司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問55

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問題

令和2年度 司法書士試験 午後の部 問55 (訂正依頼・報告はこちら)

一定の期間又は期日を登記事項とする権利の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  登記記録上存続期間が満了している地上権を敷地権とする区分建物の所有権の移転の登記が申請されたときは、当該登記の申請情報及び添付情報から当該区分建物の敷地権が消滅していることが明らかな場合を除き、当該所有権の移転の登記をすることができる。
イ  地上権の存続期間を「永久」として、地上権の設定の登記を申請することはできない。
ウ  Aを賃借人とする賃借権について、存続期間を「Aが死亡するまで」とする賃借権の設定の登記を申請することができる。
エ  根抵当権設定契約において確定期日を定め、その登記がされている場合において、確定期日の経過前に確定期日を廃止する旨の当事者間の合意がされたときは、確定期日の経過後であっても確定期日を廃止する旨の登記を申請することができる。
オ  地目が畑である土地の賃借権について、存続期間を70年とする賃借権の設定の登記を申請することができる。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は1です。


ア…正しいです。区分建物においては、敷地権と区分建物所有権とを分離して処分することができないため、敷地権の存続期間が満了している区分建物の所有権移転登記にあたっては、本来は敷地権である地上権の存続期間の更新を先に行うべきとされます。しかし、一般に地上権を設定した土地の使用が継続されている場合(=敷地権が消滅していることが明らかではない場合)、建物が存在していれば、借地借家法5条2項の適用により、存続期間満了後に当該期間を更新したものとみなされます。登記されている区分建物についてもこの適用がされるため、敷地権の存続期間が満了していても、所有権移転の登記ができます(平30・10・16民二490号通知)。


イ…誤りです。地上権を地上権者と地上権設定者で定める場合、存続期間の制限はありません。よって存続期間を「永久」として登記を申請することができます(大判明36・11・16)。なお、地上権の設定当初に存続期間を定めず、のちに当事者の請求により裁判所が存続期間を定める場合は、20年から50年の間の期間が設定されます(民法268条2項)。


ウ…正しいです。賃借権について、その存続期間を「賃借権者が死亡するまで」と定めることができます(昭38・11・22民甲3116号)。なお、配偶者居住権を登記する場合は、特に存続期間を定めなかった場合、「(居住権を獲得した)配偶者が死亡するまで」とみなされます(民法1030条)。


エ…誤りです。根抵当権の元本の確定期日の経過前であれば、当事者の合意のみで確定期日の変更ができますが、変更後、その登記をしないうちに変更前の確定期日が到来したときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定します(民法398条の6第4項)。


オ…誤りです。賃借権の存続期間は、50年を超えることができず、これより長い期間を契約で定めたときであっても、その期間は50年に短縮されます(民法604条1項)。当該賃借権が借地権であるときは、30年以上の任意の期間を契約で定めることができますが(借地借家法3条)、本問の場合、地目が畑であるため借地借家法の適用はなく、土地の賃借権の存続期間は50年です。

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02

正解:1

<解説>

ア:正しいです。

借地権(すなわち本肢の場合は地上権。)の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなします(借地借家法5条②)。

よって、本肢の場合は、区分建物があるので、敷地権である地上権は消滅せずに更新していると解されるため、当該所有権の移転登記をすることができます。

したがって、本肢は正しいです。

イ:誤りです。

地上権の存続期間について、民法上は特に制限がなく、これを「永久」として地上権の設定登記を申請することができます(大判明36.11.16)。

したがって、本肢は誤りです。

ウ:正しいです。

賃借権の存続期間を「賃借権者が死亡するまで」とする賃借権の設定登記も申請することができます(昭38・11・22民甲3116号)。

したがって、本肢は正しいです。

エ:誤りです。

根抵当権の担保すべき元本について、その確定すべき期日を変更(廃止を含みます)する場合、その変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定します(398条の6④)。

よって、確定期日経過後には確定期日を廃止する旨の登記を申請することはできません。

したがって、本肢誤りです。

オ:誤りです。

農地の賃貸借の存続期間は、民法の原則に従い50年以下とされています(民法604条)。

よって、本肢の場合、存続期間を70年とする賃借権の設定登記を申請することはできません。

したがって、本肢は誤りです。

以上により、正しいものは肢ア・ウであり、正解は1となります。

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03

正解 1

ア 正しい

先例(平成30年10月16日民二490号)は、「登記記録上存続期間が満了している地上権を敷地権とする区分建物の所有権の移転の登記が申請されたときは、当該登記の申請情報及び添付情報から当該区分建物の敷地権が消滅していることが明らかな場合を除き、当該登記をすることができる。」としています。

その理由として、「借地借家法において、借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときは、建物がある場合に限り、原則として、従前の契約を更新したものとみなされていることからすれば、区分建物については、当該区分建物の登記記録等が現に効力を有するものとして存在する以上、当該区分建物が現に存在することを前提にすべきであり、かつ、当該地上権について更新がされていないと取り扱うことは相当ではなく、登記官は敷地権である地上権が消滅したと形式的に判断することはできない。」ということを挙げています。

イ 誤り

民法上、地上権の存続期間を制限する規定は置かれていません。

したがって、存続期間を「永久」とする地上権の設定登記を申請することは可能です。

ウ 正しい

先例(昭和38年11月22日民甲3116号)は、「賃借権の存続期間を『甲某が死亡するまで』と定めることができる。」としています。

エ 誤り

根抵当権の元本確定期日の変更登記(廃止を含む。)は、元本確定前においては申請することができますが、元本確定後には申請することができません。

オ 誤り

賃貸借の存続期間は、50年を超えることができません(民法604条1項)。

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