司法書士の過去問
令和3年度
午前の部 問27

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問題

令和3年度 司法書士試験 午前の部 問27 (訂正依頼・報告はこちら)

株式会社の設立に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。

ア  株式会社を設立する場合に、検査役の報酬は、発起人が作成する定款に記載しなければ、その効力を生じない。
イ  設立時募集株式の引受人は、創立総会においてその議決権を行使した後であっても、株式会社の成立前であれば、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができる。
ウ  株式会社を設立する場合において、発起人に対して剰余金の配当を優先して受けることができる優先株式の割当てがされるときは、発起人が受ける特別の利益として定款に記載しなければ、その効力を生じない。
エ  定款に記載しないで行われた財産引受けは、株式会社が成立の後にこれを追認した場合であっても、遡って有効とはならない。
オ  株式会社の設立を無効とする判決が確定したときは、将来に向かって設立の効力が失われ、その株式会社について清算が開始される。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解 「エ、オ

ア 誤り

株式会社の負担する設立に関する費用のうち、定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものは、定款に記載または記録する必要はありません(会社法28条4号)。

本肢の検査役の報酬は、ここでいう「法務省令で定めるもの」に含まれているため(同施行規則5条3号)、定款に記載する必要はありません。

イ 誤り

設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができません(会社法102条6項)。

ウ 誤り

株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益は、定款に記載しなければその効力は生じません(会社法28条3号)。

この点、発起人が受ける「特別の利益」とは、発起人に帰属する人的利益のことをいうと考えられており、たとえば、株式とは関係のない利益配当に関する優先権や特別の経営参与権などがこれにあたります。

本肢にいう剰余金の配当を優先して受けることができる優先株式の割当は、株式と関係のある利益配当であるため、特別の利益にはあたらず、定款に記載しなくともその効力を生じることになります。

エ 正しい

判例(最判昭42年9月26日)は、定款に記載しないで行われた財産引受けについて、「成立後の会社が追認したからといって、法定の要件を欠く無効は財産引受けが有効となるものと解することはできない。」としています。

オ 正しい

会社の設立を無効とする判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失います(会社法839条)。

そして、設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合は、その会社について清算が開始されることになります(同475条2号)。

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02

ア × 原則として、株式会社を設立する場合、株式会社の負担する設立に関する費用は、定款に記載しなければ、その効力を生じません。(会社28④)

しかし、例外が4つあります。

1.定款作成にかかる印紙税

2.株式払込取扱機関への手数料及び報酬

3.変態設立事項の調査をする検査役への報酬

4.株式会社の設立の登記の登録免許税

以上の4つの事項は定款に記載しなくても効力を生じます。

なぜなら、以上の4つの事項は会社が設立のために必ず負担しなければなりませんし、その額も定まっているため、発起人がズルをして会社に負担させる金額を上乗せさせることができないからです。

つまり、ズルをすることができないなら定款に記載しなくてもよいということです。

公証人にとってチェックする項目が少ないと仕事が楽ですから。

イ × 本肢を一言でまとめると、議決権を行使した後は何があろうと設立時発行株式の引受の取消をすることができません。ということです。

設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受の取消をすることができない。(会社102Ⅵ)

よって本肢は、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受の取消をすることができるとする点が誤っています。

ウ × 本肢を一言でまとめると、優先株式の優先権は株式に帰属するものであり、発起人だけに特別に帰属するものではないので、発起人が受ける「特別の利益」に該当しません。ということです。

よって、発起人に対して剰余金の配当を優先して受け取ることができる優先株式の割当がされるときであっても、発起人が受ける特別の利益として定款に記載することなくその効力を生じます。

エ 〇 財産引受を一言でまとめると、会社の成立を停止条件とした売買契約のことです。

具体的な事例を想定しましょう。

Aさんという株式引受人(第三者でもいいところが現物出資と違います。)がいます。

Aさんは10万円しか価値のない中古車を会社成立後に、100万円で引受けてもらうという停止条件付売買契約を締結したとします。

そうすると、Cさんは90万円も利益を得ることになってしまいます。これは会社債権者を害する行為といえます。

財産引き受けは定款の相対的記載事項であり、定款に記載又は記録のない財産引受はその効力を生じない。(会社28②)

よって、株式会社がその成立後に株主総会の特別決議等で定款に記載又は記録のない財産引き受けを承認し追認しても、瑕疵が治癒されて有効とはなりません。

オ 〇 会社の設立の無効の訴えにかかる請求を認容する判決が確定した時は、当該判決において会社の設立は無効とされ、将来に向かってその効力を失います。(会社839)

ちなみに、会社法で判決の効力が遡及する場合は株主総会決議取消の訴えの効力だけと覚えておきましょう。

なお、新設合併無効の訴え及び新設分割無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合、設立会社の財産は、消滅会社又は分割会社に帰属するため清算手続きは行われません。

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03

正解は「エ、オ」です。

ア…誤りです。株式会社の設立において裁判所が決定する検査役の報酬は、定款に記載しなければ効力を生じないものからは除外されています(会社法33条3項、28条4号かっこ書、会社法施行規則5条3号)。定款に記載しなければ効力を生じないのは、発起人自身の報酬です(会社法28条3号)。

イ…誤りです。設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができません(会社法102条6項)。

ウ…誤りです。設立に際して発起人が受ける報酬その他の特別の利益は、原始定款に記載し、検査役の調査を受けなければ効力を生じません(会社法28条2号)。ここでいう「特別の利益」は、「設立の功労に対し継続的に付与される財産的利益」のことで、利益配当の優先権、募集株式の引受けの優先権、帳簿閲覧権、会社施設利用権などを指します。これらは株式から得られる利益とは区別されるため、剰余金の配当を優先して受けられる株式を発起人に割り当てる場合であっても、その割当ては発起人が自由に決めることができ、特別の利益として定款に記載する必要はありません。

エ…正しいです。定款に記載のない財産引受は無効です(会社法28条2号)。成立後の会社が株主総会の特別決議で当該財産引受を追認しても、有効とはならないとされています(最判昭28・12・3)。

オ…正しいです。設立を無効とする判決が確定した場合、当該設立は、将来に向かってのみ効力を失います(会社法839条)。またその場合、当該株式会社は清算会社となり、清算が開始されます(会社法475条2号)。

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