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司法書士の過去問 令和3年度 午前の部 問24

問題

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故意に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。

ア  Aは、Bを殺害する意図で、B及びその同居の家族が利用するポットであることを知りながら、これに毒物を投入したところ、B並びにその同居の家族であるC及びDがそのポットに入った湯を飲み、それぞれその毒物が原因で死亡した。この場合、Bの同居の家族がC及びDの2名であることをAが知らなかったとしても、Aには、B、C及びDに対する殺人罪の故意が認められる。
イ  Aは、Bとの間で、Cに対して暴行を加えて傷害を負わせる旨を共謀したが、殺意を有してはいなかったところ、実行行為を担当するBが、呼び出したCの言動に激高して突発的にCに対する殺意を抱き、持っていた警棒でその頭部を殴り付けてCを殺害した。この場合、Aには、殺人罪の故意が認められ、同罪の共同正犯が成立するが、Aに科される刑は、傷害致死罪の法定刑の範囲内に限定される。
ウ  Aは、覚醒剤を所持していたが、これについて、覚醒剤であるとは知らなかったものの、覚醒剤などの身体に有害で違法な薬物かもしれないが、それでも構わないと考えていた。この場合、Aには、覚醒剤所持罪の故意が認められる。
エ  Aは、住居侵入罪の構成要件に該当する行為について、当該行為が同罪の構成要件に該当するかを弁護士に尋ねたところ、当該弁護士が法律の解釈を誤って当該行為は同罪の構成要件には該当しない旨の回答をしたことから、同罪は成立しないと誤解して実際に当該行為に及んだ。この場合、Aには、住居侵入罪の故意は認められない。
オ  Aは、Bをクロロホルムにより失神させてから海中に転落させて溺死させようと考え、Bにクロロホルムを吸引させたところ、Bは、クロロホルム摂取に基づく呼吸停止により死亡した。この場合、Aには、殺人罪の故意は認められない。
   1 .
アウ
   2 .
アオ
   3 .
イウ
   4 .
イエ
   5 .
エオ
( 令和3年度 司法書士試験 午前の部 問24 )
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この過去問の解説 (3件)

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正解は1です。犯罪における故意(刑法38条1項)があるというためには、➀犯罪を構成する要件(事実)の存在、②結果に対する予見(認識)、③違法な行為を行おうとする意思(意欲)が必要です。したがって、事実や認識の点について錯誤があったかどうかなどがよく問題となります。

ア…正しいです。犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要としますが、犯人が認識した事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りるとされています(最判昭53・7・28、事実の錯誤における法定的符合説)。同判例では、「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、…結果について殺人の故意があるものというべき」とし、いわゆる数故意犯説をとっています。本問でも、被告人Aに「人(B)を殺害する意図」があり、「B、C、Dの3人を殺害した結果」があるため、殺人罪(刑法199条)の構成要件を満たし、B、C、D全員に対する殺人罪の故意が認められると考えられます。

イ…誤りです。暴行・傷害を共謀した共犯者のうちの一人が殺人を犯した場合、殺意のなかった他の共犯者については、殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立するとされた判例があります(最判昭54・4・13、抽象的事実の錯誤)。同判例では、結果的には殺人罪の共同正犯が成立するものの、殺人の意思のなかった他の共犯者に対して「もし犯罪としては重い殺人罪の共同正犯が成立し、刑のみを…傷害致死罪の共同正犯の刑にとどめるとするならば、それは誤りである」と明記されています。

ウ…正しいです。被告人自らの所持していた薬物について、それが覚せい剤であるという確信はなくても、覚せい剤を含む体に有害で違法な薬物類であるという認識を被告人が持っていた場合、覚せい剤取締法の禁ずる輸入罪および所持罪の故意に欠けるところはないとして有罪とされた判例があります(最判平2・2・9)。

