司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問61
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問題
令和2年度 司法書士試験 午後の部 問61 (訂正依頼・報告はこちら)
登記原因につき第三者の同意又は承諾を得たことを証する情報に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、どれか。なお、X株式会社及びY株式会社は、いずれも取締役会設置会社とする。
ア 取締役がA、B及びCの3名であり、代表取締役がAであるX株式会社において、X株式会社がA及びBが所有権の登記名義人である甲不動産をA及びBから購入してする売買を登記原因とする共有者全員持分全部移転の登記については、C一人で取締役会の決議をした取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供して申請することができる。
イ X株式会社及びX株式会社の完全子会社であるY株式会社の代表取締役がそれぞれA一人である場合において、Y株式会社が所有権の登記名義人である甲不動産をX株式会社に売り渡したことにより売買を登記原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、X株式会社とY株式会社が完全親子会社であることを証する情報を提供すれば、X株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報の提供を要しない。
ウ X株式会社が所有権の登記名義人である甲不動産をX株式会社からその代表取締役であるAに売り渡したことにより売買を登記原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、X株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報に添付した印鑑に関する証明書の原本の還付を請求することができる。
エ X株式会社及びY株式会社の代表取締役がそれぞれA一人である場合において、X株式会社の債務を担保するために、Y株式会社が所有権の登記名義人である甲不動産に抵当権を設定する登記を申請するときは、Y株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供しなければならない。
オ X株式会社の債務を担保するために、X株式会社の代表取締役であるAが自己が所有権の登記名義人である甲不動産に抵当権を設定する登記を申請するときは、X株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供しなければならない。
ア 取締役がA、B及びCの3名であり、代表取締役がAであるX株式会社において、X株式会社がA及びBが所有権の登記名義人である甲不動産をA及びBから購入してする売買を登記原因とする共有者全員持分全部移転の登記については、C一人で取締役会の決議をした取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供して申請することができる。
イ X株式会社及びX株式会社の完全子会社であるY株式会社の代表取締役がそれぞれA一人である場合において、Y株式会社が所有権の登記名義人である甲不動産をX株式会社に売り渡したことにより売買を登記原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、X株式会社とY株式会社が完全親子会社であることを証する情報を提供すれば、X株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報の提供を要しない。
ウ X株式会社が所有権の登記名義人である甲不動産をX株式会社からその代表取締役であるAに売り渡したことにより売買を登記原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、X株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報に添付した印鑑に関する証明書の原本の還付を請求することができる。
エ X株式会社及びY株式会社の代表取締役がそれぞれA一人である場合において、X株式会社の債務を担保するために、Y株式会社が所有権の登記名義人である甲不動産に抵当権を設定する登記を申請するときは、Y株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供しなければならない。
オ X株式会社の債務を担保するために、X株式会社の代表取締役であるAが自己が所有権の登記名義人である甲不動産に抵当権を設定する登記を申請するときは、X株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供しなければならない。
- アイ
- アエ
- イオ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は5です。会社の代表取締役が利益相反取引に該当する行為を行おうとする場合には、株主総会の承認(取締役会設置会社にあっては、取締役会の承認)を受けなければなりません(会社法356条1項、365条1項)。この場合、当該利益相反取引に係る不動産の登記の申請には、株主総会議事録(取締役会設置会社では、取締役会議事録)を、承諾を証する情報として添付しなければなりません(不動産登記令7条1項5号ハ、平成18・3・29民二755号)。
ア…正しいです。利益相反取引に関する取締役会の承認を受けようとする場合において、決議に特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(会社法369条2項)。「特別の利害関係を有する」とは、取締役自身が直接に利益を得る場合を指すと解されているため、本問における代表取締役AとBは決議に参加できず、残りの取締役であるCのみで取締役会の決議を行うことになります。
