司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問57
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問題
令和2年度 司法書士試験 午後の部 問57 (訂正依頼・報告はこちら)
Aが所有権の登記名義人である甲建物についての処分禁止の仮処分の執行としての処分禁止の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、どれか。
ア A及びBが共同で取得したものの、Aの単有名義で登記がされている甲建物について、当該登記をA及びBの共有名義とするために、Bを仮処分の債権者とする所有権の更正についての登記請求権を保全する処分禁止の仮処分の登記がされた後、Cを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた場合において、A及びBの共有名義とする所有権の更正の登記の申請をするときは、Bは同時に、当該仮処分の登記に後れるCの抵当権の抹消を単独で申請することができる。
イ 甲建物について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の仮処分の登記がされた後、Cを登記名義人とする所有権の移転の登記がされた場合において、AからBへの所有権の移転の登記と同時に申請することにより、Bが単独で当該仮処分の登記に後れるCのための登記の抹消を申請するときは、その旨をA及びCに対しあらかじめ通知したことを証する情報を提供しなければならない。
ウ 甲建物について、Bの抵当権の設定の登記請求権を保全するため、処分禁止の仮処分の登記とともに保全仮登記がされた場合において、当該保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の判決書の正本に記載の債務者の表示と、当該保全仮登記の登記記録上の債務者の表示とが異なるときは、当該保全仮登記の本登記をする前提として、A及びBは共同して当該保全仮登記の更正の登記を申請することができない。
エ 甲建物について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の仮処分の登記がされた後、Cを登記名義人とする所有権の移転の登記及びDを登記名義人とする抵当権の設定の登記が順次された場合において、AからBへの所有権の移転の登記と同時に、Bが単独で申請することができる当該仮処分の登記に後れるC及びDのためにされた各登記の抹消は、一の申請情報により申請することができない。
オ 甲建物について、Bの建物収去土地明渡請求権を保全するため、所有権の処分禁止の仮処分の登記がされた後、Cを登記名義人とする所有権の移転の登記がされたときは、Bは、Aに対して甲建物を収去し、土地の明渡しを命ずる旨の判決書の正本及び当該判決の確定証明書を提供し、単独で当該仮処分の登記に後れるCのための登記の抹消を申請することはできない。
ア A及びBが共同で取得したものの、Aの単有名義で登記がされている甲建物について、当該登記をA及びBの共有名義とするために、Bを仮処分の債権者とする所有権の更正についての登記請求権を保全する処分禁止の仮処分の登記がされた後、Cを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた場合において、A及びBの共有名義とする所有権の更正の登記の申請をするときは、Bは同時に、当該仮処分の登記に後れるCの抵当権の抹消を単独で申請することができる。
イ 甲建物について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の仮処分の登記がされた後、Cを登記名義人とする所有権の移転の登記がされた場合において、AからBへの所有権の移転の登記と同時に申請することにより、Bが単独で当該仮処分の登記に後れるCのための登記の抹消を申請するときは、その旨をA及びCに対しあらかじめ通知したことを証する情報を提供しなければならない。
ウ 甲建物について、Bの抵当権の設定の登記請求権を保全するため、処分禁止の仮処分の登記とともに保全仮登記がされた場合において、当該保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の判決書の正本に記載の債務者の表示と、当該保全仮登記の登記記録上の債務者の表示とが異なるときは、当該保全仮登記の本登記をする前提として、A及びBは共同して当該保全仮登記の更正の登記を申請することができない。
エ 甲建物について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の仮処分の登記がされた後、Cを登記名義人とする所有権の移転の登記及びDを登記名義人とする抵当権の設定の登記が順次された場合において、AからBへの所有権の移転の登記と同時に、Bが単独で申請することができる当該仮処分の登記に後れるC及びDのためにされた各登記の抹消は、一の申請情報により申請することができない。
オ 甲建物について、Bの建物収去土地明渡請求権を保全するため、所有権の処分禁止の仮処分の登記がされた後、Cを登記名義人とする所有権の移転の登記がされたときは、Bは、Aに対して甲建物を収去し、土地の明渡しを命ずる旨の判決書の正本及び当該判決の確定証明書を提供し、単独で当該仮処分の登記に後れるCのための登記の抹消を申請することはできない。
- アイ
- アウ
- イエ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は1です。不動産に、処分禁止の仮処分の執行としての処分禁止の登記(以下、処分禁止の登記)がされている場合であっても、処分禁止の仮処分に違反する行為が全面的に禁止されるものではなく、その不動産に関する取引は認められます(最判昭45・9・8)。
ア…誤りです。処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得または処分の制限は、仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする際には、その登記に係る権利の取得または消滅と払拭する限度において、その債権者に対抗することができません(民事保全法58条1項)。Cの抵当権はA持分に対しては有効であり、また、Cの設定した抵当権をBは引き受けることもできるため、Bが自己の持分に対する抵当権の抹消を望みかつ単独で申請する場合は、➀A単有名義からAB共有名義への所有権の更正の登記、②Cの抵当権をA持分のみに設定する更正の登記、を同時に申請しなければならないと考えられます(不動産登記法111条1項)。
イ…誤りです。仮処分の債権者が、処分禁止の登記に後れる登記の抹消を申請しようとする場合には、あらかじめ、登記の権利者に対し、その旨を通知しなければなりません(民事保全法59条1項)。したがってCに対する通知は必要ですが、Aへの通知は必要ではありません。
