司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問66

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問題

令和2年度 司法書士試験 午後の部 問66 (訂正依頼・報告はこちら)

株式会社の資本金の額の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  準備金の額を減少させてその一部を資本金とする場合における資本金の額の変更の登記の申請書には、準備金の額の減少に関して債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付しなければならない。
イ  剰余金の資本組入れによる変更の登記がされた後、資本金に組み入れるべき剰余金が存在しなかったことを理由として当該登記の更正を申請することはできない。
ウ  資本金の額が3億円、最終事業年度末日における剰余金の額が1億円である会社において、翌事業年度中にその他資本剰余金の額が5000万円増加した場合には、当該翌事業年度末日までに剰余金1億5000万円を資本に組み入れて、資本金の額を4億5000万円とする変更の登記を申請することができる。
エ  募集株式の発行による変更の登記において、誤った申請により資本金の額が少なく登記された場合には、当該登記後に更に資本金の額の変更の登記がされている場合を除き、資本金の額について当該登記の更正を申請することができる。
オ  清算株式会社が、準備金の資本組入れの決議をした場合には、準備金の資本組入れによる変更の登記を申請することができる。
  • アウ
  • アエ
  • イウ
  • イオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は3です。


ア…誤りです。準備金の額を減少させる場合には、➀減少する準備金の額の全部を資本金とする場合、②欠損のてん補目的の場合、を除き、債権者保護手続が必要です(会社法449条1項)。本問でも、欠損のてん補目的とする旨は書かれていないので、債権者保護手続自体は必要と考えられますが、準備金の額は登記事項ではなく、資本金の額の増加についてのみ変更登記を行うため、債権者保護手続を行ったことを証する書面の添付は不要です(商業登記法69条)。


イ…正しいです。剰余金の資本組入れによる資本金の額の増加の変更の登記をした後に、資本金に組み入れられるべき剰余金が存在しないことが明らかになった場合、会社は、その資本金の額を当該変更の登記前の額とする登記の更正を申請することはできません(平3・12・24民四6204号回答)。剰余金の額が実際と異なるのではなく、剰余金自体が存在していなかったので、存在しない実体関係を前提として更正登記を受理するわけにはいかないためです。


ウ…正しいです。株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額の増加をすることができます(会社法450条1項)。剰余金の額の減少は、株主総会の普通決議でいつでも決定できますが、減少する剰余金の額は、資本金の額がその効力を生ずる日における剰余金の額を超えてはならないとされています(会社法450条2項、3項)。本問における減少する剰余金の額は1億5000万円であり、資本金の増加予定額とちょうど同じであるので、効力発生日である定時または臨時株主総会の決議がされた日において、資本金を4億5000万円とすることができます。


エ…誤りです。募集株式の発行による資本金の額の変更の登記において、資本金の額を誤って少なく登記した場合には、当該登記後に更に資本金の額の変更の登記がされている場合を除き、当該登記の抹消の登記と、(正しい金額での)資本金の額の変更の登記を申請すべきとされています(平19・12・3民商2584号回答)。


オ…誤りです。清算株式会社は、➀自己株式の有償取得、②募集株式の発行以外での資本金の額の増加および減少または準備金の額の増加および減少、剰余金の配当、当該清算株式会社を吸収合併存続会社とすること、当該清算株式会社を吸収分割承継会社とすること、⑤株式交換・株式移転・株式交付に係る事項、は行うことができません(会社法509条)。準備金の資本組入れは募集株式の発行以外での資本金の額の増加にあたりますので、認められません。

参考になった数12

02

正解:3

<解説>

ア:誤りです。

株式会社が準備金の額を減少する場合(減少する準備金の全部を資本に組入れる場合を除く。)には、債権者は準備金の額の減少について異議を述べることができます(会社法)。

本肢は減少する準備金の全部を資本に組入れる場合に該当するので、準備金の額の減少に関して債権者保護手続を行ったことを証する書面を添付することを要しません。

したがって、本肢は誤りです。

イ:正しいです。

登記に錯誤又は遺漏があるときは、当事者は、その登記の更正を申請することができます(商業登記法132条①)。

しかし、剰余金の資本組入れによる変更の登記がされた後、資本金に組み入れるべき剰余金が存在しなかったことが明らかになったときには、抹消登記によるべきであり、当該登記の更正を申請することはできません(平3・12・24民四6204号)。

したがって、本肢は正しいです。

ウ:正しいです。

期中に増加したその他利益剰余金を資本金に組み入れることはできませんが、その他資本剰余金であれば期中に増加した分も資本金に組み入れることができます。

本肢の場合は、その他資本剰余金であるから、当該翌事業年度末日までに剰余金1億5000万円を資本に組み入れて、資本金の額を4億5000万円とする変更の登記を申請することができます。

したがって、本肢は正しいです。

エ:誤りです。

募集株式の発行による変更登記によって、資本金の額を誤って少なく登記した場合には、当該登記後に更に資本金の増額の変更登記がされている場合を除き、資本金の額について抹消及び変更の登記を申請することができます(平19・12・3民商2584号)。

したがって、本肢は、更正を申請することができるとしているので、誤りです。

オ:誤りです。

清算株式会社は、準備金の資本組入れをすることができません(会社法509条①)。

したがって、本肢は誤りです。

以上により、正しいものは肢イ・ウであり、正解は3となります。

参考になった数5

03

正解 3

ア 誤り
株式会社が準備金の額を減少する場合、原則として、債権者保護手続を行う必要があります(会社法449条1項本文)。
もっとも、減少する準備金の額を資本金とする場合には、債権者保護手続を行う必要はありません(同項括弧書)。

イ 正しい
先例(平成3年12月24日民四6201号)は、「資本金に組み入れるべき剰余金が存在しなかったことを理由よして、剰余金の資本組入れによる変更の登記を更正することはできない。」としています。

ウ 正しい
「その他資本剰余金」および「その他利益剰余金」は、剰余金として資本に組み入れることが可能です。

エ 誤り
募集株式の発行による変更登記において、資本金の額が誤って少なく登記された場合、当該錯誤による登記後に更に資本金の額の変更登記がされている場合を除き、申請書または添付書面が錯誤により作成されたことを証する上申書及び錯誤により作成された書面に代え新たに作成された添付書面を添付し、資本金の額の変更登記を申請することができます(平成19年12月3日民商2584号)。
本肢のように、更正登記を申請することはできません。

オ 誤り
清算株式会社は、資本金の額の増減をすることはできず(会社法509条1項2号)、準備金を資本に組入れる場合も同様です。

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