司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問3
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問題
令和3年度 司法書士試験 午前の部 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
次の対話は、内閣に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せはどれか。
教授:内閣は、行政権の行使について、どのような責任を負いますか。
学生:ア 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負います。
教授:衆議院で内閣不信任決議案を可決した場合には、どのような効果が生じますか。
学生:イ 衆議院で内閣不信任決議案が可決された場合には、内閣は、直ちに総辞職をしなければなりません。
教授:内閣総理大臣の指名については、憲法上どのように定められていますか。
学生:ウ 内閣総理大臣は、国会議員の中から、国会の議決で指名されますが、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び指名の議決がされたときは、衆議院の議決が国会の議決となります。
教授:国務大臣の任命については、憲法上どのように定められていますか。
学生:エ 内閣総理大臣が国務大臣を任命しますが、国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければなりません。
教授:内閣総理大臣は、行政各部に対し指示を与える権限を有しますか。
学生:オ 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指示を与える権限を有します。
教授:内閣は、行政権の行使について、どのような責任を負いますか。
学生:ア 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負います。
教授:衆議院で内閣不信任決議案を可決した場合には、どのような効果が生じますか。
学生:イ 衆議院で内閣不信任決議案が可決された場合には、内閣は、直ちに総辞職をしなければなりません。
教授:内閣総理大臣の指名については、憲法上どのように定められていますか。
学生:ウ 内閣総理大臣は、国会議員の中から、国会の議決で指名されますが、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び指名の議決がされたときは、衆議院の議決が国会の議決となります。
教授:国務大臣の任命については、憲法上どのように定められていますか。
学生:エ 内閣総理大臣が国務大臣を任命しますが、国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければなりません。
教授:内閣総理大臣は、行政各部に対し指示を与える権限を有しますか。
学生:オ 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指示を与える権限を有します。
- アイ
- アオ
- イウ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア 〇 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。
なぜなら、内閣は、内閣総理大臣のもとに一体となって政治を行うのが原則なので、その責任も一体として負うのです。
イ × 本肢は、直ちに総辞職をしなければならないとする点が誤っている。
衆議院で内閣不信任決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣は総辞職をしなければなりません(憲法69条)。
内閣に総辞職をするのか、それとも衆議院の解散をするのか選択肢を与えているのです。
ウ × 本肢は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び指名の議決がされたときは衆議院の議決が国会の議決となるとする点が誤っています。
憲法67Ⅱを読んでください。本解説では条文の記載は省きます。
内閣総理大臣は迅速かつ確実な指名の必要性、及び衆議院の第一院性に基づくものなのです。
エ 〇 内閣総理大臣は、国務大臣を任命するが、国務大臣の過半数を国会議員の中から選ばなければならない(憲法68Ⅰ)。
これは、内閣の国会への従属性をあまり極端にせず、内閣にもある程度の自主性を認めることが必要であるという趣旨です。
オ 〇 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて、行政各部を指揮監督する(憲法72)。
判例は、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意志に反しない限り、行政各部にたいし、随時その所掌事務について一定の方向で処理するよう指揮、助言等の指示を与える権限を有するとした(最大変平7.2.22ロッキード事件丸紅ルート)
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02
正解は3です。
ア…正しいです。内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。
イ…誤りです。衆議院で内閣不信任決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣は総辞職をしなければなりません(憲法69条)。
ウ…誤りです。内閣総理大臣の指名について、衆議院と参議院が異なった議決をした場合に、➀両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は、②衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないとき、は、衆議院の議決が国会の議決となります(衆議院の優越、憲法67条2項)。
エ…正しいです。内閣総理大臣は、国務大臣を任命しますが、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければなりません(憲法68条1項)。
オ…正しいです。内閣総理大臣の行政への指揮監督権(憲法72条)について、判例では「内閣総理大臣は、行政権を行使する内閣の首長として、内閣を統率し、内閣を代表して行政各部を統轄調整する地位にあるものであり、…このような地位にある内閣総理大臣は、内閣の方針を決定し、閣内の意思の統一を図り、流動的で多様な行政需要に対応して、具体的な施策を遅滞なく実施に移すため、内閣の明示の意思に反しない限り、主任大臣に対し、その所掌事務につき指導、勧告、助言等の働きかけをする、すなわち指示を与える権能を有するとするべきである」とされています(最判平7・2・22)。
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03
正解 3
ア 正しい
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負います(憲法66条3項)。
イ 誤り
衆議院で内閣不信任決議案を可決した場合、10日以内に衆議院が解散されない場合に限り、総辞職をしなければならないのであって(憲法69条)、直ちに総辞職をしなければならないわけではありません。
ウ 誤り
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名されるため(憲法67条1項)、前段は正しいです。
衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合には、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となります(同2項)。
エ 正しい
国務大臣を任命するのは内閣総理大臣であるため(憲法68条)、前段は正しいです。
また、国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばなければならないため(同条但書)、後段も正しいです。
オ 正しい
内閣総理大臣の権限について、判例(最判平7.2.22)は、「閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。」としています。
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