司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問69

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問題

平成31年度 司法書士試験 午後の部 問69 (訂正依頼・報告はこちら)

合名会社又は合資会社の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  設立しようとする合名会社の定款が電磁的記録をもって作成された場合において、当該合名会社の設立時代表社員が当該電磁的記録の内容を印刷した書面に「本書面は電子定款に係る電磁的記録に記録された情報と同ーである」旨記載して押印したときは、電磁的記録をもって作成された定款に代えて当該書面を添付して、設立の登記を申請することができる。

イ  定款に社員を加入させるには代表社員の同意があれば足りる旨の定めがある合資会社に新たな無限責任社員が加入した場合は、代表社員の同意書及び定款を添付して、社員の加入による変更の登記を申請することができる。

ウ  定款に存続期間の定めがない合名会社の社員の一部が、事業年度の終了の時の6か月前までに退社の予告をし、事業年度の終了の時に退社した場合は、社員の退社による変更の登記の申請書には、当該予告の後、退社したことを証する書面のほか、総社員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。

工  清算中の合資会社の社員が死亡した場合は当該死亡した社員については社員の死亡による退社の登記を、当該死亡した社員の相続人全員については社員の加人による変更の登記を、それぞれ申請しなければならない。

オ  定款で定めた存続期間の満了によって解散した合名会社が、社員の一部の同意によって継続する場合は、当該合名会社を継続することについて同意しなかった社員については、社員の退社による変更の登記を申請しなければならない。
  • アイ
  • アウ
  • イオ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

ア × 電子定款については、登記の申請書又は申請情報に、電子定款に係る電磁的記録及び所定の電子証明書を添付しなければならない。

電子定款を印刷して設立時代表社員が押印したのみでは信ぴょう性に欠けます。

やはり、公的な電子証明書を添付しないと登記官は真正な電子定款だと信じてくれません。

よって本肢は、「本書面は電子定款に係る電磁的記録に記録された情報と同一である」旨記載して押印したときは、電磁的記録をもって作成された定款に代えて当該書面を添付して、設立の登記を申請することができるとする点が誤っています。

イ 〇 持分会社の定款変更は総社員の同意により変更することができます。

持ち分会社の定款の絶対的記載事項(会社576Ⅰ)は必ず押さえておきましょう。

そして、持分会社は定款自治が色濃く反映される会社です。(定款変更するときに総社員の同意を得てますから)

よって、社員の加入には代表社員の同意があれば足りる旨の定款の定めも有効なのです。

ウ × 持ち分会社の存続期間を定款で定めなかった場合(会社の存続期間がほぼ永久的)、

又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合(人生100年時代だから会社の存続期間がめちゃくちゃ長い)、

各社員は、事業年度終了時の6か月前までに退社の予告をしたうえで事業年度終了時に退社することができます。

つまり、3月31日に退社できるということです。

この場合、退社予告書を添付しなければなりませんが、総社員の同意書は不要です。

確かに社員の変更だから定款変更で総社員の同意が必要なのではないかと考えがちですが、

総社員の同意はよほどのことがなければ得られません。

よって、定款変更ですが総社員の同意は不要なのです。

エ × 清算持分会社の社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合には、相続及び合併の場合の特則(会社608)の定款の定めがないときであっても、当該社員の相続人その他の一般承継人は、当該社員の持分を承継する。(会社675)

よって、清算持分会社においては、社員の死亡による退社及び相続による加入の事実を公示する実益はないので、社員の死亡による退社の登記及び相続による加入の登記を申請する必要はありません。

考えてみていただきたいのですが、今から会社登記簿を閉鎖しようとしている清算会社の社員はビジネスにおいてあまり重要ではありません。

それに、登記官は無駄な仕事はしたくないんです。

オ 〇 持分会社が一部の社員の同意によって継続することができる場合は以下の3つです。

①定款で定めた存続期間の満了(定款で定めた時は同意したのに、考えが翻った社員)

②定款で定めた解散事由の発生(定款で定めた時は同意したのに、考えが翻った社員)

③総社員の同意によって、解散した場合で清算が決了するまで(一旦は解散に賛成したのにやっぱり、継続したいと翻った社員)

そして、持分会社を継続することについて同意をしなかった社員は、持分会社が継続することとなった日に退社するため当該社員につき、社員の退社による変更の登記を申請しなければなりません。

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02


正解 3

ア 誤り
登記の申請書に添付すべき定款等が電磁的記録で作られているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を記録した電磁的記録を当該申請書に添付しなければなりません(商業登記法19条の2)。
しかし、本肢のように、「本書面は電子定款に係る電磁的記録に記録された情報と同ーである」旨が記載・押印されている電磁的記録の内容を印刷した書面をもって定款に代えることはできません。

イ 正しい
持分会社の社員の加入は、定款に別段の定めがない限り、総社員の同意により行います。
もっとも、定款の別段の定めとして、代表社員の同意があれば足りる旨を定めることも可能です。この場合、社員の加入による変更登記の申請書には、代表社員の同意書及び定款を添付する必要があります。

ウ 誤り
持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができ、この場合においては、各社員は、6ヶ月前までに持分会社に退社の予告をしなければなりません(会社法606条1項)。もっとも、総社員の同意は必要とされていません。
よって、本肢は、総社員の同意があったことを証する書面を添付しなければならないとしている点で誤りです。

エ 誤り
清算持分会社においては、定款の定めにかかわらず、社員が死亡した場合は当然に一般承継人が持分を承継することになります。
この場合に、社員の死亡による相続人の加入の登記をする実益はないため、その登記をする必要はありません(昭和29年4月12日民甲770号)。

オ 正しい
解散した持分会社は、清算が結了するまでの間、社員の全部又は一部の同意によって、持分会社を継続することができます。この場合、持分会社を継続することについて同意しなかった社員は、持分会社が継続することとなった日に、退社することになります(会社法642条2項)。

以上から、正しい肢はイとオであり、3が正解となります。

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03

正解は3です。電磁的記録に関する登記が問われていますが、オンライン申請と混同しないように注意が必要です。

ア…誤りです。登記の申請は原則として書面主義ですが、コンピュータ庁に対する申請においては、①登記すべき事項をOCR用紙に記載して申請書に添付する、②電磁的記録を申請書に添付する、という方式が認められています(商業登記法17条4項、会社法施行規則36条1項)。しかし、電磁的記録を印刷したものをもって定款に代えることはできません。

イ…正しいです。社員の加入には原則として総社員の同意が必要ですが、それは定款の変更で社員加入の効力が生じるためです(604条2項)。したがって本選択肢のように代表社員が社員の加入を認める場合、代表社員の同意書と定款を付せばよいと考えられます。

ウ…誤りです。定款に存続期間の定めのない持分会社にあっては、各社員は事業年度の終了時に退社できますが、事業年度終了の6か月前までに持分会社に退社の予告をしなければなりません(606条)。しかし、総社員の同意は特に必要とされません。

エ…誤りです。社員の死亡は法定退社にあたります(607条1項)。法定退社の中でも、相続および合併による退社には特則が設けられており、相続人が退社した社員の持分を承継する場合は、持分を承継したときに、当該持分を有する社員となります(608条2項)。新たな社員の加入とはなりません。

オ…正しいです。解散してから清算が結了するまでの間、持分会社を継続することに同意しなかった社員は、持分会社が継続することとなった日に退社します(642条2項)。

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