司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問63
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問題
平成31年度 司法書士試験 午後の部 問63 (訂正依頼・報告はこちら)
株式会社の設立の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、どれか。
ア 当該設立が募集設立であり、設立時募集株式について引受けが未了であるものが存する場合であっても、出資された財産の価額が定款に定めた設立に際して出資される財産の最低額を下回らないときは、再度引受人の募集をすることなく、設立の登記を申請することができる。
イ 当該設立が発起設立であり、設立時取締役を定款で定めた場合は、その者が発起人以外の者であっても、当該設立の登記の申請書には、当該設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面を添付することを要しない。
ウ 設立しようとする会社の定款に株主名簿管理人を置く旨の定めがあるものの、株主名簿管理人の決定については定款に別段の定めがない場合は、当該設立の登記の申請書には、株主名簿管理人の決定について発起人の過半数の一致があったことを証する書面及び当該株主名簿管理人との契約を証する書面を添付しなければならない。
工 設立しようとする会社が設立に際して支店を設ける場合において、当該支店が当該会社の本店の所在地を管轄する登記所の管轄区域外にあるときは、当該支店の所在地における登記の申請は、当該本店の所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。
オ 発起人が成年被後見人である場合において、成年後見人が当該成年被後見人を代理して定款を作成し、これに署名し、又は記名押印したときは、当該定款を添付して、設立の登記を申請することができる。
ア 当該設立が募集設立であり、設立時募集株式について引受けが未了であるものが存する場合であっても、出資された財産の価額が定款に定めた設立に際して出資される財産の最低額を下回らないときは、再度引受人の募集をすることなく、設立の登記を申請することができる。
イ 当該設立が発起設立であり、設立時取締役を定款で定めた場合は、その者が発起人以外の者であっても、当該設立の登記の申請書には、当該設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面を添付することを要しない。
ウ 設立しようとする会社の定款に株主名簿管理人を置く旨の定めがあるものの、株主名簿管理人の決定については定款に別段の定めがない場合は、当該設立の登記の申請書には、株主名簿管理人の決定について発起人の過半数の一致があったことを証する書面及び当該株主名簿管理人との契約を証する書面を添付しなければならない。
工 設立しようとする会社が設立に際して支店を設ける場合において、当該支店が当該会社の本店の所在地を管轄する登記所の管轄区域外にあるときは、当該支店の所在地における登記の申請は、当該本店の所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。
オ 発起人が成年被後見人である場合において、成年後見人が当該成年被後見人を代理して定款を作成し、これに署名し、又は記名押印したときは、当該定款を添付して、設立の登記を申請することができる。
- アイ
- アウ
- イエ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア 〇 設立時募集株式の引受人は、払込期日又は払込期間内に設立時募集株式の払込金額の全額の払込をしないときは、当該払込みをすることにより設立時募集株式の株主となる権利を失います(会社63Ⅲ)。
例えば、払い込まない引受人が多少いたとしても、定款記載の設立に際して出資される財産の最低額を下回らないときは、設立登記を申請できます。
実務では、発起設立とは異なり募集設立の募集株式の引受人は大人数です。
すると中には急に払込の資金が調達できない人も一人や二人はいるものです。
ですからそのような人達もいることを考慮して定款記載の出資される財産の最低額を下回らなければ設立登記を通してあげましょう、という登記官の優しい気持ちが形になった規定なのです。
イ × 原則、株式会社の設立登記の申請書には、設立時取締役の就任承諾書を添付しなければならない。(商登47Ⅱ⑩)
例外として設立時取締役と発起人が同一人物であって、定款に取締役となるべき者が記載されている場合は就任承諾書の添付を省略できる。
なぜなら、定款に発起人全員の住所、氏名、押印がされているからです。
よって定款を添付すれば就任承諾書を省略できます。
当該問題は、発起人以外の者という箇所が誤りです。
ウ 〇 原則として設立中の株式会社における業務執行の決定は発起人の議決権の過半数の一致により決定される。
