司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問11
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問題
令和3年度 司法書士試験 午前の部 問11 (訂正依頼・報告はこちら)
先取特権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。
ア 不動産の賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ、不動産賃貸の先取特権を有する。
イ 同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、登記の前後による。
ウ 動産の売主は、その動産が転売され、その転売に係る売買代金請求権が他の債権者によって差し押さえられた場合には、当該売買代金請求権について動産売買先取特権に基づく物上代位権を行使することができない。
エ 不動産の賃借人がその不動産を転貸している場合には、賃貸人の先取特権は、賃借人がその転貸借契約に基づいて転借人から受けるべき金銭にも及ぶ。
オ 不動産売買の先取特権は、その効力を保存するために必要な登記がされていれば、その登記に先立って登記されている抵当権に優先する。
ア 不動産の賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ、不動産賃貸の先取特権を有する。
イ 同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、登記の前後による。
ウ 動産の売主は、その動産が転売され、その転売に係る売買代金請求権が他の債権者によって差し押さえられた場合には、当該売買代金請求権について動産売買先取特権に基づく物上代位権を行使することができない。
エ 不動産の賃借人がその不動産を転貸している場合には、賃貸人の先取特権は、賃借人がその転貸借契約に基づいて転借人から受けるべき金銭にも及ぶ。
オ 不動産売買の先取特権は、その効力を保存するために必要な登記がされていれば、その登記に先立って登記されている抵当権に優先する。
- アイ
- アエ
- イウ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア 〇 本肢は常識的に考えればわかる肢です。
不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する(民法312)。
そして、賃貸人は敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する(民法316)。
条文知識の肢ですね。
イ × 本肢も条文知識で解けます。
同一不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は①不動産保存②不動産の工事③不動産売買の順位による(民法331Ⅰ 325)
保→工→売 と覚えておきましょう。
ウ × 本肢は、物上代位権を行使することができないとする点が誤っています。
目的債権について一般債権者が差押え又は仮差押えの執行をしたにすぎないときは、その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではない(最判昭和60.7.19)。
よって、物上代位権を行使できます。
エ 〇 賃貸借の転貸があった場合は、賃貸人の先取特権は、転貸人が受けるべき金銭(転借賃料)にも及ぶ(民法314)
本肢も条文知識そのままです。
条文を読み込みましょう。
オ × 登記された不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権は、抵当権に先立って行使することができます。
しかし、不動産売買の先取特権と抵当権は登記の前後によって順にが決まります。
よって本肢は、その登記に先立って登記されている抵当権に優先する点が誤っています。
イメージとしては、
不動産保存と不動産工事は抵当権に対してファストパスを行使できる。
不動産売買VS抵当権は先に登記したもの勝ち。
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02
正解 2
ア 正しい
賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ、不動産賃貸の先取特権を有することになります(民法316条)。
イ 誤り
同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、325条各号に掲げる順序に従うこととされています(民法331条1項)。
民法325条では、1号で不動産保存、2号で不動産工事、3号で不動産売買を掲げており、同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が互いに競合する場合には、不動産保存、不動産工事の順序になります。
ウ 誤り
判例(最判昭60年7月19日)は、本肢と同様の事案において、「目的債権について一般債権者が差押え又は仮差押えの失効をしたにすぎないときは、その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではない。」としています。
エ 正しい
賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶび、譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とされています(民法314条)。
オ 誤り
不動産保存、不動産工事の先取特権の登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができます(民法339条)。
不動産売買の先取特権については、民法339条の適用がなく、同341条により、同373条が準用されます。
よって、抵当権との優劣は、登記の前後によることになります。
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03
正解は2です。
ア…正しいです。不動産の賃貸人が敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有します(316条)。
イ…誤りです。不動産保存の先取特権は、不動産工事の先取特権につねに優先します(331条1項、325条)。先取特権の効力の保存のためには、それぞれ適法な時期に登記されていることが必要ですが、登記の先後によって優先順位が変わるわけではありません。
ウ…誤りです。先取特権は、債務者がその目的である動産を第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができません(333条)。動産に対する先取特権は公示する手段がないので、所有権があると信じて引渡を受けた第三取得者を保護する必要があるためです。
エ…正しいです。不動産賃借権の譲渡または転貸がされている場合、賃貸人の先取特権は、譲渡人または転貸人が転借人から受けるべき金銭にも及びます(314条)。
オ…誤りです。不動産売買の先取特権と抵当権の間で競合がある場合、登記の先後によって、優先順位が決まります(341条、373条)。
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