司法書士の過去問
令和2年度
午前の部 問6

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問題

令和2年度 司法書士試験 午前の部 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

次の対話は、条件と期限に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。

教授:条件も期限も、法律行為の効力の発生又は消滅等を一定の事実にかからしめる法律行為の付款ですが、条件と期限には、どのような違いがありますか。

学生:ア  条件は、実現するかどうか不確実な事実にかからしめるものであり、期限は、将来必ず実現する事実にかからしめるものである点で異なります。

教授:例えば、「自分が出世したら返済する」と約束して借金するような、いわゆる出世払い特約の場合には、条件と期限のどちらに該当するでしょうか。

学生:イ  出世するかどうかは不確実ですから、出世払い特約の内容に、出世の見込みがなくなったときには返済しなければならないということが含まれていた場合でも、条件に該当します。

教授:条件や期限を付することができない法律行為はありますか。

学生:ウ  例えば、婚姻や縁組、認知には、始期を付することはできますが、条件を付することはできません。

教授:では、訴訟外で相殺の意思表示をする場合に、その意思表示に条件や期限を付することはできますか。

学生:エ  訴訟外でする相殺の意思表示には、条件も期限も付することができません。教授:条件の成就や期限の到来の効果を条件成就や期限到来の時以前に遡らせることはできますか。

学生:オ  条件については、当事者において、これが成就した場合の効果を成就した時以前に遡らせる意思を表示したときはその意思に従うことになりますが、期限については、その効果を期限が到来した時以前に遡らせることはできません。
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この過去問の解説 (3件)

01

ア 〇 条件とは、法律行為の効力の発生又は消滅を、将来の不確実な事実の法律行為に付加された定めです。

これに対し、期限とは法律行為の効力の発生又は消滅・債務の履行を将来到来することの確実な事実に付加された定めです。

つまり、条件は不確実。期限は確実。と覚えておきましょう。

イ × 出世払い特約は不確定期限付法律行為です。

なぜなら、借りた金は必ず返済しなければなりません。

そして、返済日はいつか必ず来ます。

よって条件ではなく、不確定期限です。

ウ × 身分行為に条件を付することはできません。

また、身分行為に期限も付することもできません。

なぜなら、~したから又は3月31日になったからあなた方は離婚しなさい!と裁判所が強制するのはおかしいですよね。

よって、身分行為に条件と期限を付することはできません。

エ 〇 原則として相殺の意思表示に、条件又は期限を付することができません。

なぜなら相殺の意思表示に条件を付するのは一方的意思表示によって相手方の地位を不安定にすることになるからです。

また、相殺には遡及効があるので期限を付しても無意味だからです。

ちなみに、相手方の地位を不利にしない条件(返済が滞ることに対する停止条件)を付することは禁止されていません。

オ 〇 条件は当事者が遡及させる意思表示をした場合、その意思に従う。

しかし、期限には遡及効を付することができない。

なぜなら、期限に遡及効を認めてしまうと明確な期限(3/31)を定める意味がないからです。

よって、条件には遡及効を付することができます。

しかし、期限には遡及効は付することはできません。

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02

正解 3

ア 正しい
条件は、法律行為の発生または消滅を発生が不確実な事実にかからしめるものであり、期限は、法律行為の発生または消滅を将来必ず発生する事実にかからしめるものです。

イ 誤り
いわゆる出世払債務は、不確定期限付きの債務と解されています(大判大4年3月24日)。

ウ 誤り
公序良俗に反するため、婚姻や縁組、認知といった身分行為に期限や条件を付することはできません。

エ 正しい
取消し、解除、相殺のような単独行為は、相手方の地位を不安定にするため、原則として条件や期限をつけることはできません。
もっとも、債務者が弁済しないことを停止条件とする解除の意思表示は相手方の地位を不安定にするものではなく、実際にも多く行われています。

オ 正しい
条件については、当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従うことになります(民法127条3項)。
ですが、期限について、その効果を期限が到来した時以前に遡らせることができるとする規定は存在しません。

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03

正解は3です。

ア…正しいです。条件は、法律行為の発生または消滅を、発生が不確実な事実にかからしめるものです。一方、期限は、法律行為の発生または消滅を、将来必ず発生する事実にかからしめるものです。

イ…誤りです。「出世をしたら返済する」といったような、いわゆる出世払い特約は、「出世しなければ返さなくても良い」という停止条件と解することもできますが、多数の判例は、出世払いは将来のどこかの時点での返済を約束するものと考え、「出世するかどうかがわかったとき」を期限とする不確定期限と解釈しています(大判明43・10・31、大判大4・3・23など)。したがって条件であるというためには、個別の事案ごとに判断しなくてはなりませんが、本問においては、さらに「出世の見込みがなくなったときには返済しなければならない」と明記されていますので、不確定期限と考えられます。

ウ…誤りです。婚姻や縁組、認知などといった身分行為に条件や期限を付けることは、公序良俗上望ましくないため、禁止されます。

エ…正しいです。訴訟外でする相殺、解除、取消などの行為に条件や期限を付けることは、相手方の地位を不安定にするため、禁止されます。もっとも「返済ができなくなったら債務を免除する」というように、相手方が不利にならない条件ならば付けることもできますが、本問のような訴訟外の相殺では相手方が不利になる可能性が否定できませんので、認められないと考えられます。

オ…正しいです。当事者が、条件が成就した場合の効果をその成就以前に遡らせる意思を表示したときは、その意思に従います(127条3項)。一方、期限にこのような遡及を許す規定はありません。

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