よって設立しようとする会社の定款に株主名簿管理人を置く旨の定めがある場合、設立時の登記の申請書には株主名簿管理人の決定について発起人の過半数の一致があったことを称する書面及び株主名簿管理人等の契約を証する書面を添付しなければならなりません。
ここで登記官の立場に立って考えてみましょう。
定款を添付しないとこの会社は株主名簿管理人を設置する旨の規定があるのか、登記官はわからないです。
発起人の過半数の一致を証する書面を添付しないと、株主名簿管理人(例えば三菱UFJ信託銀行)をどこの会社に決定したのか、登記官はわからないです。
株主名簿管理人との契約を証する書面を添付しないと、株主名簿管理人(例えば三菱UFJ信託銀行)が知らない間に契約を結ばされていたということになりかねません。
だから、①定款 ②発起人の過半数の一致を証する書面 ③株主名簿管理人との契約を証する書面、を添付しなければならないのです。
エ × 本店と支店の登記所の管轄区域が異なる場合、支店の所在地における登記の申請は、本店の所在地を管轄する登記所を経由してすることができます(商登49条1項)。
つまり、任意規定であり、強行規定ではありません。
ちなみに実務ではほとんど経由申請です。
なぜなら、本店から離れた支店所在地の管轄法務局までわざわざ行くのは面倒だからです。
オ 〇 発起人の資格に制限はありません。
そして定款は発起人が作成するのが原則ですが、代理人によって作成することもできます。
つまり、発起人である成年被後見人の代理人が定款を作成して定款を作成しても何の問題もありません。
よって設立登記を申請することが可能です。
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02
正解 3
ア 正しい
出資された財産の価額が定款に定めた設立に際して出資される財産の最低額を下回らないときは、設立時募集株式について引受けが未了であるものが存する場合であっても、設立の登記をすることができます。
イ 誤り
設立の登記の申請書には、定款に定めることにより選任した設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面を添付する必要があります(商業登記法47条1項10号)。
ウ 正しい
定款に株主名簿管理人を置く旨の定めがある場合は、株主名簿管理人を具体的に定める必要がありますが、株主名簿管理人の決定について定款に別段の定めがない場合は、設立登記の発起人の過半数により決定します。
また、株主名簿管理人を置いたときは、設立の登記の申請書に、その者との契約を証する書面を添付しなければなりません(商業登記法47条2項6号)。
よって、本肢の場合、株主名簿管理人の決定について発起人の過半数の一致があったことを証する書面及び当該株主名簿管理人との契約を証する書面を設立の登記申請書に添付しなければなりません。
エ 誤り
本店と支店の登記所の管轄区域が異なる場合、支店の所在地における登記の申請は、本店の所在地を管轄する登記所を経由してすることができます(商業登記法49条1項)。
この規定は、あくまで任意規定であり、強行規定ではありません。
オ 正しい
発起人の資格に制限はないため、制限行為能力者でも発起人になることができます。
本肢の場合、成年後見人が成年被後見人を代理して、定款を作成し、これに署名し、又は記名押印することになります。
よって、当該定款を添付して、設立の登記を申請することができます。
以上から、誤っている肢はイとエであり、3が正解となります。
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03
ア…正しいです。募集設立においては、設立に関して出資される財産の最低価額を下回らない場合、出資しなかった引受人は株主となる権利を失いますが、設立の登記はすることができます。
イ…誤りです。設立時取締役を含む役員等として定款で定められた者は、出資の履行が完了した時に、選任されたものとみなします(第38条4項)。定款で定めなかった場合は発起人の議決権の過半数をもって選任します(40条、43条1項)。
ウ…正しいです。株主名簿管理人の選任の登記に必要な書類は①定款、②取締役会議事録もしくは取締役(発起人)の過半数の一致を証する書面、③株主名簿管理人との契約を証する書面、④代理人によって登記を申請する場合には、委任状などその権限を証する書面、です(64条、46条1項、2項、18条)。
エ…誤りです。本店と支店の登記所の管轄区域が異なる場合、支店の所在地においてする登記の申請は、本店の所在地を管轄する登記所を経由してすることができる(商業登記法49条1項)とあります。しなければならない、ではないので誤りです。
オ…正しいです。発起人の資格に制限はありません。したがって制限行為能力者でも発起人になることができます(H24過去問)。取締役の場合と混同しないように注意してください。
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