司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問61

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問題

平成31年度 司法書士試験 午後の部 問61 (訂正依頼・報告はこちら)

甲登記所の管轄に属する乙土地の所有権の登記名義人であるAが死亡し、Aに配偶者B及び子Cがいる場合における、被相続人Aの法定相続情報一覧図(以下「一覧図」という。)に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  甲登記所の法定相続情報一覧図つづり込み帳に被相続人Aの一覧図がつづり込まれている場合において、乙土地について、AからB及びCへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、当該一覧図の写しに記載された法定相続情報番号を添付情報として提供すれば、Aの法定相続人がB及びCであることを特定することができる戸籍の全部事項証明書の提供を省略することができる。

イ  Bは、相続があったことを証する公務員が職務上作成した情報として、被相続人Aの一覧図の写しを提供して、Aが通知を受けた乙土地の登記識別情報の失効の申出をすることはできない。

ウ  BがAの相続人から廃除されたため、Cが乙土地を単独で相続したとして、AからCへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、添付情報として、相続人をCのみとする被相続人Aの一覧図の写しを提供したときは、Bが廃除された旨の記載がされていることを証する戸籍の全部事項証明書の提供を省略することができる。

工  AからB及びCへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、B及びCの住所が記載されている被相続人Aの一覧図の写しを提供したときは、B及びCの住所を証する市町村長が職務上作成した情報の提供を省略することができる。

オ  Bが相続の放棄をしたため、乙土地を単独で相続したCがAからCへの相続を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、添付情報として、被相続人Aの一覧図の写しを提供したときは、Bの相続放棄に係る相続放棄申述受理証明書の提供を省略することができる。
  • アイ
  • アウ
  • イオ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01


正解 4

ア 誤り
相続を原因とする登記申請において、法定相続一覧図の写しを添付情報として提供すれば、戸籍の全部事項証明書の提供を省略することができます。
この場合、あくまで「法定相続一覧図謄本」の写しを提供する必要があり、本肢のように、法定相続情報番号のみの提供では足りません。

イ 誤り
登記名義人の相続人が、被相続人が通知を受けた登記識別情報について失効の申出をするときは、申出情報と併せて相続があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報を提供しなければなりません。
もっとも、公務員が職務上作成した情報がない場合は、これに代わるべき情報を提出すれば足ります(不動産登記規則65条5項)。
本肢における法定相続一覧図は、登記官から認証を受けており、その写しについても登記官が作成していますので、「登記官が職務上作成した情報」にあたります。
よって、Bは、被相続人Aの一覧図の写しを提供して、Aが通知を受けた乙土地の登記識別の情報の失効の申出をすることができます。

ウ 正しい
相続を原因として登記申請をする場合において、添付情報として、被相続人の一覧図の写しを提供したときは、戸籍の全部事項証明書の提供を省略することができます。
なぜなら、一覧図は、戸籍の全部事項証明書に代わるものであり、その戸籍には相続廃除があった旨が記載されているためです。

エ 正しい
一覧図に相続人の住所が記載されている場合において、相続人が相続に起因する登記手続のために一覧図の写しの交付の申出をする場合には、被相続人の最後の住所を証する書面を添付しなければなりません(不動産登記規則247条4項)。
このように、相続人の住所情報は、一覧図の写しの交付を受ける際に証明されているため、Aの一覧図の写しを提供している本肢においては、B及びCの住所を証する市町村長が職務上作成した情報の提供を省略することができます。

オ 誤り
一覧図には、相続放棄があった旨は記載されないため、相続放棄申述受理証明書に代わる書面とすることはできません。

以上から、正しい肢はウとエであり、4が正解となります。

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02

正解は4です。法定相続情報一覧図は、平成29年から運用が開始された公的証明書です(不動産登記規則247条)。被相続人と相続人の戸籍謄本(および、住民票の写し)を元にして作成し、法務局登記官に認証を受けます。相続登記の際などには相続関係を証明するものとして使用できますが、相続関係説明図とは違い、実際には相続資格がない人物もそのまま記載されますので、注意が必要です。

