主への所有権の移転の登記を申請することはできません(昭40.3.30民三309号)。
当該農地の所有権はAの死亡時にいったんAの相続人に移転しているので、Bへの所有権の移転の登記を申請するときは、その前提としてAの相続人への所有権の移転の登記を申請しなければなりません。

オ:正
買い戻しの意思表示は、買戻しの期間中になされたが、農地法所定の許可が買戻しの期間経過後に到達した場合、買戻権の行使による所有権の移転の登記を申請することができますが、この場合の登記原因日付は、農地法所定の許可が到達した日です(昭42.2.8民濃293号)。

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03

正解:1

<解説>

ア:誤りです。

売買を登記原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる確定判決の理由中に農地法所定の許可がされている旨の認定がされている場合には、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することなく、Bは単独で所有権の移転の登記を申請することができます。

したがって、本肢は誤りです。

イ:正しいです。

債務者の意思表示が債権者の証明すべき事実の到来に係るときは、執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなします(民事執行法177条①)。

よって、本肢の場合には、農地法所定の許可を条件とするAからBへの所有権の移転の登記を命ずる確定判決により、農地法所定の許可を得られたのちの執行文の付与を受けた時に、Aが登記申請の意思表示をしたものとみなされ、Bは、当該条件の成就に係る執行文の付与を受けた当該確定判決の判決書の正本を登記原因証明情報として提供して、単独で所有権の移転の登記の申請をすることができます。

したがって、本肢は正しいです。

ウ:誤りです。

相続人を受遺者とする農地又は採草放牧地の特定遺贈による所有権の移転の登記については、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しません(平24・12・14民二3486号)。

したがって、本肢は誤りです。

エ:正しいです。

農地の売主が死亡した後に農地法所定の許可があった場合には、当該農地の相続登記を省略して売買による所有権の移転の登記をすることはできません(昭40・3・30民三309号)。

したがって、本肢は正しいです。

オ:正しいです。

買戻しの意思表示は買戻しの期間中になされていればよく、買戻しの期間経過後に買戻しによる所有権の移転について農地法所定の許可があったとしても、農地法所定の許可が到達した日を登記原因の日付として、買戻しによる所有権の移転の登記を申請することができます(昭42・2・8民甲293号)。

したがって、本肢は正しいです。

以上により、誤っているものは肢ア・ウであり、正解は1となります。

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