イ…正しいです。代表取締役AがX株式会社とY株式会社の代表取締役を兼ねており、X社とY社との間で甲不動産の売買を行おうとする場合には、原則として、どちらの会社からしても、Aは第三者であるX社(Y社)のために取引をすることになり、利益相反取引の間接取引にあたるので、甲不動産の所有権移転登記の申請には、X社とY社両方の株主総会の承認(取締役会設置会社では、取締役会の承認)を証する書面の添付が必要です(昭和37・6・27民甲1657号)。しかし、X社とY社が完全親子会社である場合は、親子間での利益の衝突がないため、株主総会の承認(取締役会設置会社にあっては、取締役会の承認)は不要とされています(大阪地裁昭58・5・11判タ502号)。
ウ…誤りです。X株式会社の所有である不動産を、X社の代表取締役Aに売却する行為は、利益相反取引の直接取引にあたりますので、当該取引に係る所有権移転の登記にあたっては、株主総会または取締役会の承認を証する書面の添付が必要です。この書面には、出席した代表者または取締役・監査役の記名押印が必要であり、さらに押印された印鑑についての印鑑証明書の添付もしなければなりません(不動産登記令19条1項、2項、昭55・11・22民三6720号)。この承諾書に押印した印鑑の印鑑証明書は、原本還付請求ができません(不動産登記規則55条2項)。
エ…正しいです。代表取締役AがX株式会社とY株式会社の代表取締役を兼ねており、X社の債務を担保するためにY社が物上保証人になる場合には、Y社の株主総会の承認(取締役会設置会社にあっては、取締役会の承認)を要します(昭35・8・4民甲1929号)。債務を担保されるX社には不利益になりませんが、Y社は物上保証人になることによって不利益を被るためです。よって株主総会議事録(取締役会議事録)の添付が必要です。
オ…誤りです。会社の債務を担保するため、その会社の代表取締役が保証人または物上保証人となる場合、株主総会の承認(取締役会設置会社にあっては、取締役会の承認)は要しません(昭41・6・8民三397号)。よって株主総会議事録(取締役会議事録)の添付も必要ありません。
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02
正解:5
<解説>
ア:正しいです。
甲不動産の所有権の登記名義人であるA及びBは特別利害関係人に該当するので取締役会の決議に加わることはできません(会社法369条①)。
取締役会の決議は、原則として、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行われます(会社法369条②)。
よって、C一人で取締役会の決議をした取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供して申請することができます。
したがって、本肢は正しいです。
イ:正しいです。
形式的には会社法365条に規定する利益相反取引に該当する取引であっても、会社の完全親子会社である場合には、実質的には利害の衝突はないため、承認は不要です(大阪地判昭58・5・11判タ502-189)。
よって、本肢の場合には、X株式会社とY株式会社が完全親子会社であることを証する情報を提供すれば、X株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報の提供をすることを要しません。
したがって、本肢は正しいです。
ウ:誤りです。
原則として、登記申請に添付した書面は原本の還付を請求することができますが、利害関係人等の承諾が必要な場合、その承諾者の印鑑証明書は原本還付することができません(不動産登記規則55条、19条②)。
よって、本肢の場合、利益相反取引に対して、X株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報に添付した印鑑に関する証明書の原本の還付を請求することはできません。
したがって、本肢は誤りです。
エ:正しいです。
X株式会社の債務を担保するために、Y株式会社を所有権の登記名義人とする甲不動産に抵当権を設定する登記を申請するとき、Y株式会社にとっては会社法365条に規定する利益相反取引に該当するため、Y株式会社の取締役会の承認を受け、それを証する情報を提供しなければなりません。
したがって、本肢は正しいです。
オ:誤りです。
本肢の場合、X株式会社の債務を担保するために、代表取締役Aを所有権の登記名義人とする甲不動産に抵当権を設定することは、会社法365条に規定する利益相反取引には該当しないため、X株式会社の取締役会の承認を受けることを要しません。
したがって、本肢は誤りです。
以上により、誤っているものは肢ウ・オであり、正解は5となります。
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03
正解 5
ア 正しい
取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(会社法369条2項)。
本肢における甲不動産の売買は利益相反取引にあたるため、A及びBは取締役会の議決に加わることができません。
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う(同条1項)ため、C一人で取締役会の決議をした取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供して申請することが可能です。
イ 正しい
形式的には直接取引に該当しても、実質的に利益相反関係が生じない場合には、会社の承認は不要だと解されています。
本肢の場合、Y社はX社の完全親子会社であるため、実質的には利益相反関係にないといえ、X社の取締役会の承認を受けたことを証する情報の提供は不要です。
ウ 誤り
同意又は承諾を証する情報を記載した書面に記名押印した者の印鑑証明書は、原本還付を請求することはできません(不動産登記規則55条1項但書)。
エ 正しい
本肢におけるY社の抵当権設定は、X社の債務を担保するためのものであるため、利益相反取引にあたります(会社法356条1項3号)。
したがって、Y社の取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供する必要があります(同356条1項、同365条1項)。
オ 誤り
会社の債務を担保するために、取締役が所有する不動産に抵当権を設定しても、会社にとって何ら不利益は生じないため、利益相反取引にはあたりません。
したがって、本肢の場合、X社の取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供する必要はありません。
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