ア…誤りです。一覧図の写しは相続登記で戸籍謄本の代わりとして使用できますが、相続情報証明番号が代わりになるわけではありません。ちなみに、一覧図を作成した場合、作成の年の翌年から五年間保存されており、その間一覧図の写しは何度でも発行してもらえます(不動産登記規則28条2項6号、247条5項)。

イ…誤りです。登記識別情報の失効の申し出には、相続その他一般承継を証する公務員が職務上作成した情報が必要であり、該当する書面がない場合には、これに代わる書面を提出すれば足ります(不動産登記規則65条5項)。一覧図は上述の通り登記官の認証を受けており、その写しは登記官によって作成されていますので、相続関係を証する書面としては十分です。

ウ…正しいです。相続廃除者がいる場合の登記では、相続廃除の情報は戸籍に記録されているため、戸籍事項証明書の添付が必要となります(戸籍法施行規則35条8号)。しかし、一覧図には相続廃除となった人間は氏名、住所ともに記載されません。したがって戸籍謄本などの添付も必要ありません。

エ…正しいです。一覧図における相続人の住所は任意記載ですが、住所を記載する場合には、上述のように住民票の写しが必要です(不動産登記規則247条4項)。したがって、一度住所情報は証明されているので、住所記載のある一覧図を提出する場合は、所有権移転登記の申請において住所証明書(住民票の写し)の添付も省略できます。

オ…誤りです。相続放棄者がいる場合の登記では、戸籍事項証明書のほかに、相続放棄者が家庭裁判所において、相続放棄をする旨を申述した相続放棄申述受理証明書が必要とされています。一覧図には、相続放棄、もしくは相続欠格になった場合は、氏名、住所は記録されますが、相続放棄したこと、もしくは相続欠格になったことは記載されません。また、遺産分割協議に伴って作成される持分放棄証書は、相続放棄の添付書面としては無効であり、この相続の登記は受理されない(先例)など、他の書類での代用もありません。

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03

正解:4

<解説>

ア:誤りです。

法定相続情報番号をもって相続があったことを証する情報の提供に変えることはできません。

したがって、本肢は誤りです。

イ:誤りです。

相続人が登記の申請をする場合において、その相続に関して交付された一覧図の写しを提供したときは、当該写しの提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができます(不動産登記規則37条の3)。

これにより、一覧図の写しを提供して、登記識別情報の失効の申出をすることができます(不動産登記規則65条④)。

したがって、本肢は誤りです。

ウ:正しいです。

一覧図の保管及び一覧図の写しの交付の申出をするには、被相続人及び相続人の戸籍等も添付しなければなりません(不動産登記規則247条③⑵⑷)。

これにより、廃除された相続人があるときは、その旨が戸籍にも記載され、一覧図にもその旨が記載されることとなります。

そのため、廃除された者を除いて相続登記をするときには、一覧図を提供すれば、廃除の記載のある戸籍の全部事項証明書の提供を省略することができます。

したがって、本肢は正しいです。

エ:正しいです。

一覧図に相続人の住所を記載したときは、その住所を証する書面を添付しなければなりません(不動産登記規則247条④)。

そして、この規定により、一覧図の写しに住所が記載されているときには、相続人の住所を証する情報の提供を省略することができます(平30・3・29民二166号)。

したがって、本肢は正しいです。

オ:誤りです。

肢ウで示した通り、戸籍等から読み取ることができる情報は、一覧図にも反映されますが、相続放棄の旨は、戸籍等の記載からは判明せず、一覧図にも反映されません。

これにより、相続放棄する者を除いて相続登記を申請するときには、一覧図を添付したとしても、相続放棄申述受理証明書の提供を省略することはできません。

したがって、本肢は誤りです。

以上により、正しいものは肢ウ・エであり、正解は4となります。

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