司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問65

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問題

平成31年度 司法書士試験 午後の部 問65 (訂正依頼・報告はこちら)

株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行による変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  定款に株主に株式の割当てを受ける権利を与えるにつき基準日の定めがない会社が、当該基準日を定めて募集株式を発行した場合は、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が株式の割当てを受ける権利を有する旨を公告したことを証する書面を添付しなければならない。

イ  会社法上の公開会社でない会社が、株主総会において募集株式の引受けの申込みの期日を当該株主総会の決議の日から2週間を経過しない日と定めて募集株式の発行をした場合は、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、株主に対する募集事項等の通知の日から当該申込みの期日までの期間を2週間未満に短縮することについて総株主の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。

ウ  募集株式の引受人が募集株式を発行する会社に対し金銭債権を有する場合において、当該引受人が払込金額の全額の払込みをする債務と自己が有する当該金銭債権とを相殺する旨の意思表示をしたときは、当該意思表示をしたことを証する書面を派付して募集株式の発行による変更の登記を申請することができる。

工  募集事項として募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日を定めた場合において、募集株式の発行による変更の登記の申請書に添付された書面の内容から、募集株式と引換えにする金銭の払込みが当該払込みの期日に先立ってされたことが明らかなときであっても、募集株式の発行による変更の登記を申請することができる。

オ  募集株式の発行による変更の登記の申請書には、募集株式の割当てを受ける権利を有する株主に対し、募集事項、当該株主が割当てを受ける募集株式の数及び募集株式の引受けの申込みの期日を通知したことを証する書面を添付しなければならない。

  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

ア × 結論として、公告はしなければならないが、公告をしたことを証する書面を添付しなくてもよいです。(会社法124)

本肢は基準日の2週間前までに、当該基準日及び基準日株主が株式の割当を受ける権利を有する旨を公告したことを証する書面を添付しなければならない点で、誤っています。

考え方として、登記官は自分の仕事をを減らしたいのです。

つまり、添付書面はなるべく減らして登記申請して欲しいと思っています。

ということは、株主の不利益になることについては書面を添付しなければならないが、株主の不利益にならないものについては書面を添付しなくてもよい、というベクトルで押さえておこう!

株主割り当てによってあなたの持株数が知らない間に増えたとしても何か困ることはありますか?

逆にあなたの知らない間に持株数が減ったらあなたの資産が減ります。

自分の知らない間に資産が減るのは困りますよね。

イ 〇 考え方のベクトルとして、募集株式の発行決議をする場合取締役会決議でよい場合と株主総会特別決議を経なければならない場合で、考え方が大きく異なります。

まず、取締役会決議でよい場合は公開会社の場合です。(公開会社の株主にとって、新たな株主が増えるということは想定の範囲内なのです。)

そして、非公開会社は株主総会特別決議を経なければならない。(非公開会社の株主にとって自分の知らない間に新たな株主が増えるということは大問題なのです。一言でいうと、非公開会社とは仲間意識が強い会社です。つまり、新たな株主が増えて経営に口出しして欲しくないのです。)

よって、特別決議まで経たのだから決議日から払込期日まで2週間を経なくても総株主の同意は不要なのです。

しかし、唯一例外があります。

それが本肢の株主割当の場合です。

非公開会社が株主割当てをする場合、原則として株主総会特別決議を経なければならないが必ず決議日から申込期日まで2週間を経なければならない。(総株主の同意により期間短縮はできない。)

これは、株主に割り当てられた株式を購入するか、それとも購入しないのかを考える期間をじっくり与えようとする趣旨なのです。

現場で迷わないように「株主割り当ての場合は必ず決議日から申込日まで2週間必要」と覚えておきましょう。

記述においても重要な知識です。

ウ × 募集株式の引受人は、出資の履行をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない(会社208Ⅲ)

なぜなら、募集株式は資金調達のためにするからです。

相殺してしまったら資金が入ってきません。

しかし、会社に対する金銭債権の現物出資は可能です。これは会社債務を株式に変化させることで結果的に会社の財産が増えることになるからです。

余談ですが、社債は相殺できます。

なぜなら、社債は会社の借金ですので資金調達が目的ではないからです。

エ 〇 募集株式の引受人が株主となる時期は、募集株式と引換えにする金銭の払込又は金銭以外の財産の給付の期日、又はその期間です。(会社209Ⅰ)

払込期日や払込期間内に遅れたら大問題だが、先立って払い込むのは全く問題ないのです。

もし、先立って払い込むことができない!つまりその期日(仮に5月13日としよう)である1日の間中に支払わなければならないとすると、なんだか窮屈すぎませんか?

