司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問50
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問題
平成31年度 司法書士試験 午後の部 問50 (訂正依頼・報告はこちら)
Aが死亡し、その相続人のあることが明らかでない場合における登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、どれか。
ア 農地である甲土地の所有権の登記名義人であるAが、甲土地を生前に売却し、その死亡後に農地法所定の許可があった場合において、家庭裁判所に選任された相続財産管理人が、当該許可に基づいて所有権の移転の登記を申請するときは、当該売却に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報を提供することを要しない。
イ Aが、甲土地を含む相続財産全てをBに包括遺贈するとともに遺言執行者としてCを指定する旨の適式な遺言を作成していた場合において、Bへの遺贈による所有権の移転の登記をするときは、BとCが共同して所有権の移転の登記の申請をすることはできない。
ウ B及び亡Aの相続財産法人を所有権の登記名義人とする甲土地について、Bが共有持分の全部を放棄したときは、亡Aの相続財産法人を登記権利者、Bを登記義務者としてBから亡Aの相続財産法人への持分の全部移転の登記を申請することができる。
工 B及び亡Aの相続財産法人を所有権の登記名義人とする甲土地について、特別縁故者からの相続財産分与の申立が却下されたときは、却下する審判が確定した日を登記原因の日付として、亡Aの相続財産法人からBへの持分の全部移転の登記を申請することができる。
オ 甲土地の登記記録に記録されている所有権の登記名義人Aの住所及び氏名と、死亡時のAの住所及び氏名とが異なる場合において、亡Aの相続財産法人名義とする所有権の登記名義人の変更の登記を申請するときは、Aの住所及び氏名の変更についての登記原因及びその日付を申請情報の内容とすることを要する。
ア 農地である甲土地の所有権の登記名義人であるAが、甲土地を生前に売却し、その死亡後に農地法所定の許可があった場合において、家庭裁判所に選任された相続財産管理人が、当該許可に基づいて所有権の移転の登記を申請するときは、当該売却に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報を提供することを要しない。
イ Aが、甲土地を含む相続財産全てをBに包括遺贈するとともに遺言執行者としてCを指定する旨の適式な遺言を作成していた場合において、Bへの遺贈による所有権の移転の登記をするときは、BとCが共同して所有権の移転の登記の申請をすることはできない。
ウ B及び亡Aの相続財産法人を所有権の登記名義人とする甲土地について、Bが共有持分の全部を放棄したときは、亡Aの相続財産法人を登記権利者、Bを登記義務者としてBから亡Aの相続財産法人への持分の全部移転の登記を申請することができる。
工 B及び亡Aの相続財産法人を所有権の登記名義人とする甲土地について、特別縁故者からの相続財産分与の申立が却下されたときは、却下する審判が確定した日を登記原因の日付として、亡Aの相続財産法人からBへの持分の全部移転の登記を申請することができる。
オ 甲土地の登記記録に記録されている所有権の登記名義人Aの住所及び氏名と、死亡時のAの住所及び氏名とが異なる場合において、亡Aの相続財産法人名義とする所有権の登記名義人の変更の登記を申請するときは、Aの住所及び氏名の変更についての登記原因及びその日付を申請情報の内容とすることを要する。
- アイ
- アオ
- イエ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:正
被相続人(売主)が生前に売り渡した農地につき、売主死亡後に農地法所定の許可があった場合において、相続財産管理人が当該許可に基づいて所有権移転登記を申請するときは、家庭裁判所の許可があったことを証する情報の提供を要しません(平3.10.29民三5569号)。
イ:誤
相続財産を包括遺贈するとともに遺言執行者が選任されている場合において、遺贈による所有権移転の登記は、遺言執行者が遺言者の代理人として、受遺者とともに申請します(昭33.4.28民甲779号)。
ウ:正
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属します(民255)。よって、共有者の一方Bが、共有持分の全部を放棄したとき、その持分は他の共有者である亡A相続財産法人に帰属しますので、Bを登記義務者としてBから亡A相続財産法人への持分の全部移転の登記を申請することができます(昭31.6.25民甲1444号)。
エ:誤
共有者の一人が相続人なくして死亡し、その後に相続人の不存在が確定したときは、その持分は特別縁故者に対する財産分与の対象になります。その後、特別縁故者への財産分与がなされないこととなったときに、その持分は他の共有者に帰属することになります。この場合、「特別縁故者不存在確定」を登記原因とする持分の移転の登記を申請しますが、登記原因日付は、特別縁故者からの申立てを却下する旨の審判が確定したときは、当該審判が確定した日の「翌日」です(平3.4.12民三2398号)。
