司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問54

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問題

平成31年度 司法書士試験 午後の部 問54 (訂正依頼・報告はこちら)

賃借権の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  亡Aの相続財産法人を所有権の登記名義人とする甲土地について、亡Aの相続財産管理人Bが、建物以外のエ作物の所有を目的とした賃借権の設定の登記を申請する場合において、登記原因証明情報である賃貸借契約書に存続期間を10年とする旨が記載されているときには、相続財産管理人Bの権限外の行為に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報の提供を要しない。

イ  甲土地について、存続期間を60年とし、居住の用に供するものではない専ら事業の用に供する建物の所有を目的としかつ、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がない旨の定めのあるAのための賃借権の設定の登記を申請する場合には、登記原因証明情報として、公正証書の謄本を提供することを要しない。

ウ  甲土地について、輸送に利用するコンテナを集配し、一時保管するために、Aを賃借権の登記名義人とする賃借権の設定の登記を申請する場合において、登記原因証明情報である賃貸借契約書に、存続期間を30年とする旨が記載されているときには、その存続期間として「30年」を申請情報の内容とすることができる。

エ  Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、A及びBを賃借権者とし、竹木所有を目的とする賃借権の設定の登記を申請する場合には、A及びBが共同して当該賃借権の設定の登記を申請することはできない。

オ  甲土地について、乙区1番に賃料を1月5万円とするAのための賃借権の設定の登記が、乙区2番にBのための抵当権の設定の登記がそれぞれされている場合において、乙区1番の賃借権の設定の登記につき、その賃料を1月6万円とする賃借権の変更の登記を付記登記によってするためには、登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する情報として、Bの承諾を証する情報の提供を要する。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解:3・4(改正前民法によれば、正しいものは肢イ・エであり、正解は4となります。)

<解説>

ア:誤りです。

相続財産管理人は、その権限を超える行為をする場合には、家庭裁判所の許可を要します(民法953条、28条、103条)。

本肢において、建物以外のエ作物の所有を目的とした賃借権の設定の登記をするときに、その存続期間を10年とすることは、短期賃借権で定めた期間を超える賃貸借であり、相続財産管理人の権限を超える行為となります。

これにより、相続財産管理人が本肢の登記を申請する場合には、相続財産管理人Bの権限外の行為に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報を提供しなければなりません。

したがって、本肢は誤りです。

イ:正しいです。

本肢の借地権は、事業用定期借地権の要件を満たしていないため、借地権の設定の登記を申請する場合に、登記原因証明情報として、公正証書の謄本を提供することを要しません(借地借家法23条)。

したがって、本肢は正しいです。

ウ:正しいです。(改正前民法によれば誤りです。)

賃借権の存続期間は50年を超えることができません(民法604条①)

これより、本肢の場合、存続期間として「30年」を申請情報の内容とすることができます。

したがって、本肢は正しいです。

なお、民法改正(令和2年4月施行)前は、賃貸借の存続期間の上限は20年とされていましたが、改正により50年に伸長されましたので、改正前民法によれば、本肢は誤りです。

エ:正しいです。

建物の所有を目的とする賃借権、すなわち借地権であれば、自らが借地権設定者となり他の者と共有して賃借権を設定することができますが、竹木を目的とする賃借権を自らが借地権設定者として他の者と共有する設定の登記をすることはできません。

したがって、本肢は正しいです。

オ:誤りです。

本肢について、1番賃借権の賃料の増額は、賃借人にとっては不利益な変更ですが、2番抵当権者にとっては不利益な変更ではないため、Bは利害関係人には該当せずBの承諾を証する情報の提供を要しません。

したがって、本肢は誤りです。

以上により、正しいものは肢イ・ウ・エであり、正解は3・4となります。

(改正前民法によれば、正しいものは肢イ・エであり、正解は4となります。)

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02

正解は4(または3)です。賃借権については、民法の他に、借地借家法に関する設問が多いです。同法が適用できるかどうかのため、当該賃借の目的に注意します。

ア…誤りです。相続財産管理人は、管理する相続財産につき、目的物の性質を変えない範囲で使用収益を得ることができますが、相続財産の処分の権利は有しませんので、「建物以外の工作物(動産)」に賃貸借の設定を行う場合には、6ケ月を超える期間を設定できません(民法602条4項)。したがってそれ以上の期間を定めようとする場合、権限外の行為をすることになり、家庭裁判所の許可が必要です(民法953条、28条)。

イ…正しいです。借地権の存続期間は30年を超える期間を定めてもかまいません(借地借家法3条)。専ら事業の用に供する建物を目的とする借地権(事業用定期借地権)は、借地借家法23条1項、2項によれば、10年未満、もしくは、50年以上にわたる存続期間を定めた場合、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がない旨の定めをするにあたり、公正証書の謄本(借地借家法23条3項)は必要ないと考えられます。

ウ…(誤りです。)(注.改正前の民法では、本問の場合に設定できる存続期間は20年となっていましたが(民法604条1項)、現在は同条が50年に延長されたので、正しいです。以下、解説は改正民法によります。)借地借家法が適用されるのは、あくまで建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権に限られますので、本問のように建物の使用をせず土地だけを借用する場合、借地権の存続期間である30年ではなく(借地借家法3条)、賃貸借の存続期間の50年が適用されます(民法604条1項)。

エ…正しいです。借地借家法の適用がある借地権の設定の場合、他に借地権者がいるときは、借地権設定者自身を借地権者とする借地権の設定の登記申請ができます(借地借家法15条1項、先例)。上述の通り、竹木所有を目的とする場合、借地借家法の適用はありませんので、民法179条の混同になり、認められません。

オ…誤りです。賃借権において定められた賃料の増額をする場合には、賃借権を目的とする差押等の権利の登記名義人などの承諾を必要とします。賃借権の登記より後順位の抵当権者の承諾が必要なのは、賃料の減額の場合です。

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03


正解 なし

ア 誤り
相続財産管理人が権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができます(民法953条、同28条)。
そのため、相続財産管理人が、本肢にいう建物以外の工作物の所有を目的とした賃借権の設定に係る賃貸借契約を締結するためには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
本肢の場合、相続財産管理人Bの権限外の行為に関する家庭裁判所の許可があったことを証する情報を提供する必要があります。

イ 正しい
存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めることができます。この場合、その旨の定めは、公正証書による等書面によってしなければなりません(借地借家法22条)。
本肢の場合、登記原因証明情報として、必ずしも公正証書の謄本を提供する必要はなく、それに代わる書面を提供することも可能です。

ウ 正しい
賃貸借の存続期間は、50年を超えることができません(民法604条)。
本肢の場合、賃貸借契約の存続期間として「30年」を申請情報の内容とすることができます。

エ 正しい 
所有権の一部や共有持分の全部または一部を目的とする賃借権の設定契約は無効であるため、賃借権の設定登記もできません(昭和37年3月26日民甲844号)。

オ 誤り 
賃借権の登記名義人が登記義務者となる賃借権の変更登記を申請する場合において、後順位の抵当権の登記名義人は登記上の利害関係人にはあたりません。
本肢の場合、Bは登記上の利害関係人にあたらないため、Bの承諾を証する情報を提供する必要はありません。

以上から、正しい肢はイとウ、そしてエとなります。

※肢ウについて、従来、賃借権の存続期間は20年と定められていたため、誤りでしたが、改正民法により、上限が50年に改正されたため、正しい肢となります。

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