司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問64
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問題
令和2年度 司法書士試験 午後の部 問64 (訂正依頼・報告はこちら)
株式会社の役員等の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。
ア 代表取締役Aが登記されている取締役会設置会社において、更に代表取締役Bを選定した取締役会の議事録にAが登記所に提出している印鑑と同一の印鑑を押印した場合には、その後、Bが代表取締役に就任したことによる変更の登記の申請前にAが改印届を登記所に提出したときであっても、当該登記の申請書には、当該議事録に押印した取締役及び監査役の印鑑につき市町村長の作成した証明書の添付を要しない。
イ 定款に取締役の員数に関して別段の定めがない監査等委員会設置会社において、監査等委員である取締役以外の取締役3名のうち1名が辞任した場合であっても、当該辞任による変更の登記を申請することはできない。
ウ 監査役会設置会社が監査役会を置く旨の定款の定めを廃止した場合には、当該定めの廃止の登記を申請すると同時に、社外監査役である旨の登記がされている監査役について社外監査役である旨の登記の抹消を申請しなければならない。
エ 会計監査人設置会社において、会計監査人が選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会において別段の決議がされなかったことにより再任されたものとみなされた場合には、会計監査人の重任による変更の登記の申請書には、当該会計監査人が就任を承諾したことを証する書面の添付を要しない。
オ 定款に「取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役の全員が書面により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。」旨の定めがある取締役会設置会社において、当該定款の定めにより代表取締役を選定する取締役会の決議があったものとみなされたときは、当該代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、当該提案についての取締役全員の同意書を添付しなければならない。
ア 代表取締役Aが登記されている取締役会設置会社において、更に代表取締役Bを選定した取締役会の議事録にAが登記所に提出している印鑑と同一の印鑑を押印した場合には、その後、Bが代表取締役に就任したことによる変更の登記の申請前にAが改印届を登記所に提出したときであっても、当該登記の申請書には、当該議事録に押印した取締役及び監査役の印鑑につき市町村長の作成した証明書の添付を要しない。
イ 定款に取締役の員数に関して別段の定めがない監査等委員会設置会社において、監査等委員である取締役以外の取締役3名のうち1名が辞任した場合であっても、当該辞任による変更の登記を申請することはできない。
ウ 監査役会設置会社が監査役会を置く旨の定款の定めを廃止した場合には、当該定めの廃止の登記を申請すると同時に、社外監査役である旨の登記がされている監査役について社外監査役である旨の登記の抹消を申請しなければならない。
エ 会計監査人設置会社において、会計監査人が選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会において別段の決議がされなかったことにより再任されたものとみなされた場合には、会計監査人の重任による変更の登記の申請書には、当該会計監査人が就任を承諾したことを証する書面の添付を要しない。
オ 定款に「取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役の全員が書面により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。」旨の定めがある取締役会設置会社において、当該定款の定めにより代表取締役を選定する取締役会の決議があったものとみなされたときは、当該代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、当該提案についての取締役全員の同意書を添付しなければならない。
- アエ
- アオ
- イウ
- イオ
- ウエ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は5です。
ア…誤りです。代表取締役Bを取締役会で選定した場合、Bの就任による代表取締役変更の登記の申請書には、当該取締役会に出席した取締役および監査役が取締役会議事録に押印した印鑑についての印鑑証明書が必要です(商業登記規則61条6項3号)。ただし、従前の代表取締役Aについては、登記所に提出している印鑑と同一の印鑑を当該取締役会議事録に押印した場合、Aの印鑑証明書の添付は不要とされています(商業登記規則61条6項ただし書)。しかし、議事録作成時から登記申請時までにAが改印届を出した場合には、Aが登記所に提出している印鑑と、議事録に押印した印鑑が異なりますので、Aも印鑑証明書を提出し直さなければなりません。
イ…誤りです。監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役もしくはそれ以外の取締役又は会計参与が欠けた場合、または定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期満了又は辞任により退任した役員は、新たな役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有します(=辞任による退任の登記ができません。会社法346条1項)。本問の場合、監査等委員会の構成に変化はありません。また、定款に役員数の増員の定めがないため、監査等委員である取締役は最低でも3名以上であり(会社法400条1項)、監査等委員でない取締役とあわせて6名以上いた中での1名辞任となるため、当該取締役の退任後の取締役会の員数も3名以上となり(会社法331条5項)、欠員は生じません。よって監査等委員でない取締役の辞任の登記を申請することができます。
ウ…正しいです。社外監査役は、監査役会設置会社においてのみ、設置が義務づけられています(会社法335条3項、911条3項18号)。したがって、監査役会設置会社が監査役会を置く旨の定款の定めを廃止した場合には、原則として、社外監査役である旨の登記の抹消を申請します。ただし、監査役の負う責任の限度に関する契約の締結についての定め(会社法911条3項25号、427条1項)が定款にあるときは、社外監査役の登記を抹消しません(平18・3・31民商782号通達)。