オ:正
所有権の登記名義人が死亡し、相続人不存在を登記原因とする所有権登記名義人の氏名の変更登記を申請する際、当該所有権登記名義人が生前に住所を移転していた場合には、氏名及び住所の変更についての登記原因及びその日付を申請情報の内容とすることを要します(登研665-165)。
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02
正解 3
ア 正しい
被相続人が生前に売却した農地について、被相続人の死亡後に農地法所定の許可があった場合において、相続財産管理人が、当該許可に基づいて所有権の移転の登記を申請するときは、当該売却に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報を提供する必要はありません(平成3年10月29日民三5569号)。
イ 誤り
遺言者が、遺言により、相続財産を包括遺贈するとともに遺言執行者を指定していた場合において、遺贈による所有権の移転の登記をするときは、遺言執行者と受遺者が共同して所有権の移転の登記の申請をします(昭和33年4月28日民甲779号)。
ウ 正しい
共有者の一人が、その持分を放棄したときは、その持分は、他の共有者に帰属します(民法255条)。
本肢では、共有者であるBが、共有持分の全部を放棄しているため、その持分は他の共有者である亡A相続財産法人に帰属します。
よって、Bを登記義務者としてBから亡Aの相続財産法人への持分の全部移転の登記を申請することができます(昭和31年6月25日民甲1444号)。
エ 誤り
共有者の相続人としての権利を主張する者がない場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、特別縁故者に、相続財産の全部または一部を与えることができます(民法958条の3第1項)。
本肢のように、特別縁故者からの相続財産分与の申立が却下された場合、その持分は他の共有者に帰属し、この場合は、却下する審判が確定した翌日を登記原因の日付として、被相続人から他の共有者への持分の全部移転の登記を申請することになります(平成3年4月12日民三2398号)。
オ 正しい
所有権の登記名義人の住所及び氏名と、死亡時の住所及び氏名とが異なる場合において、所有権の登記名義人の変更の登記を申請するときは、住所及び氏名の変更についての登記原因及びその日付を申請情報の内容としなければなりません(登記研究665・165)。
以上から、誤っている選択肢はイとエとなり、3が正解となります。
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03
正解:3
<解説>
ア:正しいです。
被相続人が生前に売り渡した農地法所定の許可未了の農地につき、相続財産管理人が当該許可を得て売買を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合においては、当該申請書には家庭裁判所の許可書を添付することを要しません(平3・10・29民三5569号)。
したがって、本肢は正しいです。
イ:誤りです。
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とされ、相続財産の管理人が選任されることになります(民法951条、952条①)。
しかし、遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、民法951条にいう「相続人のあることが明らかでないとき」に当たらないとしています(最判平9・9・12)。
これにより、本肢の場合には、相続財産管理人は選任されず、BとCが共同して所有権の移転の登記の申請をすることができます。
また、平成30年の民法改正によって、「遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみ行うことができる。」(民法1012条②)とする規定が新設され、これによってもBとCが共同して所有権の移転の登記の申請をすることができると言えます。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:正しいです。
共有者の1人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属します(民法255条)。
したがって、本肢は正しいです。
エ:誤りです。
本肢の場合、登記原因を特別縁故者不存在確定とし、その登記原因の日付は、却下する審判が確定した日の翌日とします(平3・4・12民三2398号)。
したがって、登記原因の日付を却下する審判が確定した日とする本肢は誤りです。
オ:正しいです。
相続人不存在を登記原因とする登記名義人の表示の変更の登記を申請する場合において、被相続人の死亡時の氏名住所が登記簿上の氏名住所と異なるときは、申請書にその変更についての登記原因及びその日付を併記しなければなりません(昭32・3・22民甲423号、登研665号165頁)。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、誤っているものは肢イ・エであり、正解は3となります。
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