司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問56
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問題
平成31年度 司法書士試験 午後の部 問56 (訂正依頼・報告はこちら)
根抵当権の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。
ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Aを根抵当権の設定者とし、B及びCを根抵当権者とする共有の根抵当権の設定の契約をするとともに、BとCとの間で当該根抵当権の元本確定後における優先弁済を受ける割合につき、各自の被担保債権の割合と異なる割合による旨の定めをしたときは当該根抵当権の設定の登記及び根抵当権の共有者間の優先の定めの登記は、ーの申請情報によって申請することができる。
イ Aを所有権の登記名義人とする甲土地及び乙土地について、共同根抵当権の設定の登記がされ、その後それぞれ根抵当権の元本の確定の登記がされている場合において、甲土地についてのみAによる極度額の減額請求がされ、その極度額の減額請求につき登記上の利害関係人が存しないときは、当該極度額の減額請求がされた日を登記原因の日付として、乙土地についての根抵当権の変更の登記の申請をすることができる。
ウ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権の登記名義人とし、債権の範囲を「証書貸付取引当座貸越取引」とする根抵当権の登記がされている場合において、A及びBが元本の確定前に債権の範囲を「銀行取引」とする合意をしたときは、Aを登記権利者、Bを登記義務者として、当該根抵当権の変更の登記の申請をすることができる。
エ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権者とする根抵当権の設定の登記の申請をする場合において、登記原因証明情報である根抵当権設定契約証書に、根抵当権者が死亡したときは根抵当権が消滅する旨の定めが記載されているときは、当該定めを当該根抵当権の消滅に関する定めとして登記の申請をすることができる。
オ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権者とする根抵当権の設定の登記を申請する場合において、登記原因証明情報である根抵当権設定契約証書に、被担保債権の範囲として「平成30年6月6日リース取引等契約」との表示がされているときであっても、「平成30年6月6日リース取引等契約」を当該根抵当権の債権の範囲として登記の申請をすることはできない。
ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Aを根抵当権の設定者とし、B及びCを根抵当権者とする共有の根抵当権の設定の契約をするとともに、BとCとの間で当該根抵当権の元本確定後における優先弁済を受ける割合につき、各自の被担保債権の割合と異なる割合による旨の定めをしたときは当該根抵当権の設定の登記及び根抵当権の共有者間の優先の定めの登記は、ーの申請情報によって申請することができる。
イ Aを所有権の登記名義人とする甲土地及び乙土地について、共同根抵当権の設定の登記がされ、その後それぞれ根抵当権の元本の確定の登記がされている場合において、甲土地についてのみAによる極度額の減額請求がされ、その極度額の減額請求につき登記上の利害関係人が存しないときは、当該極度額の減額請求がされた日を登記原因の日付として、乙土地についての根抵当権の変更の登記の申請をすることができる。
ウ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権の登記名義人とし、債権の範囲を「証書貸付取引当座貸越取引」とする根抵当権の登記がされている場合において、A及びBが元本の確定前に債権の範囲を「銀行取引」とする合意をしたときは、Aを登記権利者、Bを登記義務者として、当該根抵当権の変更の登記の申請をすることができる。
エ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権者とする根抵当権の設定の登記の申請をする場合において、登記原因証明情報である根抵当権設定契約証書に、根抵当権者が死亡したときは根抵当権が消滅する旨の定めが記載されているときは、当該定めを当該根抵当権の消滅に関する定めとして登記の申請をすることができる。
オ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権者とする根抵当権の設定の登記を申請する場合において、登記原因証明情報である根抵当権設定契約証書に、被担保債権の範囲として「平成30年6月6日リース取引等契約」との表示がされているときであっても、「平成30年6月6日リース取引等契約」を当該根抵当権の債権の範囲として登記の申請をすることはできない。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解 3
ア 誤り
根抵当権が共有の場合、優先の定めをすることは可能ですが、優先の定めの登記は、根抵当権設定の登記の申請と一の申請情報によって申請することはできません(昭和46年10月4民甲3230号)。
イ 正しい
共同根抵当権の極度額の減額請求は、共同根抵当権のうち1個の不動産についてすれば、すべての根抵当権について減額の効力が生じます。
