司法書士の過去問
令和2年度
午後の部 問68

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問題

令和2年度 司法書士試験 午後の部 問68 (訂正依頼・報告はこちら)

株式会社の組織再編の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  株主総会における吸収分割契約の承認決議を要する吸収分割をする場合において、吸収分割承継会社の株主総会における吸収分割契約の承認決議がされた日が、吸収分割契約で定めた効力発生日と同日であるときは、吸収分割承継会社は、吸収分割による変更の登記を申請することができない。
イ  株式移転による設立の登記の申請書には、登記すべき事項として、株式会社の設立の登記における登記すべき事項のほか、株式移転をした旨並びに株式移転完全子会社の商号及び本店をも記載しなければならない。
ウ  株式交換をする場合において、株式交換完全子会社が現に株券を発行している株券発行会社であるときは、株式交換完全親会社がする株式交換による変更の登記の申請書には、株式交換完全子会社が株券の提出に関する公告をしたことを証する書面を添付しなければならない。
エ  吸収分割による変更の登記の申請書に吸収分割承継会社が債権者保護手続を行ったことを証する書面として公告をしたことを証する書面を添付するときは、当該公告をしたことを証する書面の内容として、吸収分割承継会社が吸収分割により承継する事業の内容が記載されていることを要する。
オ  新設合併による設立の登記を申請する場合において、新設合併設立株式会社が取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く。)であるときは、当該設立の登記の申請書には、設立時代表取締役の就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。
  • アウ
  • アオ
  • イエ
  • イオ
  • ウエ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解:1

<解説>

ア:正しいです。

吸収分割承継会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収分割契約の承認を受けなければなりません(会社法795条①)。

よって、吸収分割契約の承認決議がされた日が、吸収分割契約で定めた効力発生日と同日であるときは、吸収分割による変更の登記を申請することができません。

したがって、本肢は正しいです。

イ:誤りです。

株式移転による設立の登記をするとき、株式移転をした旨並びに株式移転完全子会社の商号及び本店は、登記すべき事項とはされていません。

したがって、本肢は誤りです。

ウ:正しいです。

株式移転完全子会社が株券発行会社であるときは、株式交換完全親会社がする株式交換による変更登記の申請書には、当該株券発行会社に対し株式を提出しなければならない旨の公告をしたことを証する書面を添付しなければなりません(会社法219条①⑺、商業登記法89条⑻、59条①⑵)。

したがって、本肢は正しいです。

エ:誤りです。

吸収分割承継会社が債権者保護手続で公告するときは、⑴吸収分割をする旨、⑵分割会社の商号及び住所、⑶吸収分割会社及び吸収分割会社(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項、⑷債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を公告事項としています(会社法799条②)。

この公告事項には、吸収分割承継会社が吸収分割により承継する事業の内容は含まれていないため、当該公告をしたことを証する書面の内容として記載されていることを要しません。

したがって、本肢は誤りです。

オ:誤りです。

通常の株式会社の設立とは異なり、合併及び組織変更による設立である場合には、設立時取締役又は設立時代表執行役の就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑について市町村長の作成した証明書を添付することを要しません(商業登記規則④⑤)。

したがって、本肢は誤りです。

以上により、正しいものは肢ア・ウであり、正解は1となります。

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02

正解は1です。


ア…正しいです。吸収分割承継会社は、吸収分割の効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によって、吸収分割契約の承認を受けなければなりません(会社法795条1項、309条2項12号)。


イ…誤りです。株式移転により設立される完全親会社は、株式会社の設立の登記と同じ事項を登記する必要があります(会社法925条1項、911条3項各号)。株式移転完全子会社の商号等は、登記および添付書面上の記載として必要ありません。


ウ…正しいです。株式交換をする場合、株式交換完全子会社が株券発行会社であるときは、株式交換完全親会社における株式交換の登記において、株券提供公告をしたことを証する書面の添付が必要です(商業登記法89条8号、59条1項2号)。


エ…誤りです。吸収分割承継会社は、債権者保護手続として、➀吸収分割をする旨、②吸収分割会社の商号および住所、③吸収分割会社および吸収分割承継会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの、➃債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨、を官報に公告し、かつ、知れている債権者にこれを催告しなければなりません(会社法799条2項各号)。承継する事業の内容は含まれないので、誤りです。


オ…誤りです。新設合併設立株式会社は、通常の株式会社の設立の登記と同じ内容を登記する必要があり(会社法922条1項、911条3項各号)、設立時代表取締役を置いた場合の就任承諾書の添付も設立の登記同様に必要となります(商業登記法81条3号、47条10号)。しかし、通常の株式会社の設立と異なり、新設合併設立では、就任承諾書の印鑑につき、市区町村長の作成した印鑑証明書の添付は不要とされています(商業登記規則61条4項かっこ書、5項)。

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03

正解 1

ア 正しい
吸収分割承継会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収分割契約の承認を受けなければなりません(会社法795条1項)。
したがって、吸収分割承継会社の株主総会における吸収分割契約の承認決議がされた日が、吸収分割契約で定めた効力発生日と同日である場合は、吸収分割承継会社は、吸収分割による変更の登記を申請することはできません。

イ 誤り
株式移転による設立登記の場合、株式移転をした旨並びに株式移転完全子会社の商号及び本店は登記事項ではありません(会社法911条3項参照)。

ウ 正しい
株式交換完全子会社が株券発行会社であるときは、株式交換完全親会社がする株式交換による変更の登記の申請書には、株式交換完全子会社が株券の提出に関する公告をしたことを証する書面を添付しなければなりません(商業登記法89条8号、同59条1項2号)。

エ 誤り
吸収分割承継会社が吸収分割をする際に行う債権者保護手続において、債権者に公告すべき内容は、①吸収分割をする旨、②吸収分割承継会社及び吸収分割会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの、③債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨の3点です(会社法779条2項)。
吸収分割承継会社が吸収分割により承継する事業の内容は公告事項に含まれないため、記載は不要です。

オ 誤り
設立の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付する必要があります(商業登記規則61条4項)。
もっとも、合併及び組織変更による設立の場合は同項の適用が除外されています(同項括弧書)。

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