司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問64
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問題
平成31年度 司法書士試験 午後の部 問64 (訂正依頼・報告はこちら)
株式の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。
ア 取得請求権付株式を発行している会社が、当該株式の取得と引換えに当該会社の新株予約権を交付する旨を定めている場合において、当該株式の株主からの請求を受け、当該株式を取得するのと引換えに新株予約権を発行し交付したときは取得請求権付株式の取得と引換えにする新株予約権の発行による変更の登記の申請害には、当該請求の日において当該新株予約権の帳薄価額以上の分配可能額が当該会社に存在することを証する書面を添付しなければならない。
イ 種類株式発行会社でない会社が、株主総会において、株式の併合の割合及びその効力が生ずる日を定める決議をしたが、当該日における発行可能株式総数を定める決議をしなかった場合であっても、当該株主総会の議事録を添付して、株式の併合による変更の登記及び当該株式の併合の割合に応じた発行可能株式総数の減少による変更の登記を申請することができる。
ウ 現にA種類株式及びB種類株式を発行している会社法上の公開会社が、株主総会及びA種類株式を有する株主を構成員とする種類株主総会において、発行する各種類の株式の内容として、株主総会において行使することができる議決権の個数をA種類株式l株につき1個、B種類株式l株につき2個とする旨を追加する定款の変更の決議をした場合は、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更の登記を申請することができる。
工 単元株式数を定款で定めている取締役会設置会社が、取締役会において、単元株式数についての定款の定めを廃止する決議をした場合は、当該取締役会の議事録を添付して、単元株式数の定めの廃止による変更の登記を申請することができる。
オ 株式の全部について現に株券を発行していない株券発行会社が、株主総会において、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する決議をした場合は当該定款の定めの廃止による変更の登記の申請書には、株主及び登録株式質権者に対し、当該定款の定めを廃止する旨及びその効力が生ずる日並びに当該日において当該株式会社の株券は無効となる旨を通知したことを証する書面を添付しなければならない。
ア 取得請求権付株式を発行している会社が、当該株式の取得と引換えに当該会社の新株予約権を交付する旨を定めている場合において、当該株式の株主からの請求を受け、当該株式を取得するのと引換えに新株予約権を発行し交付したときは取得請求権付株式の取得と引換えにする新株予約権の発行による変更の登記の申請害には、当該請求の日において当該新株予約権の帳薄価額以上の分配可能額が当該会社に存在することを証する書面を添付しなければならない。
イ 種類株式発行会社でない会社が、株主総会において、株式の併合の割合及びその効力が生ずる日を定める決議をしたが、当該日における発行可能株式総数を定める決議をしなかった場合であっても、当該株主総会の議事録を添付して、株式の併合による変更の登記及び当該株式の併合の割合に応じた発行可能株式総数の減少による変更の登記を申請することができる。
ウ 現にA種類株式及びB種類株式を発行している会社法上の公開会社が、株主総会及びA種類株式を有する株主を構成員とする種類株主総会において、発行する各種類の株式の内容として、株主総会において行使することができる議決権の個数をA種類株式l株につき1個、B種類株式l株につき2個とする旨を追加する定款の変更の決議をした場合は、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更の登記を申請することができる。
工 単元株式数を定款で定めている取締役会設置会社が、取締役会において、単元株式数についての定款の定めを廃止する決議をした場合は、当該取締役会の議事録を添付して、単元株式数の定めの廃止による変更の登記を申請することができる。
オ 株式の全部について現に株券を発行していない株券発行会社が、株主総会において、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する決議をした場合は当該定款の定めの廃止による変更の登記の申請書には、株主及び登録株式質権者に対し、当該定款の定めを廃止する旨及びその効力が生ずる日並びに当該日において当該株式会社の株券は無効となる旨を通知したことを証する書面を添付しなければならない。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア 〇 取得請求権付株式の取得対価として交付される会社の株式以外の財産の帳簿価額が請求日における分配可能額を超えているときは、取得請求権付株式の株主はその請求権を行使できません(会社166条1但書)。
よって、登記官が分配可能額の範囲内かどうかをチェックするため「分配可能額が存することを証する書面」を添付しなければならないのです。
イ × 原則として、株式の併合をしようとするときは、①併合割合 ②効力発生日 ③併合する種類の株式 ④発行可能株式総数 以上4つを株主総会で定めなければなりません。(会社180Ⅱ)
よって、本肢は発行可能株式総数を定める決議をしなかった場合でも、発行可能株式総数の減少による変更登記を申請することができるとする点が誤っています。
比較として183条と184条もおさえておこう!
