問題
司法書士X:Dは、昭和50年1月1日、所有の意思をもって、平穏かつ公然に甲土地の占有を開始し、以後、全ての関係当事者との関係において当該占有を継続してきました。Dは、平成31年2月1日、Bに対して、甲土地の取得時効の援用をしましたが、Bが所有権の移転の登記手続に協力しません。そこで、Dは、Bを被告として、時効取得を登記原因とする所有権の移転の登記手続を請求する訴訟を提起する予定です。
また、甲土地の乙区1番の抵当権(以下「Cの抵当権」という。)の登記名義人Cは、平成9年12月31日に死亡しており、Eが、Cの唯一の相続人です。
甲土地の登記記録及び以上の事実関係を前提として、仮に、当該所有権の移転の登記手続の請求を認容する判決を得たDが、当該判決に基づき所有権の移転の登記を申請するときの登記原因の日付は、いつになりますか。
司法書士y:ア 昭和50年1月1日です。
司法書士x:農地法所定の許可を受けないで、当該判決に基づく所有権の移転の登記を申請したときは、登記手続上、どのような取扱いになりますか。
司法書士y:イ 農地法所定の許可がないことのみをもって当該申請が却下されるわけではないですが、登記官は、その登記の申請がされた旨を、関係農業委員会に通知します。
司法書士x:当該判決に基づく所有権の移転の登記を申請するに当たって、Cの抵当権は、登記手続上、どのような取扱いになりますか。
司法書士y:ウ 当該判決に基づき所有権の移転の登記を申請するときに、EがCの相続人であることを証する情報及びCの抵当権の抹消についてEの承諾を証する情報を提供すれば、Cの抵当権の設定の登記は、登記官の職権で抹消されます。
司法書士X:Eの協力を期待することはできないものの、Cの抵当権の被担保債権の債務者はA、その弁済期は昭和42年12月25日であり、当該被担保債権については、弁済その他消滅時効の中断事由がありません。そうすると、先の判決に基づき甲土地の所有権の登記名義人となったDは、Eに対して、当該被担保債権につき消滅時効の援用を行い、その後、当該被担保債権が当該援用によって消滅したことを理由に、Eを被告として、Cの抵当権の設定の登記の抹消の登記手続を請求する訴訟を提起することもできそうです。
甲土地の登記記録及び以上の事実関係を前提として、仮に、甲土地の所有権の登記名義人となったDが、当該抹消の登記手続の請求を認容する判決を得たとして、その判決に基づきCの抵当権の設定の登記の抹消を申請する場合の登記原因は、一般的にはどうなりますか。
司法書士y:エ 当該抹消の登記手続の請求を認容する判決の主文又は理由中に登記原因が明記されているときはそれによりますが、当該判決の主文及び理由中に登記原因が何ら明示されていないときは、判決が登記原因となります。
司法書士x:本件の場合、Cの死亡の事実は、登記手続上、どのような取扱いになりますか。
司法書士y:オ Cの抵当権の設定の登記の抹消の登記原因がどうであれ、当該登記の抹消を申請する前提として、相続を登記原因とするCの抵当権の移転の登記を申請しなければなりません。