その日は海外旅行に出かけている人もいるかもしれません。

よって、本肢は前もって払い込んでおくのはOKですよ。という規定なのです。

オ × 本肢は、募集事項、当該株主が割当を受ける募集株式の数および募集株式の引受の申込みの期日を通知したことを証する書面を添付しなければならないとする点が誤っている。

なぜなら、上記の通知書面は商業登記法56条に添付せよと記載されてないからです。

つまり、登記官にとってはチェックするまでもないということです。

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02


正解 3

ア 誤り
株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告しなければなりません(会社法124条3項)。もっとも、これらの事項を公告したことを証する書面を添付しなければならないとする規定は存在しません(商業登記法56条参照)。

イ 正しい
株主割当てによる方法で募集株式を発行する場合において、募集株式の引受けの申込みの期日を定めた場合には、株式会社は、募集株式の引受けの申込みの期日の2週間前までに、株主に対し、引受けの申込みの期日を通知しなければなりません(会社法202条4項)。
株主に対する募集事項等の通知の日と、当該申込みの期日との間が2週間未満である場合は、期間を短縮することについての総株主の同意書を添付しなければなりません。

ウ 誤り
募集株式の引受人は、払込みをする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができません(会社法208条3項)。

エ 正しい
募集株式の引受人は、払込みの期日が定めされている場合には、その期日に、出資の履行をした募集株式の株主となります(会社法209条)。
定められた払込みの期日前に金銭の払込みがなされても、それは払込証拠金と扱われ、払込みの期日に払込金に充当されることになります。
よって、募集株式と引換えにする金銭の払込みが当該払込みの期日に先立ってされたことが明らかなときであっても、募集株式の発行による変更の登記を申請することができます。

オ 誤り
株式会社は、募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、①株式会社の商号、②募集事項、③金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所などを通知しなければなりません(会社法203条1項)。
もっとも、募集株式の発行による変更の登記申請を行う場合において、これらの事項を通知したことを証する書面を添付する必要はありません(商業登記法56条参照)。

以上から、正しい肢はイとエであり、3が正解となります。

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03

正解は3です。募集株式の発行についての平易な問題です。

ア…誤りです。基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び基準日株主が行使することのできる権利を公告しなければなりません(会社法124条3項)が、登記書類にその旨を添付しなければならないわけではありません。

イ…正しいです。引受けの申込み期日の株主への通知は、公告をもって代えることは認められず、通知(もしくは本問のように通知に代わる書面)が必ず必要です。なお、非公開会社では、募集事項等の決定には原則として株主総会の特別決議が必要です(202条3項4号、309条2項5号)。

ウ…誤りです。募集株式の引受人は、出資の履行をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができません(208条3項)。出資を確実にさせるためです。ただし、会社と相殺契約を締結した場合は債務を免れることができます(H5過去問)。

エ…正しいです。払込等期日を定めた場合、その期日に、募集株式の発行等の効力が発生します(209条)。期日までに払込みがされていれば問題ありません。もし払込等期間を定めた場合は、払込期間内に払込がされていることが必要で、募集株式の発行等の効力は出資履行日に発生します(同条)。

オ…誤りです。募集株式の発行による変更の登記の申請書に添付するのは、募集株式の引受けの申込み又は募集株式の総数を引き受けたことを証明する書面です(商業登記法56条)。そして、募集株式の引受けの申込みには、①申込みをする者の氏名又は名称及び住所、②引き受けようとする募集株式の数を記載しなければなりません(会社法203条2項)。

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