司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問37
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問題
令和2年度 司法書士試験 午後の部 問37 (訂正依頼・報告はこちら)
弁論主義に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。
ア 被告が主張責任を負わない自己に不利益な主要事実を進んで陳述した場合であっても、原告がこれを援用しなかったときは、裁判所は、当該事実を判決の基礎とすることができない。
イ 債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟においては、当事者が過失相殺をすべきであるとの主張をしたときに限り、裁判所は、過失相殺をすることができる。
ウ 被告が自白した主要事実について、被告において当該事実が真実に合致しないことを証明することができない場合であっても、原告の同意があるときは、被告はその自白を撤回することができる。
エ 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
オ 裁判所は、職権で、必要な調査を官庁・公署その他の団体に嘱託することができる。
ア 被告が主張責任を負わない自己に不利益な主要事実を進んで陳述した場合であっても、原告がこれを援用しなかったときは、裁判所は、当該事実を判決の基礎とすることができない。
イ 債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟においては、当事者が過失相殺をすべきであるとの主張をしたときに限り、裁判所は、過失相殺をすることができる。
ウ 被告が自白した主要事実について、被告において当該事実が真実に合致しないことを証明することができない場合であっても、原告の同意があるときは、被告はその自白を撤回することができる。
エ 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
オ 裁判所は、職権で、必要な調査を官庁・公署その他の団体に嘱託することができる。
- アイ
- アエ
- イオ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解 1
ア 誤り
判例(最判昭和41年9月8日)は、本肢と同様の事案において、「所有権に基づき土地の明渡を求めた当事者が相手方に対しその土地の使用を許した事実を主張し、裁判所がこれを確定した場合には、相手方が右事実を自己の利益に援用しなかったときでも、裁判所は、その当事者の請求の当否を判断するについてその事実を斟酌すべきである。」としています。
イ 誤り
判例(最判昭和43年12月24日)は、本肢と同様の事案において、「民法418条による過失相殺は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができるが、債権者に過失があつた事実は、債務者において立証責任を負うものと解すべきである。」としています。
ウ 正しい
主要事実の自白を撤回するためには、①自白の内容が真実に反し、かつ、錯誤に基づいている場合(大判大正4年9月29日)、②詐欺や強迫など、刑事上、罰すべき他人の行為により自白するに至った場合(最判昭和33年3月7日)、③相手方の同意がある場合(最判昭和34年9月17日)のいずれかに該当することが必要です。
エ 正しい
損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができます(民事訴訟法248条)。
オ 正しい
裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に職権で嘱託することができます(民事訴訟法186条)。
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02
ア…誤りです。弁論主義の対象となるのは主要事実とされていますが、その事実が被告と原告のどちらから主張されたかは問いません(主張共通の原則)。したがって裁判所は、当事者の一方が自己に不利益な主要事実を陳述し、かつ当事者の他方による当該事実の援用がなくても、当該事実を判決の基礎とすることができます(最判昭41・9・8)。
イ…誤りです。債務不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して損害賠償の責任およびその額を定めます(民法418条)。不法行為の場合(民法722条2項)と異なり、債務不履行の場合は、裁判所が必ず過失相殺を考慮するとされます。
ウ…正しいです。原則として自白した主要事実の撤回は認められていません。自白した事実の撤回が認められるためには、➀自白した事実が真実に合致せず、かつ、自白が錯誤によること(大判大11・2・20)、②刑事上罰すべき他人の行為により自白したこと(最判昭33・3・7)、③相手方の同意があること、のいずれかが必要とされています(知財高判平22・6・17)。
エ…正しいです。損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上、その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全主旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができます(民事訴訟法248条)。
オ…正しいです。裁判所は、職権で、必要な調査を官庁・公署、または外国の官庁・公署、学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができます(民事訴訟法186条)。
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03
正解:1
<解説>
ア:誤りです。
被告が主張責任を負わない自己に不利益な主要事実を進んで陳述した場合であって、原告がこれを援用しなくても、裁判所は、判断するにつき、この事実をしんしゃくすべきであるとしています(最判昭41・9・8民集20・7・1314、民訴百選Ⅰ補正108)。
このことから、裁判所は、当該事実を判決の基礎とすることもできます。
したがって、本肢は誤りです。
イ:誤りです。
民法418条による過失相殺は債務者の主張がなくても裁判所が職権ですることができますが、債権者に過失があった事実は債務者が立証責任を負うとしています(最判昭43・12・24民集22・13・3454、民訴百選4版A18)。
当事者が過失相殺をすべきであるとの主張をしたときに限られません。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:正しいです。
自白の撤回は原則認められませんが、例外的にこれが認められるためには、以下のいずれかの事実が認められることが必要であるとされています。
① 自白した事実が真実に合致せず、かつ、自白が錯誤によることを自白者が証明したとき(大判大1 1・2・20民集1・52 )。
② 刑事上罰すべき他人の行為により自白されたとき(民事訴訟法338条①⑸、最判昭33・3・7民集12・ 3・469) 。
③ 相手方の同意があるとき(大判昭13・3・3)。
本肢の場合、原告の同意があるので、被告はその自白を撤回することができます。
したがって、本肢は正しいです。
エ:正しいです。
損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができるとしています(民事訴訟法248条)。
したがって、本肢は正しいです。
オ:正しいです。
裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができるとしています(民事訴訟法186条)。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、誤っているものは肢ア・イであり、正解は1となります。
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