司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問53
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問題
令和2年度 司法書士試験 午後の部 問53 (訂正依頼・報告はこちら)
次の対話は、共有名義の不動産についての持分放棄に関する司法書士と補助者との対話である。司法書士の質問に対する次のアからオまでの補助者の解答のうち、正しいものの組合せは、どれか。
司法書士:地目が畑であり、A、Aの兄B及び妹Cが所有権の登記名義人である甲土地があり、甲土地の登記記録上、甲区1番に「昭和63年2月1日贈与」を登記原因及びその日付として、A,B及びCの持分がそれぞれ3分の1ずつ登記され、その後、乙区1番に「平成10年2月10日設定」を登記原因及びその日付とするDの地上権の設定の登記がされているものとします。
この事例で、Aが甲土地の持分の全部を放棄する旨の意思表示をした場合において、当該意思表示に基づいてAの持分の移転の登記を申請するときの登記の目的、登記原因及びその日付は、どのようになりますか。
補助者:ア 登記の目的は、「A持分全部移転」となります。また、登記原因は、「放棄」であり、その日付は、Aが甲土地の持分の全部を放棄する旨の意思表示をした日になります。
司法書士:先の事例で、Cが当該意思表示に基づくAの持分の移転の登記の申請を拒んでいるときは、A及びBは共同して、当該意思表示に基づきBに帰属した持分についてのみ当該移転の登記の申請をすることができますか。
補助者:イ いいえ、できません。
司法書士:先の事例で、A、B及びCが共同して、当該意思表示に基づきAからBへの持分の移転の登記とAからCへの持分の移転の登記とを同時に申請する場合において、B及びCの住所が甲土地の登記記録上の住所と一致するときは、B及びCの住所を証する市町村長が職務上作成した情報を提供することを要しますか。
補助者:ウ 提供することを要しません。
司法書士:では、Dの承諾を証する情報については、どうですか。
補助者:エ 提供することを要しません。
司法書士:農地法所定の許可があったことを証する情報については、どうですか。
補助者:オ 提供することを要しません。
司法書士:地目が畑であり、A、Aの兄B及び妹Cが所有権の登記名義人である甲土地があり、甲土地の登記記録上、甲区1番に「昭和63年2月1日贈与」を登記原因及びその日付として、A,B及びCの持分がそれぞれ3分の1ずつ登記され、その後、乙区1番に「平成10年2月10日設定」を登記原因及びその日付とするDの地上権の設定の登記がされているものとします。
この事例で、Aが甲土地の持分の全部を放棄する旨の意思表示をした場合において、当該意思表示に基づいてAの持分の移転の登記を申請するときの登記の目的、登記原因及びその日付は、どのようになりますか。
補助者:ア 登記の目的は、「A持分全部移転」となります。また、登記原因は、「放棄」であり、その日付は、Aが甲土地の持分の全部を放棄する旨の意思表示をした日になります。
司法書士:先の事例で、Cが当該意思表示に基づくAの持分の移転の登記の申請を拒んでいるときは、A及びBは共同して、当該意思表示に基づきBに帰属した持分についてのみ当該移転の登記の申請をすることができますか。
補助者:イ いいえ、できません。
司法書士:先の事例で、A、B及びCが共同して、当該意思表示に基づきAからBへの持分の移転の登記とAからCへの持分の移転の登記とを同時に申請する場合において、B及びCの住所が甲土地の登記記録上の住所と一致するときは、B及びCの住所を証する市町村長が職務上作成した情報を提供することを要しますか。
補助者:ウ 提供することを要しません。
司法書士:では、Dの承諾を証する情報については、どうですか。
補助者:エ 提供することを要しません。
司法書士:農地法所定の許可があったことを証する情報については、どうですか。
補助者:オ 提供することを要しません。
- アイ
- アウ
- イオ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解:5
<解説>
ア:誤りです。
本肢の登記の目的及び原因の日付についてはその通りです。
しかし、登記原因は、「放棄」ではなく「持分放棄」となります。
したがって、本肢は誤りです。
イ:誤りです。
A、B及びCの共同申請でなかったとしても、持分移転の登記の申請は、それぞれ各別の申請情報によりすることができるとしています(昭37・9・29民甲2751号)。
よって、A及びBが共同申請をすることで、Bに帰属した持分についてのみ持分移転登記の申請をすることができます。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:誤りです。
本肢の場合、所有権の持分移転登記であるから、B及びCの住所が甲土地の登記記録上の住所と一致するときでも、B及びCの住所を証する情報の提供を要します。
したがって、本肢は誤りです。
エ:正しいです。
本肢の場合、ABCが登記名義人である所有権について、Aが持分を放棄して持分移転登記がされたとしても、地上権等の用益権に変更は生じないことから、Dは登記上の利害関係者には該当しないため、Dの承諾を証する情報を提供する必要はありません。
したがって、本肢は正しいです。
オ:正しいです。
持分放棄の場合、農地法の許可は不要であるため、許可を証する情報について提供することを要しません(昭23・10・4民甲3018号)。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、正しいものは肢エ・オであり、正解は5となります。
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02
正解は5です。
ア…誤りです。共有者の一人Aが持分を放棄したことによる登記の目的は「A持分全部移転」であり、登記原因は「持分放棄」です。また、持分放棄は単独でできる行為であるため、登記原因となる日付は、Aが放棄の意思表示をした日です。したがって本問では登記原因の項のみ誤りとなります。
イ…誤りです。共有者の一人Aが持分を放棄した場合、当該持分は他の共有者(本問ではBとC)に、その持分割合にしたがって帰属します(民法255条)。この場合、持分が帰属する他の共有者と、持分放棄した共有者は、持分移転の登記を共同して申請する必要があり、AからBに帰属する持分についてのみ持分移転の登記を行うときは、AとBの共同申請によって登記をすることができます(昭37・9・29民甲2751号回答)。
ウ…誤りです。共有者の一人の持分放棄による持分移転の登記を行う場合、持分が帰属する他の共有者は登記名義人になりますので、住所証明情報が必要とされています(不動産登記令別表30ロ)。
エ…正しいです。地上権は一筆の土地の全体に設定される権利です。本問では、A持分放棄により所有権者がBとCのみになりますが、地上権者Dの使用収益に利害をもたらす変更ではないため、Dの承諾は必要ありません。
オ…正しいです。農地の所有権移転には、原則として農地法3条1項の許可が必要ですが、持分放棄を理由とする所有権移転の場合には、当事者の意思表示ではなく、法律の規定による所有権移転であることから、農地法の許可は不要とされています(先例)。
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03
正解 5
ア 誤り
共有者による持分放棄は単独行為であるため、持分を放棄する人の意思表示によって、その効果が生じます。
本肢は、登記の目的が「A持分全部移転」、登記原因の日付が「Aが持分放棄の意思表示をした日」となる点では正しいですが、登記原因は「放棄」ではなく「持分放棄」となります。
イ 誤り
共有者の一人が、その持分を放棄したときは、その持分は、他の共有者に帰属します(民法255条)。
本肢では、Aが放棄した持分は、BとCに帰属するため、Aの持分をBCに移転する登記を申請することになります。それぞれに対する持分の移転登記は、同一の申請情報ですることもできますが、個別にすることも可能です。
ウ 誤り
所有権の移転登記を申請する場合、登記権利者の住所証明情報を提供する必要があります。
これは、登記権利者の住所が登記記録上の住所と一致するときであっても、同様です。
エ 正しい
所有権の移転登記を申請する場合、既に登記されている権利者の承諾証明情報を提供する必要はありません。
オ 正しい
持分放棄に農地法の許可は必要ありません。
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