司法書士の過去問
令和2年度
午前の部 問10

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問題

令和2年度 司法書士試験 午前の部 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

A、B及びCが各3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合の法律関係に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、次のうちどれか。

ア  甲土地につき、無権利のDが自己名義への所有権の移転の登記をした場合には、Aは、単独で、Dに対し、その所有権の移転の登記の抹消登記手続を求めることができる。
イ  Cが自己の持分をEに譲渡したが、その旨の登記がされず、A及びBがEの持分の取得を争っている場合において、Eが甲土地につき共有物分割の訴えを提起したときは、裁判所は、共有者がA,B及びEであることを認定して共有物の分割を命ずることができる。
ウ  Aが自己の持分を放棄した場合には、その持分は国庫に帰属する。
エ  Aが死亡し、F及びGが相続をした場合には、B及びCは、Aの遺産についての遺産分割がされる前であっても、F及びGに対して共有物分割の訴えを提起することができる。
オ  AがB及びCに無断で甲土地を占有している場合には、Bは、Aに対し、自己に甲土地を明け渡すように求めることができる。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

ア 〇 共有不動産が不法に第三者名義で登記されている場合、各共有者は、単独で、第三者に対し、不法登記の抹消を請求することができる。

なぜなら、これは、保存行為に当たるからです。

よって、Aは単独で、無権利のDに対し、その所有権の移転の登記の抹消登記を求めることができます。

イ × 本肢は不動産登記法の知識も使えます。

不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法177条の第三者に該当します。

よって、当該譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は当該持分の取得をもって他の共有者に対抗することができません。

つまり、きちんと登記をして登記簿上も共有者A、B、EになっていないとEは共有物分割訴訟を提起できません。

登記官の立場になって考えれば理解できるはずです。

登記簿上はA、B、CなのになぜEが共有物分割請求してくるのか登記官には分からないはずです。

なぜなら、登記官は形式審査(書面をチェック)しかしませんから。

ウ × 本肢の解説は条文そのままの文言であります。

共有者の一人が、その持分を放棄した時は、その持分は他の共有者に帰属する。(民法255)

エ 〇 本肢の考え方としてはAをFとGが相続したのなら、A=F+Gと考えます。

つまり、FとGの二人でAなのです。

よって、B及びCはAの遺産についての遺産分割がされる前でも、FとGに対して共有物分割請求ができます。

FとGに対して、という所がミソです。

オ × 共有者の一人が共有不動産につき使用方法に関する合意なく単独で占有している場合、他の共有者は、当該共有者の一人に対し当然には当該不動産の明け渡しを請求することはできない。(最判昭和41.5.19)

車を例に考えてみましょう。

A、B、Cが持分1/3ずつで共有している車をAが単独で使用しても全く問題ないということであります。

つまり、Aは自己の持分は1/3だから車の1/3部分しか使えない。

なんてことはあるわけないですよね。

よって、自己の持分に基づいて使用しているAに対しBは明け渡しを請求することはできません。

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02

正解は2です。

ア…正しいです。共有者の一人がその持分に基づき、共有不動産に対してする不法な登記の抹消請求は、妨害排除の請求であり、保存行為とみなされます。したがって無権利者が自己名義へ所有権移転の登記を行っていた場合でも、各共有者が単独で当該登記の抹消請求を行うことができます(252条ただし書、最判昭31・5・10、最判平15・7・11)。

イ…誤りです。共有者の一人が自己の持分を譲渡したものの、その登記がされておらず、他の共有者に当該持分譲渡を対抗できない状態で共有物分割訴訟が提起された場合においては、共有者全員に対する関係において、当該持分がなお譲渡人に属するものとして共有物分割訴訟を命ずべきであるとされています(最判昭46・6・18)。したがって本問ではA、B、Cの間で共有物分割がなされるべきであるといえます。

ウ…誤りです。共有者の一人が持分放棄をした場合、または死亡して相続人がいない場合は、その持分は他の共有者に帰属します(239条)。原則として、所有者のない不動産は国庫に帰属しますが(239条2項)、共有物の持分に関しては、他の共有者に密接な関連が認められることから、例外的な扱いが認められています。

エ…正しいです。共有物について、遺産分割前の状態にある共有持分(本問のA持分)と、他の共有持分(B持分とC持分)とが併存する場合、共有関係の解消を求めて裁判上取るべき手続は共有物分割訴訟であり、その判決に基づいて相続人(本問のEとF)に分与された財産は遺産分割の対象になり、この共有関係の解消については遺産分割により行うのが相当とされています(最判平25・11・29)。

オ…誤りです。共有者の一人が無断で共有物を占有している場合でも、共有者には持分に応じて使用収益する権利があるため、一人の共有者が他の共有者に無断で土地の占有を行っていたとしても、他の共有者は当然には当該土地の明渡を請求できません(最判昭41・5・19)。

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03

正解 2

ア 正しい
判例(最判昭和31年5月10日)は、本肢と同様の事案において、「ある不動産の共有権者の一人がその持分に基ずき当該不動産につき登記簿上所有名義者たるものに対してその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものというべく、従って、共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる。」としています。

イ 誤り
判例(最判昭和46年6月18日)は、本肢と同様の事案において、「不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法177条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもって他の共有者に対抗することができない。そして、共有物分割の訴は、共有者間の権利関係をその全員について画一的に創設する訴であるから、持分譲渡があっても、これをもって他の共有者に対抗できないときには、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割をなすべきものである。」としています。

ウ 誤り
共有者の一人が、その持分を放棄したときは、その持分は、他の共有者に帰属します(民法255条)。

エ 正しい
判例(最判平成25年11月29日)は、本肢と同様の事案において、「共有物について、遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分と他の共有持分とが併存する場合,共有者が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり、この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である。」としています。

オ 誤り
判例(最判昭和41年5月19日)は、少数持分権者も、自己の持分によって共有物を使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められることを理由に、共有持分の価格が過半数を超える者でも、少数持分権者に対して、当然にその明渡しを請求できるものではないとしています。

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