司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問2
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問題
令和3年度 司法書士試験 午前の部 問2 (訂正依頼・報告はこちら)
経済的自由に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。
ア 職業の許可制は、一般に、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課すもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合に限って合憲となる。
イ 国が、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図る目的で、立法により、個人の経済活動に対し、一定の法的規制措置を講ずる場合には、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って、これを違憲とすることができる。
ウ 憲法第22条第2項の外国に移住する自由は、移住を目的として生活の本拠を恒久的に外国へ移転する自由を含むが、単に外国へ一時旅行する自由を含むものではない。
エ 私有財産が公共のために用いられた場合であっても、その補償について定めた法令の規定がないときは、直接憲法第29条第3項を根拠にして補償請求をすることはできない。
オ 憲法第29条第3項の補償を要する場合とは、特定の人に対し特別に財産上の犠牲を強いる場合をいい、公共の福祉のためにする一般的な制限である場合には、原則として補償を要しない。
ア 職業の許可制は、一般に、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課すもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合に限って合憲となる。
イ 国が、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図る目的で、立法により、個人の経済活動に対し、一定の法的規制措置を講ずる場合には、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って、これを違憲とすることができる。
ウ 憲法第22条第2項の外国に移住する自由は、移住を目的として生活の本拠を恒久的に外国へ移転する自由を含むが、単に外国へ一時旅行する自由を含むものではない。
エ 私有財産が公共のために用いられた場合であっても、その補償について定めた法令の規定がないときは、直接憲法第29条第3項を根拠にして補償請求をすることはできない。
オ 憲法第29条第3項の補償を要する場合とは、特定の人に対し特別に財産上の犠牲を強いる場合をいい、公共の福祉のためにする一般的な制限である場合には、原則として補償を要しない。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解 4
ア 誤り
職業の許可制について、判例(最判平成4年12月15日)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するものというべきである。」としているため、前段は正しいです。
もっとも、同判例は、「租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない。」としており、職業の許可制による規制が積極的な目的のための措置であるか、消極的、警察的措置であるかについて明言していません。
イ 正しい
判例(最判 昭和47年11月22日)は、本肢と同様の事案において、「国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるべきであって、決して、憲法の禁ずるところではないと解すべきである。」とし、「個人の経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく、裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。」としています。
ウ 誤り
憲法第 22 条第 2 項の外国に移住する自由について、判例(最判昭和33年9月10日)は、「憲法22条2項の「外国に移住する自由」には外国へ一時旅行する自由をも含むものと解すべきである。」としています。
エ 誤り
判例(最判昭和43年11月27日)は、本肢と同様の事案において、「河川附近地制限令4条2号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではない。」としています。
オ 正しい
憲法第 29 条第 3 項の補償について、判例(最判昭和43年11月27日)は、「河川附近地制限令4条2号の定める制限は、河川管理上支障のある事態の発生を事前に防止するため、単に所定の行為をしようとする場合には知事の許可を受けることが必要である旨を定めているにすぎず、この種の制限は、公共の福祉のためにする一般的な制限であり、原則的には、何人もこれを受忍すべきものである。」としたうえで、「このように、同令4条2号の定め自体としては、特定の人に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものとはいえないから、右の程度の制限を課するには損失補償を要件とするものではない。」としています。
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02
ア × 本肢は、消極的、警察的措置である場合に限って合憲となるとする点が誤っています。
判例をまとめると、
許可制は職業の自由に対する強力な制限なので、許可制を肯定するためには、必要かつ合理的な場合に認められます。
以下の判例を熟読してみてください。
(最大判昭和50.4.30・薬局距離制限事件)
イ 〇 本肢をまとめると、
国が個人の経済活動に対する法的規制措置について、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白であるときに限って、裁判所はこれを違憲とすることができます。(最大判昭47.11.22・小売市場事件)
判例をご自身で一読してください。
ウ × 本肢は、単に外国へ一時旅行する自由を含むものではないとする点が誤りである。
外国に移住するのが自由なら、一時旅行するのも自由です。
法律知識ゼロでも解ける肢です。
(最大判昭33.9.10・帆足計事件)判例を読みましょう。
エ × 本肢は、直接憲法29条3項を根拠にして補償請求をすることはできないとする点が誤っている。
判例をまとめると、
砂利採取業者に対し行政側が、「これからは砂利採取するには許可を取ってください。」という処分をしました。当然許可が取れなかったらこれまで通り仕事ができないわけですから砂利採取業者は行政側に補償を求めたという事件です。
そして、補償請求をすることはダメではありません。という結果になりました。
(最大判昭43.11.27河川付近地制限令事件)
判例を読みましょう。憲法の学習は判例を読んで自分なりにまとめることができれば完成です。
オ 〇 判例をまとめると、
河川付近で砂利採集をすることの制限は、公共の福祉(権利と権利のぶつかり合い)のためにする制限であり、原則として誰もが受忍するべきものです。
そして、河川付近で砂利採集をすることの制限は特定の者に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものとは言えないから、その程度の制限を課するには損失補償を必ずしも付さなくてもよいですよ。ということです。
判例を読みましょう。
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03
正解は4です。
ア…誤りです。酒類販売業が免許制をとっていることが、職業選択の自由を保障する憲法22条違反ではないかについて、判例は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するものというべきである」とし、「租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという財政目的に対し、その規制についての立法府の判断が、政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理なものでない限り、22条1項には違反しない」と、積極的規制か消極的規制かを明らかにすることなく、その目的に照らし合憲であるとしています(酒類販売業免許制事件、最判平4・12・15)。
イ…正しいです。小売商業調整特別措置法において小売市場が許可制をとっていることが憲法22条違反ではないかについて、判例は、「個人の経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく、裁判所は、立法府の裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である」とし、いわゆる「明白性の原理」を採用しています(小売市場事件、最大判昭47・11・22)。同判例では、小売市場の許可制を「社会経済の調和的発展を企図するという観点から中小企業保護政策の一環としてとった措置」であり、合憲としています。
ウ…誤りです。旅券法において、一定の場合に外務大臣が旅券の発給を拒否できるとされていることが憲法22条に違反しないかについて、判例は、「憲法22条2項の『外国に移住する自由』とは、外国へ一時旅行する自由を含む」としており、「外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきである」と、外国への移住と旅行の同一視を認め、同法を合憲としています(帆足計事件、最判昭33・9・10)。
エ…誤りです。河川附近地制限令の課す制限事項の一部には損失補償の規定がなく、このことが憲法29条3項に違反しないかについて、判例は、河川附近地制限令自体は違憲ではないとしながらも、「〔河川附近地制限令4条の〕制限について…損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではない」としています(河川附近地制限令事件、最判昭43・11・27)。
オ…正しいです。上記、河川附近地制限令事件において、「河川附近地制限令の定める制限は…公共の福祉のためにする一般的な制限であり、…特定の人に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものとはいえないから、…制限を課するのに損失補償を要件とするものではなく、憲法29条3項に違反し無効であるとはいえない」とある通り、損失補償を行う前提として、「対象となる行為が公共の福祉のためにする一般的な制限を超え、特定の人に、特別に財産上の犠牲を強いるものである場合」であることが必要とされており、他の判例もこれを支持しています(最判昭50・3・13、最判昭50・4・11、最判昭57・2・5、H24過去問)。
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