正解:5
<解説>
ア:「賃借権」を入れると正しくなりますが、「地役権」を入れると誤りとなります。
賃借権においては、「土地の賃借権設定の目的が建物の所有であるときは、その旨」が登記事項となっています(不動産登記法81条⑹)。
よって、賃借権設定の目的として「水道管の埋設」を申請情報の内容とすることはできません。
一方、地役権においては、「地役権設定の目的及び範囲」が登記事項となっており、地役権設定の目的として「水道管の埋設」を申請情報の内容とすることができます(不動産登記法80条①⑵、昭59、10、15民三5157号)。
したがって、本肢は、「賃借権」を入れると正しくなりますが、「地役権」を入れると誤りとなります。
イ:「賃借権」を入れると正しくなりますが、「地役権」を入れると誤りとなります。
登記名義人の住所が移転したときは、登記名義人の住所の変更の登記を申請することができますが、地役権においては、地役権者の氏名又は名称及び住所を登記することを要しませんので、変更の登記を申請する必要もありません(不動産登記法80条②)。
したがって、本肢は、「賃借権」を入れると正しくなりますが、「地役権」を入れると誤りとなります。
ウ:「賃借権」を入れると誤りとなりますが、「地役権」を入れると正しくなります。
譲り渡すことができない物を質権の目的とすることはできませんが(民法343条)、譲渡することができる旨の特約がある賃借権はこの賃借権を目的とする質権の設定の登記を申請することができます。
これにより、本肢は「賃借権」を入れると誤りとなります。
一方、地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができません(民法281条②)。
これにより、本肢は「地役権」を入れると正しくなります。
したがって、本肢は、「賃借権」を入れると誤りとなりますが、「地役権」を入れると正しくなります。
エ:「賃借権」を入れると誤りとなりますが、「地役権」を入れると正しくなります。
不動産の使用又は収益をする権利について保全仮登記がされた後、当該保全仮登記に係る仮処分の債権者が本登記を申請する場合においては、当該債権者は、所有権以外の不動産の使用若しくは収益をする権利又は当該権利を目的とする権利に関する登記であって当該保全仮登記とともにした処分禁止の登記に後れるものの抹消を単独で申請することができます(不動産登記法113条)。
これにより、単独で申請することができないとする本肢は「賃借権」を入れると誤りとなります。
一方、 地役権は不動産登記法113条の「所有権以外の不動産の使用若しくは収益をする権利又は当該権利を目的とする権利」からは除外され、保全仮登記の本登記の申請と同時に、処分禁止の登記に後れる地役権の設定の登記の抹消を申請することはできません。
これにより、単独で申請することができないとする本肢は「地役権」を入れると正しくなります。
したがって、本肢は、「賃借権」を入れると誤りとなりますが、「地役権」を入れると正しくなります。
オ:「賃借権」、「地役権」のどちらを入れても誤りです。
登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供しなければなりません(不動産登記法22条)。
なお、賃借権の抹消登記については、賃借権の設定登記時の登記識別情報を提供しますが、地役権の抹消登記については、地役権の設定登記時には、要役地の所有者は登記事項ではないために通知識別情報が通知されないので、要役地の所有権取得時の登記識別情報を提出します(不動産登記法80条②参照)。
したがって、本肢は「賃借権」、「地役権」のどちらを入れても誤りです。
以上により、「賃借権」を入れると誤りとなり、「地役権」を入れると正しくなるものは肢ウ・エであり、正解は5となります。