エ…誤りです。自己の行為が法律上許されないことを認識しないでなされたものであったとしても、法令の不知(=法律の錯誤)は犯罪の成立を妨げるものではないとされ、故意が認められています(大判大13・4・25、最判昭25・4・18など)。これに対し、事実の錯誤については上記のように法定的符合説がとられており、故意が認められるか否かは個々の判例によります(大判大14・6・9、最判昭53・7・28など)。本問では、被告人Aにつき、たとえば他人の住居を自宅と思い込んでいたなどの事実の錯誤ではなく、「正当な理由のない他人の住居への侵入」を認識しており、法律上で罪にならないと誤解していたため、住居侵入罪(刑法130条)に関する法律の錯誤ということができ、故意の阻却とはなりえないと考えられます。

オ…誤りです。被害者にクロロホルムを吸引させて(第1行為とする)、被害者を乗せた車ごと海中に転落させ(第2行為とする)、溺死させようとした場合において、犯人の認識と異なり、第2行為の前に行った第1行為の時点で被害者が死亡していたとしても、殺人の故意に欠けるところはなく、殺人の既遂となるとされた判例があります(最判平16・3・22、早すぎた構成要件の実現)。

付箋メモを残すことが出来ます。
6

刑法はご自身の六法で判例を読みましょう。

それが、合格への一番の近道です。

ア 〇 (最判昭和53.7.28)の判例を読みましょう。

AはBの同居の家族がC及びDの2名であることを具体的に知らないものの、およそ人を殺すという故意の下行為に及んでいることから、B、C及びDに対する殺人罪の故意が認められます。

イ × (最決昭54.4.13)の判例を読みましょう。

殺意がなかったAには、殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立します。

よってAには傷害致死罪の共同正犯が成立します。

ウ 〇 (最決平2.2.9)の判例を読みましょう。

よって、Aには覚醒剤所持罪の故意が認められます。

エ × (大判昭9.9.28)の判例を読みましょう。

弁護士といえど私人です。

そして、私人の意見を信頼して行為した場合は犯罪ではなくなる。なんてことは常識的に考えたらお分かりですよね。

オ × (最決平16.3.22)の判例を読みましょう。

Aには殺人罪の故意は認められます。

常識的に考えたら法律知識を用いなくてもお分かりいただけると思います。

6

正解 1

ア 正しい

判例(最判昭53年7月28日)は、本肢と類似の事案において、「犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りると解すべきであるから、人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」としています。

イ 誤り

判例(最判昭54年4月13日)は、本肢と類似の事案において、「殺人罪と傷害致死罪とは、殺意の有無という主観的な面に差異があるだけで、その余の犯罪構成要件要素はいずれも同一であるから、殺意のなかった被告人については、殺人罪の共同正犯と傷害致死罪の共同正犯の構成要件が重なり合う限度で軽い傷害致死罪の共同正犯が成立する。」としています。

また、同判例は、「もし犯罪としては重い殺人罪の共同正犯が成立し刑のみを暴行罪ないし傷害罪の結果的加重犯である傷害致死罪の共同正犯の刑で処断するにとどめるとするならば、それは誤りといわなければならない。」としています。

ウ 正しい

判例(最判平2年2月9日)は、本肢と類似の事案において、「被告人は、本件物件を密輸入して所持した際、覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない。」としています。

エ 誤り

判例(大判昭9年9月28日)は、本肢と類似の事案において、「人の看守する邸宅であることを認識しながら看守人の意思に反し侵入するにおいては、たとえ弁護士の意見により、その行為が罪とならないことを信じたとしても刑法130条の犯罪を構成する。」としています。

オ 誤り

判例(最決平16年3月22日)は、本肢と類似の事案において、「実行犯3名は、クロロホルムを吸引させて(以下、「第1行為」という)、被害者を失神させたうえ自動車ごと海中に転落させる(以下、「第2行為」という)という一連の殺人行為に着手して、その目的を遂げたのであるから、たとえ、実行犯3名の認識と異なり、第2行為の前の時点で被害者が第1行為により死亡していたとしても、殺人の故意に欠けるところはなく、実行犯3名については殺人既遂の共同正犯が成立するものと認められる。」としています。

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