司法書士の過去問
令和2年度
午前の部 問22
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問題
令和2年度 司法書士試験 午前の部 問22 (訂正依頼・報告はこちら)
相続の承認及び放棄に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。
ア 相続の承認又は放棄をすべき期間は、伸長することができない。
イ 相続人は、相続財産を処分したとしても、被相続人が死亡したことを知らず、予想もしていなかった場合には、単純承認をしたものとはみなされない。
ウ 推定相続人は、相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を得れば、相続の放棄をすることができる。
エ 相続の放棄をした者が、強迫を理由として相続の放棄の取消しをしようとする場合には、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
オ Aが死亡し、その相続人がAの子B,C及びDである場合において、Bが相続の放棄をしたときは、C及びDは共同して限定承認をすることができる。
ア 相続の承認又は放棄をすべき期間は、伸長することができない。
イ 相続人は、相続財産を処分したとしても、被相続人が死亡したことを知らず、予想もしていなかった場合には、単純承認をしたものとはみなされない。
ウ 推定相続人は、相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を得れば、相続の放棄をすることができる。
エ 相続の放棄をした者が、強迫を理由として相続の放棄の取消しをしようとする場合には、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
オ Aが死亡し、その相続人がAの子B,C及びDである場合において、Bが相続の放棄をしたときは、C及びDは共同して限定承認をすることができる。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア 誤り
相続人は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければなりません(民法915条1項)。
もっとも、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができることとされています(同項但書き)。
イ 正しい
判例(最判昭和42年4月27日)は、本肢と同様の事案において、「たとえ相続人が相続財産を処分したとしても、いまだ相続開始の事実を知らなかつたときは、相続人に単純承認の意思があったものと認めるに由ないから、右の規定により単純承認を擬制することは許されないわけであって、この規定が適用されるためには、相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、または、少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をしたことを要するものと解しなければならない。」としています。
ウ 誤り
相続放棄をするためには、相続開始後において、法定相続人が家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条1項、同938条)。
したがって、推定相続人が相続開始前に相続放棄をすることはできません。
エ 正しい
相続放棄の効力は、確定的であり、撤回できないのが原則です(民法919条1項)。
もっとも、相続放棄が強迫による場合は、取り消すことができます(同条2項)。
オ 正しい
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができます(民法923条)。
本肢の場合、Bは相続放棄をしており、初めから相続人とならなかったものとみなされるため(同939条)、残りのC及びDが共同して限定承認することができます。
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02
正解:1
<解説>
ア:誤りです。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純もしくは限定の承認、または放棄をしなければなりません。
ただし、この期間は利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができます。(民法915条①)
したがって、伸長できないとする本肢は誤りです。
イ:正しいです。
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときには、相続人は単純承認をしたものとみなされます(民法921条)。
しかし、相続人が自己のために相続が開始した事実を知り又は被相続人の死亡した事実を確実に予想しながら、あえて相続財産を処分した場合でなければ、単純承認の効果は生じないとされています(最判昭和42・4・27民集第21・3・741)。
したがって、本肢は正しいです。
ウ:誤りです。
遺産および相続人の範囲は、相続の開始によって確定するものであり、相続放棄をしようとする者は相続開始があった時から一定期間内に、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません(民法915条①、938条)。
これに照らしますと、当然被相続人の死亡後に限定され、推定相続人は、相続開始前に相続放棄をすることはできないこととなります。
したがって、推定相続人は、相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を得れば、相続の放棄をすることができるとする本肢は誤りです。
エ:正しいです。
詐欺又は強迫による意思表示は、民法96条1項により取り消すことができますが、この規定により、詐欺又は強迫による相続放棄も取り消すことができます(民法919条②)。
そして、相続放棄の取消手続きをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません(民法919条④)。
したがって、本肢は正しいです。
オ:正しいです。
相続人が複数人いるとき、限定承認は相続人全員が共同して行う必要がありますが(民法923条)、相続放棄をした者は、相続人でなかったものとみなされる(民法939条)ため、CおよびDは共同して限定承認することができます。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、誤っているものは、肢ア・ウであり、正解は1となります。
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03
ア…誤りです。相続人は、自己のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内に、相続について単純承認・限定承認・放棄のいずれかを行わなければなりませんが、この期間は、利害関係人もしくは検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができます(915条1項)。
イ…正しいです。相続人が相続財産を処分しても、相続に関する単純承認(民法921条)があったとみなされるためには、相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、または、少なくとも相続人が被相続人が死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をしたことを要するとされています(最判昭42・4・27)。相続財産の処分が単純承認とみなされるのは、相続人本人が黙示の単純承認を行っているとみなされるだけでなく、第三者から見ても単純承認があったと考えられるためであり、処分行為という客観的事実さえあれば良いわけではないという主旨です。
ウ…誤りです。相続開始前に、相続放棄に必要な家庭裁判所の許可を得ることはできないため、推定相続人の相続放棄は認められていません(915条1項、938条、H9過去問)。強迫等により不当に相続放棄をさせられる事態を防ぐためです。これに対し、遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可があれば、することができます(1049条1項)。
エ…正しいです。「民法総則」および「親族」の規定による相続放棄の取消は認められています(919条2項)。この場合はその旨を家庭裁判所に申述しなければなりません(同条4項)。
オ…正しいです。相続の放棄をした者は、初めから相続人でなかったものとみなされます(939条)。よって相続放棄をした者が共同相続人に加えられることはありませんので、残りの共同相続人だけで限定承認をすることができます(923条)。
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