よって、本肢のように、甲土地についてのみAによる極度額の減額請求がされた場合、その極度額の減額請求につき登記上の利害関係人が存しないときは、当該極度額の減額請求がされた日を登記原因の日付として、乙土地についての根抵当権の変更の登記の申請をすることができます(登記研究793号)。
ウ 誤り
根抵当権の債権の範囲を変更する場合、根抵当権者が登記権利者、根抵当権設定者が登記義務者となるのが原則ですが、その変更が縮減的変更である場合には、根抵当権設定者が登記権利者、根抵当権者が登記義務者となります。
本肢の場合、債権の範囲を「証書貸付取引当座貸越取引」から「銀行取引」に変更することが、縮減的変更であるかどうか明らかでないため、原則通り、Bを登記権利者、Aを登記義務者として、当該根抵当権の変更の登記の申請をすることになります。
エ 正しい
根抵当権設定契約において、根抵当権者が死亡したときは根抵当権が消滅する旨を定めた場合は、当該定めを当該根抵当権の消滅に関する定めとして登記の申請をすることができ、当該定めは付記登記による方法で行われます。
オ 誤り
根抵当権の設定登記を申請する場合、「リース取引等契約」を根抵当権の被担保債権の範囲とすることができます。これは実質において、特定の継続的取引契約によって生ずる債権を担保するためのものであり、この場合の契約名称は当事者が任意に定めることができます(登記研究786号)。
以上から、正しい肢はイとエであり、3が正解となります。
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02
正解:3
<解説>
ア:誤りです。
根抵当権の設定の登記は共同申請、優先の定めの登記は合同申請であることにより、その申請構造を異にするため、共有根抵当権の設定の登記と優先の定めの登記の2つの登記を一の申請情報によって申請することはできません(昭46・10・4民甲3230号)。
したがって、本肢は誤りです。
イ:正しいです。
共同根抵当権の登記がされている根抵当権につき、元本の確定後、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができ、その請求は1個の不動産についてすれば足ります(民法398条の21②)。
これより、1個の不動産について請求がされれば、他の不動産についても同様の効果が生じます。
したがって、本肢は正しいです。
ウ:誤りです。
通常、債権の変更登記は、根抵当権者が登記権利者、根抵当権設定者が登記義務者となって申請します。
しかし、債権の範囲を変更することにより、その範囲が縮減することが形式的に明らかな場合には、登記権利者と登記義務者が逆転し、根抵当権者が登記義務者、根抵当権設定者が登記権利者となります。
本肢の場合、「証書貸付取引当座貸越取引」は「銀行取引」の一種であるため、債権の範囲が縮減することが形式的に明らかな場合であるとはいえず、債権の変更登記は、根抵当権者が登記権利者、根抵当権設定者が登記義務者となって申請します。
したがって、本肢は誤りです。
エ:正しいです。
登記の目的である権利の消滅に関する定めがあるときには、その定めを登記することができます(不動産登記法59条⑸)。
したがって、本肢は正しいです。
オ:誤りです。
債務者とリース取引等契約をもって債権の範囲として定めた場合には、「年月日リース取引等契約」を債権の範囲として登記を申請することができます (平元・4・26民三1654号)。
したがって、本肢は誤りです。
以上により、正しいものは肢イ・エであり、正解は3となります。
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03
ア…誤りです。根抵当権の共有者間の優先の定めの登記は、準共有者全員で申請する必要がありますが(民法398条の14)、根抵当権設定者の承諾は不要です。このように、登記の目的、登記原因、申請者が異なるため、当該根抵当権の設定の登記とは別にします(先例)。
イ…正しいです。共同根抵当権では、設定された不動産の間で、①極度額、②債権の範囲、③債務者、がすべて同一である必要があります。極度額の変更をするためには、原因日付が異なっていてもかまいませんが(先例)、すべての不動産について極度額変更の登記が必要です(民法398条の17第1項)。ちなみに、極度額の変更の登記は、元本確定の有無を問いませんが、利害関係人の承諾は必要です。
ウ…誤りです。債権の範囲が形式的に縮減されることが明らかな場合は、根抵当権設定者(本問のA)が登記権利者、根抵当権者(本問のB)が登記義務者になりますが、「証書貸付取引・当座貸越取引」を「銀行取引」にする場合は、明らかに縮減するものに該当しません(先例)。
エ…正しいです。根抵当権に関する相対的登記事項の中に、登記の目的である権利の消滅に関する定め、があります(不動産登記法88条2項、59条5号)。根抵当権者が死亡したときに、根抵当権は消滅する旨の登記もできます(先例)。
オ…誤りです。根抵当権の被担保債権として、一定の基準により範囲を限定して定められる不特定債権(民法398条の2第1項)の他に、既発生の特定債権(ただし、継続的取引契約に限る)を担保すべき債権の範囲として定めることができます。特定の年月日を指定した「リース取引等契約」もその中に含まれます(H3過去問)。
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