司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問67

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

平成31年度 司法書士試験 午後の部 問67 (訂正依頼・報告はこちら)

株式会社又は合同会社の資本金の額の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  株式会社において、株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合において、裁判所書記官の嘱託により株式会社の成立後における株式の発行の無効の登記をするときは、登記官は、発行済株式の総数及び資本金の額に関する登記を抹消する記号を記録するとともに、当該登記により抹消する記号が記録された登記を回復する。

イ  合同会社が資本金の額の減少による変更の登記を申請する場合は、当該登記の申請書には、当該資本金の額の減少につき総社員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。

ウ  株式会社が吸収分割を行う場合において、吸収分割株式会社が吸収分割の効力が生ずる日に分割の対価として交付を受けた吸収分割承継株式会社の株式を配当財産として剰余金の配当を行うときは、吸収分割株式会社は、吸収分割による変更の登記を申請すると同時に資本金の額の減少による変更の登記を申請しなければならない。

工  新たな出資による社員の加入により合同会社が資本金の額を増加する場合において、当該出資に係る財産が金銭以外のものであるときは、当該資本金の額の増加による変更の登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければならない。

オ  株式会社が資本金の額の減少と同時に募集株式の発行をする場合において、当該資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときであっても、当該資本金の額の減少による変更の登記の申請書には、債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

ア × 株式会社において、株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴えにかかる請求を認容する判決が確定した場合、裁判所書記官の嘱託により株式会社の成立後における株式の発行の無効の登記をするときは、登記官は、発行済株式の総数に関する登記を抹消する記号を回復する。

しかし、資本金の額は原則として株主総会の特別決議による場合に限り減少する。

つまり、株式と資本金は連動しません。

したがって、登記官は、資本金の額に関する登記を抹消する記号を記録するとともに、当該登記により抹消する記号が記録された登記を回復するとする点で、本肢は誤っています。

イ × 合同会社が資本金の額の減少による変更の登記を申請する場合は、当該登記の申請書には、業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面を添付しなければならない。

ちなみに、持分会社が定款変更する場合は総社員の同意が必要です。

そして、支配人の選任及び解任は社員の過半数の一致をもって決定しなければならないことも併せて押さえておきましょう。

ウ × 資本金の額は原則として株主総会の特別決議による場合に限り減少する。

つまり、株式と資本金は連動しません。

よって、吸収分割株式会社が吸収分割の効力が生ずる日に分割の対価として交付を受けた吸収分割承継株式会社の株式を配当財産として剰余金の配当を行うときに資本金は減少しません。

しかし、会社の財産が流出することに違いはないので債権者保護手続きを要します。

エ 〇 本肢のキーワードは「金銭のみ」「金銭以外」です。

合同会社において、社員の新たな出資による加入に伴い資本金の額が増加した場合、出資に係る財産が金銭のみであるときは、当該資本金の総額の増加による変更登記の申請書に「資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面」を添付することを要しない。

しかし、金銭以外を出資の目的とした場合は「資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面」が必要となります。

これは、発起設立の場合も同じであるので併せて押さえておきましょう。

オ 〇 株式会社が資本金の額を減少する場合で債権者保護手続きが不要となる場合はありません。

上記は必ず押さえておいてほしいです。

株式会社が資本金の額の減少と同時に募集株式の発行をする場合、当該資本金の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときは取締役会で決議できるということになるだけです。

株主総会特別決議を経るのはとても大変なのです。

参考になった数15

02

正解は5です。持分会社の中でも合同会社のみに当てはまる事項をよく整理しておく必要があります。

ア…誤りです。株式の発行の無効判決は将来効のみです(839条)。すなわち、当該株式の発行により発生した法律関係はさかのぼって無効にはならず、回復などの手続きもありません。

イ…誤りです。合同会社が資本金の額を減少させる場合には、債権者保護手続を経る必要があります(627条)。総社員の同意が必要なのは、定款の変更(637条)、会社の解散(641条)などです。また、一部の社員の同意があれば清算が結了するまで会社を継続できます(642条1項)。

ウ…誤りです。会社の分割では、分割会社と承継会社の間で吸収分割契約を結ぶ必要がありますが、契約事項の中に、分割株式会社における剰余金の配当等に関する事項があり、承継会社の株式を分割会社株主の配当財産とするかどうか決めることができます(758条8号)。資本金の額の変更登記には該当しません。

エ…正しいです。出資の内容が金銭以外の財産の場合には、その価額又は評価の標準を記載しなければなりません。持分会社では出資財産の価額の増減がその都度定款の変更を要することにも留意します(576条1項参照)。

オ…正しいです。資本金の額を減少させる場合には、債権者保護手続がつねに必要です。準備金の額の場合と混同しないように注意が必要です。なお、この選択肢のように資本金の額の減少の効力発生日後の資本金の額が効力発生日前の資本金の額を下回らないときは、株主総会の特別決議ではなく、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会決議)で足ります(447条3項)。

参考になった数5

03


正解 5

ア 誤り
株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失います(会社法839条)。
よって、当該株式の発行により生じた法律関係はさかのぼって無効にはならないため、発行済株式の総数及び資本金の額に関する登記を抹消する必要はなく、また、当該登記により抹消する記号が記録された登記の回復といった手続きも必要ありません。

イ 誤り
合同会社が資本金の額を減少する場合、債権者保護手続を経る必要はありますが(会社法627条1項)、総社員の同意は必要ありません。

ウ 誤り
株式会社が吸収分割を行う場合、吸収分割株式会社は分割の対価として交付を受けた吸収分割承継株式会社の株式を配当財産として剰余金の配当を行うことができますが、このことにより必ずしも吸収分割株式会社の資本金の額が減少するわけではありません。
よって、本肢の場合、資本金の額の減少による変更の登記をしなければならないとは限りません。

エ 正しい
資本金の額の増加による変更の登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければなりません(商業登記規則61条9項)。

オ 正しい
株式会社が資本金の額を減少する場合には、債権者保護手続を行う必要があります(会社法449条1項)。
よって、本肢では、債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければなりません。

以上から、正しい肢はエとオであり、5が正解となります。

参考になった数4