司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問23
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問題
令和3年度 司法書士試験 午前の部 問23 (訂正依頼・報告はこちら)
遺言執行者に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せはどれか。
ア 特定の不動産を共同相続人以外の第三者に遺贈する旨の遺言がされた場合には、共同相続人らは、遺言執行者を被告として、遺言の無効を理由に、その不動産について共有持分権を有することの確認を求めることができる。
イ 遺産分割方法の指定として遺産に属する特定の不動産を共同相続人の1人に承継させる旨の遺言がされた場合には、遺言執行者は、単独で、当該遺言に基づいて被相続人から当該共同相続人の1人に対する所有権の移転の登記を申請することはできない。
ウ 特定の不動産の遺贈があった場合において、遺言執行者がいるにもかかわらず、遺贈の相手方でない相続人が当該不動産を第三者に売却し、かつ、当該第三者において遺言執行者がいることを知っていたときは、当該売却行為は無効となる。
エ 遺言執行者は、やむを得ない事由がある場合には、遺言者が遺言によって表示した意思に反しても、遺言執行者の責任で第三者にその任務を行わせることができる。
オ 遺言執行者が複数いる場合の各遺言執行者は、単独で、相続財産の保存に必要な行為をすることができる。
ア 特定の不動産を共同相続人以外の第三者に遺贈する旨の遺言がされた場合には、共同相続人らは、遺言執行者を被告として、遺言の無効を理由に、その不動産について共有持分権を有することの確認を求めることができる。
イ 遺産分割方法の指定として遺産に属する特定の不動産を共同相続人の1人に承継させる旨の遺言がされた場合には、遺言執行者は、単独で、当該遺言に基づいて被相続人から当該共同相続人の1人に対する所有権の移転の登記を申請することはできない。
ウ 特定の不動産の遺贈があった場合において、遺言執行者がいるにもかかわらず、遺贈の相手方でない相続人が当該不動産を第三者に売却し、かつ、当該第三者において遺言執行者がいることを知っていたときは、当該売却行為は無効となる。
エ 遺言執行者は、やむを得ない事由がある場合には、遺言者が遺言によって表示した意思に反しても、遺言執行者の責任で第三者にその任務を行わせることができる。
オ 遺言執行者が複数いる場合の各遺言執行者は、単独で、相続財産の保存に必要な行為をすることができる。
- アイ
- アオ
- イエ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア 〇 共同相続人は、遺言執行者を被告として遺言の無効を主張して、相続財産について共同相続人が共有持分権を有することの確認を求める訴えを提起することができます。(最判昭和31.9.18)
イ × 遺言執行者に関する問題が出たら、遺言執行者は遺言の内容を完全に遂行するため何でもします。というベクトルで覚えておきましょう。
遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言があったときは、遺言執行者は対抗要件を備えるために必要な行為をすることができます。(民1014Ⅱ)
よって、遺言執行者は、単独で遺言に基づいて被相続人から共同相続人の1人に対する所有権移転登記を申請することができます。
ウ 〇 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません。(民1013Ⅰ)
そして、相続人が遺言の執行を妨げる行為をしてもその行為は無効です。
ただし、相続人が遺言の執行を妨げる行為につき善意の第三者には対抗することができません。
エ × 本肢を一言でまとめると、遺言者の意思が最優先。ということです。
遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができます。(民1016Ⅰ)
ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときはその意思に従います。(民1016Ⅰ但書)
なお、遺言執行者が第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についてのみ責任を負います。(民1016Ⅱ)
よって、遺言者が遺言によって表示した意思に反しても、遺言執行者の責任で第三者に任務を行わせることができるとする点が誤っています。
オ 〇 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は過半数で決定します。
しかし、保存行為は単独ですることができます。(民1017)
共有物の管理(民252)の知識をそのまま流用できます。
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02
正解は3です。
ア…正しいです。遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産についての処分権を失い、かつその処分権が遺言執行者に帰属することから(1013条、1012条)、相続人は遺言執行者を被告として、遺言の無効を主張し、相続財産について自己に持分権があることを主張することができます(最判昭31・9・18)。
イ…誤りです。改正民法では、遺産の分割の方法の指定として、遺産に属する特定の不動産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(=特定財産承継遺言、いわゆる「相続させる」旨の遺言)がある場合には、遺言執行者は、承継相続人が自己の法定相続分を超える相続財産について対抗要件を備えるために必要な行為をすることができます(1014条2項)。遺言執行者に登記の権利義務を認めない従前の判例(最判平7・1・24)は否定されますので注意が必要です。特定財産承継遺言がある場合、承継相続人によっても、または遺言執行者によっても、単独で当該不動産に関する登記の申請ができます。
ウ…正しいです。遺言執行者がある場合、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為を行うことができず、これに反する行為は無効となります。例外として、行為の相手方が善意の第三者である場合は保護されますが、悪意の場合は保護されません(1013条1項、2項)。
エ…誤りです。遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を負わせることができ、さらに当該第三者に任務を負わせることがやむを得ない事由による場合には、相続人に対して第三者の選任および監督についての責任のみを負うことになります。しかし、遺言者がその遺言において別段の意思を表示したときは、その意思に従わなければならず、たとえ自己の責任においても第三者に任務を負わせることはできません(1016条1項、2項)。
オ…正しいです。遺言執行者が複数いる場合には、任務の執行には、その過半数による決をもってしなければなりませんが(1017条1項)、保存行為であれば各遺言執行者が単独ですることができます(1017条2項)。
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03
正解 3
ア 正しい
判例(最判昭31年9月18日)は、本肢と類似の事案において、「相続人は遺言執行者を被告として、相続財産につき共有持分権の確認を求めることができる。」としています。
イ 誤り
遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が登記、登録その他の対抗要件を備えるために必要な行為をすることができます(民法1014条2項)。
よって、本肢の場合、遺言執行者は単独で所有権の移転登記を申請することができます。
ウ 正しい
遺言執行者がある場合、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできず(民法1013条1項)、これに違反した行為は、無効となります(同条2項)。
もっとも、この無効は善意の第三者に対抗することはできません(同項但書き)。
本肢の場合、当該第三者は遺言執行者がいることを知っており、善意であるとはいえないため、当該売却行為は無効となります。
エ 誤り
遺言執行者は、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときを除き、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができます(民法1016条1項)。
オ 正しい
遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、原則として過半数で決することになります(民法1017条1項)。
もっとも、保存行為については、各遺言執行者が単独ですることができます(同条2項)。
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