ア 〇 設立時募集株式の引受人は、払込期日又は払込期間内に設立時募集株式の払込金額の全額の払込をしないときは、当該払込みをすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失います(会社63Ⅲ)。
例えば、払い込まない引受人が多少いたとしても、定款記載の設立に際して出資される財産の最低額を下回らないときは、設立登記を申請できます。
実務では、発起設立とは異なり募集設立の募集株式の引受人は大人数です。
すると中には急に払込の資金が調達できない人も一人や二人はいるものです。
ですからそのような人達もいることを考慮して定款記載の出資される財産の最低額を下回らなければ設立登記を通してあげましょう、という登記官の優しい気持ちが形になった規定なのです。
イ × 原則、株式会社の設立登記の申請書には、設立時取締役の就任承諾書を添付しなければならない。(商登47Ⅱ⑩)
例外として設立時取締役と発起人が同一人物であって、定款に取締役となるべき者が記載されている場合は就任承諾書の添付を省略できる。
なぜなら、定款に発起人全員の住所、氏名、押印がされているからです。
よって定款を添付すれば就任承諾書を省略できます。
当該問題は、発起人以外の者という箇所が誤りです。
ウ 〇 原則として設立中の株式会社における業務執行の決定は発起人の議決権の過半数の一致により決定される。
よって設立しようとする会社の定款に株主名簿管理人を置く旨の定めがある場合、設立時の登記の申請書には株主名簿管理人の決定について発起人の過半数の一致があったことを称する書面及び株主名簿管理人等の契約を証する書面を添付しなければならなりません。
ここで登記官の立場に立って考えてみましょう。
定款を添付しないとこの会社は株主名簿管理人を設置する旨の規定があるのか、登記官はわからないです。
発起人の過半数の一致を証する書面を添付しないと、株主名簿管理人(例えば三菱UFJ信託銀行)をどこの会社に決定したのか、登記官はわからないです。
株主名簿管理人との契約を証する書面を添付しないと、株主名簿管理人(例えば三菱UFJ信託銀行)が知らない間に契約を結ばされていたということになりかねません。
だから、①定款 ②発起人の過半数の一致を証する書面 ③株主名簿管理人との契約を証する書面、を添付しなければならないのです。
エ × 本店と支店の登記所の管轄区域が異なる場合、支店の所在地における登記の申請は、本店の所在地を管轄する登記所を経由してすることができます(商登49条1項)。
つまり、任意規定であり、強行規定ではありません。
ちなみに実務ではほとんど経由申請です。
なぜなら、本店から離れた支店所在地の管轄法務局までわざわざ行くのは面倒だからです。
オ 〇 発起人の資格に制限はありません。
そして定款は発起人が作成するのが原則ですが、代理人によって作成することもできます。
つまり、発起人である成年被後見人の代理人が定款を作成して定款を作成しても何の問題もありません。
よって設立登記を申請することが可能です。