司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問42

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問題

令和2年度 司法書士試験 午後の部 問42 (訂正依頼・報告はこちら)

次の対話は、民事執行に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、どれか。

教授:不動産の明渡しを目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものは、債務名義に該当しますか。
学生:ア  はい。債務名義に該当します。
教授:それでは、債務名義に該当する判決は、確定判決以外にもありますか。
学生:イ  はい。例えば、仮執行の宣言を付した判決は債務名義に該当します。
教授:次に、債権者が養育費に係る確定期限の定めのある定期金債権について債務名義を有する場合において、その一部に不履行があるときは、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができますか。
学生:ウ  いいえ。その場合、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについては債権執行を開始することはできません。
教授:それでは、養育費に係る金銭債権についての債務名義に基づいて、債務者の給料債権を差し押さえる場合に、当該給料債権の支払期に受けるべき給付の4分の1に相当する部分を超えて差し押さえることはできますか。
学生:エ  はい。その場合には、当該給付の2分の1に相当する部分まで差し押さえることができます。
教授:最後に、民事執行法上、確定判決を有する金銭債権の債権者に財産開示手続の申立てが認められるのはどのような場合ですか。
学生:オ  財産開示手続の申立てが認められるのは、強制執行又は担保権の実行における配当等の手続において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったことを疎明した場合に限られます。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解 4

ア 誤り
公正証書が債務名義となるのは、金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について作成されたもので、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものとされています(民事執行法22条5号)。
したがって、不動産の明渡しを目的とする請求について公証人が作成した公正証書は、債務名義にあたりません。

イ 正しい
仮執行の宣言を付した判決は債務名義にあたります(民事執行法22条2号)。

ウ 誤り
債権者が養育費に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することが可能です(民事執行法151条の2第3号)。

エ 正しい
養育費に係る金銭債権についての債務名義に基づいて、債務者の給料債権を差し押さえる場合、その給付の2分の1に相当する部分は、差し押さえることができません(民事執行法152条3項)。
したがって、当該給付の2分の1に相当する部分までは差し押さえることが可能です。

オ 誤り
財産開示手続の申立てが認められるのは、①強制執行または担保権の実行における配当等の手続において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったとき、②知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったときのいずれかにあたる場合です(民事執行法197条1項)。

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02

正解は4です。

ア…誤りです。金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものは、債務名義に数えられます(民事執行法22条5号)。不動産の明渡は給付ではありませんので、誤りです。

イ…正しいです。仮執行の宣言を付した判決は、債務名義です(民事執行法22条2号)。

ウ…誤りです。扶養義務等に関する定期金債権を給付する場合には特例があり、確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができます(民事執行法151条の2第1項4号)。

エ…正しいです。給料債権は、原則として、その給料の4分の3に相当する部分は差し押さえてはなりません(民事執行法152条1項2号)。しかし、扶養義務等にかかる定期金債権が請求されている場合は、2分の1まで差し押さえることが可能です(民事執行法152条3項)。

オ…誤りです。債権者による財産開示手続の申立てが認められるのは、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったことを疎明した場合、および、知れている財産に対する担保権を実行しても、申立人が完全な弁済を得られないことを疎明した場合です(民事執行法197条2項)。申立てのときに、担保権の実行が終わっている必要はありません。

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03

正解:4

<解説>

ア:誤りです。

金銭の一定の額の支払い又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(「執行証書」という。)は、債務名義となります(民事執行法22条⑸)。

これに不動産は含まれていません。

したがって、本肢は誤りです。

イ:正しいです。

仮執行の宣言を付した判決も、債務名義に該当する判決です(民事執行法22条⑵)。

したがって、本肢は正しいです。

ウ:誤りです。

債権者が養育費のような扶養義務等に係る確定期限の定めのある定期金債権について債務名義を有する場合において、その一部に不履行があるときは、特例として、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができます(民事執行法151条の2①)。

したがって、本肢は誤りです。

エ:正しいです。

給料債権については、その支払い期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分(民事執行法施行令2条①⑴:33万円))は差し押さえてならないとしています(民事執行法152条①)。

ただし、債権者が養育費のような扶養義務等に係る金銭債権を請求する場合には、「4分の3」とあるのは、「2分の1」とします(民事執行法152条③)。

したがって、本肢は正しいです。

オ:誤りです。

民事執行法上、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者に財産開示手続の申立てが認められるのは、⑴強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6か月以上前に終了したものを除きます。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったとき、⑵知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったときのいずれかの場合です(民事執行法197条①)。

本肢は⑴の場合に限られるとしていますが、財産開示手続の申立ては、⑴又は⑵いずれかの場合に認められます。

したがって、本肢は誤りです。

以上により、正しいものは肢イ・エであり、正解は4となります。

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