ウ × 株式の議決権に関し認められる株式の内容の違いは、株主総会においてある事項について議決権を行使できるか否かという形のみであって、1株につき複数の議決権を付与することは認められません。
よって、B種類株式1株につき議決権を2個とする旨を追加する定款変更はできません。
ちなみに、B種類の株式の内容のみを変更した場合であっても記述では「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」の項目を変更していない箇所も含めて全て記載しなければなりません。
エ 〇 株主の立場に立って考えてみましょう。
原則として単元株式数の設定、又は増加変更する場合は株主に不利になるので特別決議により定款を変更して行います。
しかし、単元株式数を減少、又は単元株式数についての定款の定めを廃止する場合には株主に不利になりません。
よって、わざわざ株主総会を開かなくても取締役会の決議により定款変更ができるのです。
ちなみに、取締役会を設置していない会社は取締役の決定で当該定款変更できます。
オ × 株主の立場に立って考えてみましょう。
株式の全部について現に株券を発行していない会社の株主は、株券が発行されなくなっても特に困ることはありません。
なぜなら、株主自身が株券を不要とする選択をしているからです。
よって、そのような株主には「株券を発行する旨の定款の定めを廃止しました。」と通知又は公告しておけばよいですよということです。
つまり、大したことではないのだから、わざわざ通知又は公告をしたこと証する書面など添付不要なのです。
登記官も無駄な添付書面が多ければチェックする仕事が多くなるので省けるものは省こうという趣旨です。
ただ、現に株券を発行していたら株券を保有している株主に重大であるから「会社法218Ⅰによる公告をしたことを証する書面」を添付しなければなりません。
覚え方としては、「通知又は公告」ならば大したことではないので添付書面にならないが、
「通知かつ公告」なら重大なので添付書面になります。
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02
ア…正しいです。取得請求権付株式の取得対価として交付される会社の株式以外の財産の帳簿価額が請求日における分配可能額を超えているときは、取得請求権付株式の株主はその請求権を行使できません(166条1項ただし書)。
イ…誤りです。発行可能株式総数は定款記載事項なので、株主総会の特別決議で定款を変更しない限り変更できません(37条1項、98条、466条、309条2項11号)。したがって発行可能株式総数を変更する場合、その旨の決議が別に必要です。例外として、株式の分割において分割後の発行済株式総数が発行可能株式総数を上回る場合で、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)により発行可能株式総数を増加する旨の定款変更ができますが、種類株式発行会社ではこの例外も認められません(184条2項)。
ウ…誤りです。種類株式発行会社は、特定の行為が、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼす恐れがあるときは、その株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の特別決議を経なければその行為ができません(322条1項)。この行為については同条に列挙されています。本問の場合、不利になるのはA種類株主なので同条に挙げられている「株式の内容の変更」は登記できますが、議決権のみの変更なので「発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加」には当たらず、両方を登記することはできません。
エ…正しいです。単元株式数を減少させる場合や、単元株式数についての株式の定めを廃止する場合は、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)のみで定款の変更ができます(195条1項)。単元株の減少や廃止は株主に不利益を及ぼさないためです。同様に、単元株式数を設定・変更する場合でも、株式の分割と当時に行う場合であって、議決権数が減るもしくは議決権を失う株主がいない場合には、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)のみで設定・変更ができることに注意してください(191条)。
オ…誤りです。株券発行会社が株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款変更をする場合には、定款変更の効力発生日の二週間前までに必要事項を公告し、かつ、株主および登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければなりません(218条1項)が、「株式の全部について株券を発行していない株券発行会社」は、①定款の定めを廃止する旨および②定款変更の効力発生日を、公告、または、株主および登録株式質権者に対して通知すれば足ります(218条3項、4項)。したがって、必ずしも通知証明書が必要なわけではありません。
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03
正解 2
ア 正しい
取得請求権付株式を取得するのと引換えに当該株式会社の新株予約権を交付する場合において、当該新株予約権の帳簿価額が請求日における分配可能額を超えているときは、取得請求権付株式の株主は、会社に対して、取得請求権付株式を取得することを請求することはできません(166条1項ただし書)。
よって、取得請求権付株式の取得と引換えにする新株予約権の発行による変更の登記の申請書には、当該請求の日において当該新株予約権の帳薄価額以上の分配可能額が当該会社に存在することを証する書面を添付しなければなりません。
イ 誤り
株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、効力発生日における発行可能株式総数を定めなければなりません(会社法180条2項)。
よって、株主総会の議事録を添付して、株式の併合による変更の登記及び当該株式の併合の割合に応じた発行可能株式総数の減少による変更の登記を申請することはできません。
ウ 誤り
種類株式発行会社が、株式の内容の変更についての定款の変更をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の特別決議がなければ、その効力を生じません(会社法322条1項1号ロ)。
本肢において、損害を受けるおそれのあるA種類株主を構成員とする種類株主総会において、決議されているのは、「株式の内容の変更」についての定款の変更だけであるため、発行可能種類株式総数に係る変更の登記を申請することはできません。
エ 正しい
株式会社は、取締役会の決議によって、単元株式数についての定款の定めを廃止することができます(会社法195条1項)。
よって、本肢では、当該取締役会の議事録を添付して、単元株式数の定めの廃止による変更の登記を申請することができます。
オ 誤り
株式の全部について株券を発行していない株券発行会社がその株式に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとする場合には、株主及び登録株式質権者に対し、その株式に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨及び定款の変更がその効力を生ずる日を通知すれば足ります(会社法218条3項)。
よって、効力が生ずる日において当該株式会社の株券が無効となる旨の通知は必要ありません。
以上から、正しい肢はアとエであり、2が正解となります。
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