ウ…正しいです。所有権以外の権利の保存・設定・変更についての登記請求権を保全する場合、処分禁止の登記とともに、保全仮登記を行います(民事保全法53条2項)。当該保全仮登記に基づく本登記を行う前に、保全仮登記に基づく権利の表示がその保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義における権利の表示と符合しないときは、処分禁止の命令を発した裁判所は、債権者の申立てにより、その命令を更正しなければならず、更正決定が確定したときは、裁判所書記官が、保全仮登記の更正を嘱託しなければなりません(民事保全法60条1項、3項、平21・11・8民三5000号)。
エ…正しいです。処分禁止の登記で保全された権利の本登記と、当該処分禁止の登記に遅れる登記の抹消とは、同時に申請する場合に限り、当該本登記の申請人(=仮処分の債権者)が単独で申請できますが、一の申請情報によってしなければいけないわけではありません。本問の場合、抹消しようとする権利の性質が違うので、一の申請情報では申請できません。
オ…正しいです。建物収去土地明渡請求権に基づく仮登記は、本登記のない仮登記であるため、債権者が保全すべき権利を本登記する際に当該処分禁止の登記に後れる登記を抹消できるとする規定(民事保全法58条3項)は当てはまりません。その代わり、建物収去土地明渡請求権に基づく処分禁止の登記がされたときは、債権者は、本案の債務名義(本問では判決書の正本)に基づき、その登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物収去土地明渡の強制執行ができます(民事保全法64条)。
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02
正解 1
ア 誤り
不動産に関する権利についての登記を請求する権利を保全するための処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、仮処分債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができません(民事保全法58条1項)。
本肢の場合、Cが設定した抵当権は、Bの持分との関係では抵触しますが、Aの持分との関係では有効に成立します。
したがって、Bが単独で申請することができるのは、Cの抵当権をA持分に対する抵当権とする更正の登記です。
イ 誤り
仮処分の債権者が処分禁止の登記に後れる登記を抹消するときに、あらかじめ、その旨の通知を要する相手は、登記の権利者です(民事保全法59条1項)。
ウ 正しい
保全仮登記に係る権利の表示がその保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義における権利の表示と符合しないときは、処分禁止の仮処分の命令を発した裁判所は、債権者の申立てに基づいて、その命令を更正します(民事保全法60条1項)。
この場合、保全仮登記の更正登記は裁判所書記官が嘱託する方法によって行われます(同条3項)。
エ 正しい
登記の目的が同一である場合、一の申請情報により登記を申請することができます。
本肢の場合、一方が所有権の登記の抹消であるのに対し、他方は抵当権の登記の抹消です。
したがって、登記の目的が同一でないため、一の申請情報により申請することはできません。
オ 正しい
仮処分債権者が単独で仮処分の登記に後れる登記を抹消することができるのは、自己の権利を実現するための登記と同時に申請する場合に限られています。
本肢の場合、甲建物を収去し、土地の明渡しを命ずる旨の確定判決では、Bは自己の権利を実現するための登記を申請することはできないため、単独で当該仮処分の登記に後れるCのための登記の抹消を申請することはできません。
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03
正解:1
<解説>
ア:誤りです。
権利の割合的な一部について処分禁止の仮処分がなされた場合、それに基づき権利の一部に係る処分禁止の登記をすることができます(昭30・4・20民甲695号)。
本肢の場合、Cの抵当権がBの仮処分に反するのは、Bの持分についてのみであるから、Bは単独で、Bの持分についてのCの抵当権の抹消登記をし、Cの抵当権をAの持分のみとする更正登記を申請することができます(仮処分債権者が単独で仮処分に後れる登記の抹消をする場合には、仮処分債権者は、抹消される登記名義人に登記を抹消する旨を通知し、その通知をしたことを証明する通知証明情報を提供して申請しなければなりません(民事保全法58条①②、不動産登記法111条①)。
したがって、本肢は誤りです。
イ:誤りです。
仮処分債権者が仮処分に後れる登記の抹消をする場合には、仮処分債権者は、抹消される登記名義人に登記を抹消する旨を通知し、その通知をしたことを証明する通知証明情報を提供して申請しなければなりません(民事保全法59条、不動産規則令別表71)。
よって、本肢の場合、Cに通知しなければならないのであって、Aに通知することを要しません。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:正しいです。
保全仮登記に係る権利の表示がその保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義における権利の表示と符合しないときは、処分禁止の仮処分の命令を発した裁判所は、債権者の申立てにより、その命令を更生しなければなりません(民事保全法60条①)。
そして、この更生決定が確定したときは。裁判所書記官は、保全仮登記の更生を嘱託しなければなりません(民事保全法60条③)
よって、本肢の場合、A及びBが共同して当該保全仮登記の更生の登記を申請することはできません。
したがって、本肢は正しいです。
エ:正しいです。
Cを登記名義人とする所有権移転登記と、Dを登記名義人とする抵当権設定登記とでは、登記の目的が異なるものであるから、その各登記の抹消は、一の申請情報により申請することはできません。
したがって、本肢は正しいです。
オ:正しいです。
仮処分債権者は本来の目的である権利の登記と仮処分に後れる登記の抹消とを同時に申請する場合に限り、単独で仮処分に後れる登記の抹消を申請できるとしています(民事保全法58条、不動産登記法111条)。
また、仮処分債権者が単独で仮処分に後れる登記の抹消をする場合には、仮処分債権者は、抹消される登記名義人に登記を抹消する旨を通知し、その通知をしたことを証明する通知証明情報を提供して申請しなければなりません(民事保全法59条、不動産規則令別表71)。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、誤っているものは肢ア・イであり、正解は1となります。
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