司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問26

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問題

令和3年度 司法書士試験 午前の部 問26 (訂正依頼・報告はこちら)

盗品等に関する罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。

ア  Aは、B所有の腕時計を窃取したが、その後、犯行の発覚を恐れ、当該腕時計を自宅で保管していた。この場合において、Aには、窃盗罪に加えて盗品等保管罪が成立する。
イ  Aは、Bから、BがCから窃取した壺を被害者であるCに買い取らせることを持ちかけられ、当該壺が盗品であることを知りながら、これに応じ、Cと交渉の上、Cに当該壺を買い取らせた。この場合において、Aには、盗品等有償処分あっせん罪が成立する。
ウ  Aは、Bが窃取した宝石であることを知りながら、Bからこれを譲り受け、Cは、当該宝石がBが窃取した盗品であることを知りながら、Aから頼まれて、これを自動車で運搬した。この場合において、AとCとの間に婚姻関係があり、BとCとの間には刑法第257条第1項所定の関係がないときは、Cには、盗品等運搬罪が成立するが、その刑が免除される。
エ  公務員であるAは、その職務に関し、Bが窃取した自動車であることを知りながら、Bからこれを賄賂として無償で収受した。この場合において、Aには、収賄罪と盗品等無償譲受け罪が成立し、両罪は観念的競合の関係に立つ。
オ  Aは、Bから頼まれて盗品とは知らずに自動車を保管することとし、保管を始めて数か月間が経過した時点で、当該自動車はBが窃取した盗品であると知るに至ったが、Bによる窃盗の犯行の発覚を防ごうと考え、その後もBのためにその保管を継続した。この場合において、Aには、盗品等保管罪は成立しない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は4です。盗品関与罪(256条)は、盗品等無償譲受け罪(同条1項)、盗品等有償譲受け罪・盗品等有償処分あっせん罪・盗品等保管罪・盗品等運搬罪(同条2項)に分類されます。

ア…誤りです。自ら強盗・窃盗を実行する者については、重ねて賍物罪(=盗品譲受け罪)に問うことはできないとされた判例があります(最判昭24・10・1)。

イ…正しいです。盗品等の有償の処分のあっせんをする行為は、窃盗等の被害者を処分の相手方とする場合であっても、被害者による正常な盗品の回復を困難にするばかりでなく、窃盗等の犯罪を助長し誘発する行為であるため、盗品等の有償の処分のあっせん(256条2項)に当たり、盗品等処分あっせん罪が適用されるとした決定があります(最決平14・7・1)。

ウ…誤りです。盗品関与罪(256条)に対する刑の免除(257条1項)とは、盗品関与罪に該当する犯人について、領得罪(窃盗等)の本犯と所定の親族関係にある場合に刑を免除する旨を規定したもので、盗品関与罪の犯人相互で所定の親族関係にあっても、刑の免除はないと示された判例があります(最判昭38・11・8)。本問で言えば、たとえば婚姻関係にあるAとCで、Aが宝石を窃取し、Cがこれを運搬した場合(または、その逆の場合)は、257条1項の適用がありますが、窃盗を行ったのはAともCとも親族関係にないBなので、同条の適用はありません。

エ…正しいです。賍物故買罪(=盗品等有償譲受け罪)は、盗品であることを知りながらこれを買い受ける場合に成立するものであるが、その故意を主張するには、確定的に盗品であることを知っている必要はなく、盗品かも知れないと思いながら買い受ける意思、いわゆる未必の故意があれば十分であるとされた判例があります(最判昭23・3・16)。

オ…誤りです。本犯(窃盗犯)から頼まれて、盗品であることを知らずに物品の保管を開始した後、盗品であることを知るに至ったのに、なお本犯のために物品の保管を継続したときは、盗品の保管にあたるとした決定があります(最決昭50・6・12)。

参考になった数12

02

ア × (最判昭24.10.1)の判例を読みましょう。

窃盗を行ったものが盗品を保管する行為は当然予見できることです。

よって、Aは窃盗罪が成立しますが、盗品等保管罪は成立しません。

イ 〇 (最決平14.7.1)の判例を読みましょう。

なぜなら、窃盗等の犯罪を助長し誘発する恐れがあるからです。

ウ × (最決昭38.11.8)の判例を読みましょう。

Cには盗品等運搬罪は免除されません。

エ 〇 (最判昭23.3.16)の判例を読みましょう。

盗品等に関する罪と賄賂罪が1個の行為によって行われているので観念的競合となります。

オ × (最判昭50.6.12)の判例を読みましょう。

盗品であると気づいた後もBのために保管を継続したAは盗品等保管罪が成立します。

参考になった数6

03

正解 4

ア 誤り

判例(最判昭24年10月1日)は、本肢と類似する事案において、「自ら強窃盗を実行するものについては、その窃取した財物に関して、重ねて賍物罪の成立を認めることのできないことは疑いのないところである。」としています。

イ 正しい

判例(最決平14年7月1日)は、本肢と類似する事案において、「盗品等の有償の処分のあっせんをする行為は、窃盗等の被害者を処分の相手方とする場合であっても、被害者による盗品等の正常な回復を困難にするばかりでなく、窃盗等の犯罪を助長し誘発するおそれのある行為であるから、刑法256条2項にいう盗品等の『有償の処分のあっせん』に当たると解するのが相当である。」としています。

ウ 誤り

判例(最判昭38年11月8日)は、本肢と類似する事案において、「刑法257条1項は、本犯と賍物(盗品等)に関する犯人との間に同条項所定の関係がある場合に、賍物に関する犯人の刑を免除する旨を規定したものであるから、原判決が、たとい賍物に関する犯人相互の間に右所定の配偶者たる関係があってもその刑を免除すべきでない旨を判示したのは正当である。」としています。

エ 正しい

判例(最判昭23年3月16日)は、本肢と類似する事案において、「刑法197条の罪が成立するためには公務員が収受した金品が盗品等であっても差支えない(盗品等と知りながら収受した場合は収賄罪と賍物収受罪〔盗品等譲受罪〕との二罪が成立するわけである。)」としています。

オ 誤り

判例(最決昭50年6月12日)は、本肢と類似の事案において、「盗品等であることを知らずに物品の保管を開始した後、盗品等であることを知るに至ったのに、なおも本犯のためにその保管を継続するときは、盗品等の寄蔵(保管)にあたるものというべきである。」としています。

参考になった数5