正解:5
<解説>
ア:誤りです。
判例は、債務者の電話による問合せに対し、家人が、債権者は一時不在で居場所が分からない旨を答えた場合も受領不能に当たるとしています(大判昭9・7・17民集13・1217、売買百選72)。
よって、本肢の場合、債務者は、受領不能を原因とする供託をすることができます。
したがって、本肢は誤りです。
イ:誤りです。
弁済供託により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければなりません(495条③)。
そして、供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合には、供託者は、供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求することができるとしています(供託規則16条①)。
供託者は、供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求しなければいけないのではなく、請求できるとしています。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:正しいです。
建物の借賃の増額について当事者間の協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りるとしています(借地借家法32条②)。
そして、債権者が弁済の受領を拒むときは、弁済者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができるとしています(民法494条)。
本肢の場合、従来の賃料と同じ額を相当と認める額として賃貸人に弁済の提供をし、賃貸人からその受領を拒まれたときは、受領拒絶を原因として供託をすることができます(昭38・5・18民甲1505号)。
したがって、本肢は正しいです。
エ:誤りです。
弁済供託は、債務の履行地の供託所にしなければなりません(民法495条①)。
本肢の場合の賃料は、債権者である貸主の住所で支払うことになっている持参債務であるから、債務の履行地は貸主の住所となり、供託はそこに所在する供託所(債務の履行地に供託所がない場合は、その最寄りの供託所)にすることができます。
したがって、当該建物の所在地の最寄りの供託所に供託をすることができるとする本肢は誤りです。
オ:正しいです。
債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れます(民法492条)。
これにより、債務の弁済期までに弁済の提供をしていなかった場合には、履行遅滞の責任を負い、遅延損害金を付して供託することになります。
そして、債務者が、履行遅滞の責任を負うのは、債務履行の期限が到来した時からです(民法412条①)。
本肢の場合、賃借人は、賃料の支払日すなわち債務履行の期限である毎月末日に当月分の賃料につき弁済の提供をしているため、履行遅滞の責任は負いません。
したがって、賃借人は、その3か月分の賃料について、遅延損害金を付すことなく供託をすることができます。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、正しいものは肢ウ・オであり、正解は5となります。