ア × 原則として、株式会社を設立する場合、株式会社の負担する設立に関する費用は、定款に記載しなければ、その効力を生じません。(会社28④)
しかし、例外が4つあります。
1.定款作成にかかる印紙税
2.株式払込取扱機関への手数料及び報酬
3.変態設立事項の調査をする検査役への報酬
4.株式会社の設立の登記の登録免許税
以上の4つの事項は定款に記載しなくても効力を生じます。
なぜなら、以上の4つの事項は会社が設立のために必ず負担しなければなりませんし、その額も定まっているため、発起人がズルをして会社に負担させる金額を上乗せさせることができないからです。
つまり、ズルをすることができないなら定款に記載しなくてもよいということです。
公証人にとってチェックする項目が少ないと仕事が楽ですから。
イ × 本肢を一言でまとめると、議決権を行使した後は何があろうと設立時発行株式の引受の取消をすることができません。ということです。
設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受の取消をすることができない。(会社102Ⅵ)
よって本肢は、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受の取消をすることができるとする点が誤っています。
ウ × 本肢を一言でまとめると、優先株式の優先権は株式に帰属するものであり、発起人だけに特別に帰属するものではないので、発起人が受ける「特別の利益」に該当しません。ということです。
よって、発起人に対して剰余金の配当を優先して受け取ることができる優先株式の割当がされるときであっても、発起人が受ける特別の利益として定款に記載することなくその効力を生じます。
エ 〇 財産引受を一言でまとめると、会社の成立を停止条件とした売買契約のことです。
具体的な事例を想定しましょう。
Aさんという株式引受人(第三者でもいいところが現物出資と違います。)がいます。
Aさんは10万円しか価値のない中古車を会社成立後に、100万円で引受けてもらうという停止条件付売買契約を締結したとします。
そうすると、Cさんは90万円も利益を得ることになってしまいます。これは会社債権者を害する行為といえます。
財産引き受けは定款の相対的記載事項であり、定款に記載又は記録のない財産引受はその効力を生じない。(会社28②)
よって、株式会社がその成立後に株主総会の特別決議等で定款に記載又は記録のない財産引き受けを承認し追認しても、瑕疵が治癒されて有効とはなりません。
オ 〇 会社の設立の無効の訴えにかかる請求を認容する判決が確定した時は、当該判決において会社の設立は無効とされ、将来に向かってその効力を失います。(会社839)
ちなみに、会社法で判決の効力が遡及する場合は株主総会決議取消の訴えの効力だけと覚えておきましょう。
なお、新設合併無効の訴え及び新設分割無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合、設立会社の財産は、消滅会社又は分割会社に帰属するため清算手続きは行われません。