ア × 結論として、公告はしなければならないが、公告をしたことを証する書面を添付しなくてもよいです。(会社法124)
本肢は基準日の2週間前までに、当該基準日及び基準日株主が株式の割当を受ける権利を有する旨を公告したことを証する書面を添付しなければならない点で、誤っています。
考え方として、登記官は自分の仕事をを減らしたいのです。
つまり、添付書面はなるべく減らして登記申請して欲しいと思っています。
ということは、株主の不利益になることについては書面を添付しなければならないが、株主の不利益にならないものについては書面を添付しなくてもよい、というベクトルで押さえておこう!
株主割り当てによってあなたの持株数が知らない間に増えたとしても何か困ることはありますか?
逆にあなたの知らない間に持株数が減ったらあなたの資産が減ります。
自分の知らない間に資産が減るのは困りますよね。
イ 〇 考え方のベクトルとして、募集株式の発行決議をする場合取締役会決議でよい場合と株主総会特別決議を経なければならない場合で、考え方が大きく異なります。
まず、取締役会決議でよい場合は公開会社の場合です。(公開会社の株主にとって、新たな株主が増えるということは想定の範囲内なのです。)
そして、非公開会社は株主総会特別決議を経なければならない。(非公開会社の株主にとって自分の知らない間に新たな株主が増えるということは大問題なのです。一言でいうと、非公開会社とは仲間意識が強い会社です。つまり、新たな株主が増えて経営に口出しして欲しくないのです。)
よって、特別決議まで経たのだから決議日から払込期日まで2週間を経なくても総株主の同意は不要なのです。
しかし、唯一例外があります。
それが本肢の株主割当の場合です。
非公開会社が株主割当てをする場合、原則として株主総会特別決議を経なければならないが必ず決議日から申込期日まで2週間を経なければならない。(総株主の同意により期間短縮はできない。)
これは、株主に割り当てられた株式を購入するか、それとも購入しないのかを考える期間をじっくり与えようとする趣旨なのです。
現場で迷わないように「株主割り当ての場合は必ず決議日から申込日まで2週間必要」と覚えておきましょう。
記述においても重要な知識です。
ウ × 募集株式の引受人は、出資の履行をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない(会社208Ⅲ)
なぜなら、募集株式は資金調達のためにするからです。
相殺してしまったら資金が入ってきません。
しかし、会社に対する金銭債権の現物出資は可能です。これは会社債務を株式に変化させることで結果的に会社の財産が増えることになるからです。
余談ですが、社債は相殺できます。
なぜなら、社債は会社の借金ですので資金調達が目的ではないからです。
エ 〇 募集株式の引受人が株主となる時期は、募集株式と引換えにする金銭の払込又は金銭以外の財産の給付の期日、又はその期間です。(会社209Ⅰ)
払込期日や払込期間内に遅れたら大問題だが、先立って払い込むのは全く問題ないのです。
もし、先立って払い込むことができない!つまりその期日(仮に5月13日としよう)である1日の間中に支払わなければならないとすると、なんだか窮屈すぎませんか?
その日は海外旅行に出かけている人もいるかもしれません。
よって、本肢は前もって払い込んでおくのはOKですよ。という規定なのです。
オ × 本肢は、募集事項、当該株主が割当を受ける募集株式の数および募集株式の引受の申込みの期日を通知したことを証する書面を添付しなければならないとする点が誤っている。
なぜなら、上記の通知書面は商業登記法56条に添付せよと記載されてないからです。
つまり、登記官にとってはチェックするまでもないということです。