エ…正しいです。任期満了の際の株主総会において別段の決議がされなかったことにより、会計監査人が再任されたものとみなされる場合(会社法338条2項)の当該会計監査人の重任の登記の申請書には、➀会計監査人が法人である場合、登記事項証明書、②会計監査人が法人でない場合、資格を証する書面、③当該定時株主総会の株主総会議事録、の添付があれば足り、会計監査人が就任を承諾したことを証する書面の添付は不要とされています(平18・3・31民商782号通達)。
オ…誤りです。取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき特別に利害関係を有する取締役を除いた取締役の全員が、書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます(会社法370条)。このみなし取締役会決議は、みなし株主総会決議と異なり、定款に定めがなければその効力を生じません。したがって定款の添付が必要です(商業登記規則61条1項)。また、取締役会決議があったとみなしますので、当該提案の内容を示す取締役会議事録を作成して添付する必要があります(商業登記法46条2項)。しかし、決議において取締役全員の同意が得られたことを示す書類の添付を必要とする規定はありません。
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02
正解 5
ア 誤り
取締役会の決議によって代表取締役を選定した場合において、代表取締役の就任による変更の登記を申請する場合には、出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑に係る印鑑証明書を添付しなければなりません(商業登記規則61条6項3号)。
この場合、当該印鑑と変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一である場合は、印鑑証明書の添付を省略することが可能です(同項但書)。
本肢の場合、Bが代表取締役に就任したことによる変更の登記の申請前にAが改印届を登記所に提出しているため、当該議事録に押印した取締役及び監査役の印鑑に係る印鑑証明書の添付を省略することはできません。
イ 誤り
監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、三人以上で、その過半数は、社外取締役であることが必要です(会社法331条6項)。
辞任により監査等委員である取締役以外の取締役が欠けた場合には、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有するため(同346条1項)、員数を回復するまでの間、辞任登記をすることはできません。
本肢の場合、監査等委員である取締役以外の取締役1名が辞任していることから欠員は生じず、辞任による変更登記を申請することができます。
ウ 正しい
監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければなりません(会社法335条3項)。
したがって、監査役会設置会社が監査役会を置く旨の定款の定めを廃止した場合は、社外監査役である旨は登記事項ではなくなることから、当該定めの廃止の登記を申請するとともに、社外監査役である旨の登記の抹消を申請する必要があります。
エ 正しい
会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています(会社法338条1項)。
当該定時株主総会において別段の決議がなされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされます(同条2項)。
この場合、当該会計監査人の就任承諾は不要です。
オ 誤り
定款に取締役会の書面決議を認める旨の定めがある取締役会設置会社において、当該定款の定めにより代表取締役を選定する取締役の決議があったものとみなされた場合、当該代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、取締役会議事録を添付することで足り、当該提案についての取締役全員の同意書を添付する必要はありません。
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03
正解:5
<解説>
ア:誤りです。
代表取締役を選定した議事録に押印した印鑑と、変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるとき、代表取締役の就任による変更登記の申請書に、当該印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付することを要しません(商業登記規則61条⑥ただし書き)。
しかし、代表取締役の変更登記の申請前に当該印鑑の改印届を提出した場合、この規定は適用されません(商事法務1516・28)。
よって、本肢の場合は、市町村長の作成した証明書の添付を要します。
したがって、本肢は誤りです。
イ:誤りです。
取締役会においては、取締役は、3人以上でなければなりません(会社法331条⑤)。
また、監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければなりません(会社法331条⑥)。
本肢の場合、監査等委員である取締役以外の取締役3名のうち1名が辞任しても欠員は生じないため、当該辞任による変更登記を申請することができます。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:正しいです。
監査役会設置会社であるときは社外監査役であるものについて社外監査役である旨の登記をしなければなりません(会社法911条③(18))。
監査役会を置く旨の定款の定めを廃止した場合には、社外監査役である旨は登記事項ではなくなります。
よって、社外監査役である旨の登記の抹消を申請しなければなりません。
したがって、本肢は正しいです。
エ:正しいです。
会計監査人の重任登記(会社法338条②)を申請する場合には、商業登記法第54条第2項第2号及び第3号の書面並びに当該定時株主総会の議事録(同条第4項)を添付すれば足り、会計監査人が就任を承諾したことを証する書面の添付は要しません(平18・3・31民商782号)。
したがって、本肢は正しいです。
オ:誤りです。
本肢の場合は、会社法370条に規定されるみなし取締役会(みなし決議・書面決議)のケースです。
この場合には、申請書に、取締役会議事録とあわせて、みなし取締役会決議ができる旨の定款の記載があることを証するため、定款を添付して申請します。
したがって、当該提案についての取締役全員の同意書を添付しなければならないとする本肢は誤りです。
以上により、正しいものは肢ウ・エであり、正解は5となります。
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