司法書士の過去問
令和2年度
午前の部 問32

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問題

令和2年度 司法書士試験 午前の部 問32 (訂正依頼・報告はこちら)

持分会社に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  合名会社がその社員の全部を有限責任社員とする定款の変更をする場合には、債権者は、当該会社に対し、定款の変更について異議を述べることができる。
イ  合資会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員になろうとする者が社員の加入に係る定款の変更をした時に出資に係る払込みの一部を履行していないときは、その者は、当該払込みを完了した時に当該合資会社の社員となる。
ウ  合名会社が利益の配当により社員に対して交付した金銭等の帳簿価額が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合には、当該利益の配当を受けた社員は、当該合名会社に対し、連帯して、当該金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。
エ  合名会社の業務を執行する社員は、自己又は第三者のために当該合名会社と取引をしようとするときは、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。
オ  合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、出資の払戻しを請求することができない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解 5

ア 誤り
合名会社は、その社員の全部を有限責任社員とする定款の変更をすることにより、合同会社となります(会社法638条1項3号)。
このような種類変更は、債権者に不利になる変更ではないため、債権者保護手続は不要です。

イ 誤り
持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生じます(会社法604条2項)。
もっとも、合同会社の場合、新たに社員となろうとする者が定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となることとされてします(同条3項)。
同規定は、合同会社の場合に適用される規定であるため、合資会社の場合は、当該社員に係る定款の変更をした時に、当該合資会社の社員となります。

ウ 誤り
持分会社が利益の配当により有限責任社員に対して交付した金銭等の帳簿価額が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合には、当該利益の配当を受けた有限責任社員は、当該持分会社に対し、連帯して、当該配当額に相当する金銭を支払う義務を負います(会社法623条1項)。
合名会社は、無限責任社員のみで構成されているため、同規定は適用されません。

エ 正しい
持分会社において、業務を執行する社員は、自己又は第三者のために持分会社と取引をしようとするときは、定款に別段の定めがある場合を除き、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければなりません(会社法595条1項1号)。

オ 正しい
合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、出資の払戻しを請求をすることはできません(会社法632条1項)。

参考になった数15

02

正解は5です。

ア…誤りです。持分会社が定款の変更をする場合、総社員の同意が必要です(637条)。本問のように合名会社が合同会社になる定款の変更では、資本金の額の減少などと異なり、債権者に不利になる変更ではないので、債権者保護手続は不要です。

イ…誤りです。持分会社では、新たに社員となろうとする者の加入が効力を生じるには、定款の変更が必要です(604条2項)。ただし、合同会社では、新たに社員になろうとする者が出資に係る払込の全部又は一部を履行していない場合は、その払込が完了したときに、当該社員が加入したものとする特則があります(同条3項)。合名会社・合資会社では、この特則の適用はありませんので、定款の変更をしたときに当該社員が加入することになります。

ウ…誤りです。持分会社が「有限責任社員」に対して交付した金銭等の帳簿価額が、当該利益の配当をする日における利益額を超える場合には、当該利益の配当を受けた社員は、当該持分会社に対し、連帯して、当該金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負います(623条1項)。無限責任社員しかいない合名会社では、このような社員の連帯義務はありません。

エ…正しいです。持分会社の業務執行社員は、自己又は第三者のために当該持分会社と取引をしようとするときは、定款に別段の定めがない限り、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければなりません(595条1項1号)。なお、業務執行社員は無限責任社員・有限責任社員のどちらもなることができるため、全ての持分会社において同様です。

オ…正しいです。合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、既に出資として払込をした金銭等の払戻しを請求することができません(624条1項)。有限責任社員しかいない合同会社では、出資の価額と払込済の出資金の額をつねに合わせておく必要があるためです。

参考になった数7

03

正解:5

<解説>

ア:誤りです。

合名会社がその社員の全部を有限責任社員とする定款の変更をすることにより、その合名会社は合同会社へ種類変更となります(会社法638条①)。

債権者は、定款変更による持分会社の種類変更について、意義を述べることはできません。

したがって、本肢は誤りです。

イ:誤りです。

本肢は、合同会社についての規定で、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員になろうとする者が社員の加入に係る定款の変更をした時に出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に合同会社の社員となるとしています(会社法604条③)。

合名会社及び合資会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生じます(会社法604条②)。

したがって、本肢は誤りです。

ウ:誤りです。

持分会社が利益の配当により有限責任社員に対して交付した金銭等の帳簿価額が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合には、当該利益の配当を受けた有限責任社員は、当該持分会社に対し、連帯して、当該金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負います(会社法623条①)。

この規定は、有限責任社員に対して定めていますが、無限責任社員についてこれを定めた規定はありません。

したがって、本肢は誤りです。

エ:正しいです。

持分会社の業務を執行する社員は、自己又は第三者のために当該持分会社と取引をしようとするときは、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければなりません。

ただし、定款に別段の定めがある場合は除きます。

(会社法595条①)

したがって、本肢は正しいです。

オ:正しいです。

合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、出資の払戻しを請求することができません(会社法632条①)。

したがって、本肢は正しいです。

以上により、正しいものは肢エ・オであり、正解は5となります。

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