司法書士の過去問
令和3年度
午後の部 問41

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問題

令和3年度 司法書士試験 午後の部 問41 (訂正依頼・報告はこちら)

民事保全に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

ア  仮の地位を定める仮処分命令の申立てについて口頭弁論を経た場合には、その申立てについての裁判は、判決をもってしなければならない。
イ  100万円の貸金返還請求権を被保全権利とする債権の仮差押命令の申立てについては、簡易裁判所に申し立てることができる。
ウ  民事保全の手続に関しては、民事訴訟法の文書提出命令に関する規定は準用されない。
エ  仮差押命令の申立てを却下する決定は、債務者に告知しなければならない。
オ  仮差押命令に対する保全異議の申立ては、本案の訴えが提起された後であってもすることができる。
  • アイ
  • アエ
  • イオ
  • ウエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

ア × 民事保全手続きは、急いでいます。そして、内密に行います。

上記を常に頭に入れておいて問題を解きましょう。

民事保全手続きは、口頭弁論を経た場合であってもすべて決定手続きとされています。

なぜなら、判決は時間がかかるからです。

イ 保全命令事件は、翻案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄します。(民保12Ⅰ)

よって、140万円を超えないので簡易裁判所に申し立てることができます。

ウ 〇 民事保全手続きは、急いでいます。そして、内密に行います。

保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。(民保13Ⅱ)

そして、疎明は、即時に取り調べることができる証拠によらなければなりません。

文書提出命令は日数がかかります。

よって、即時に取り調べることができないので文書提出命令に関する規定は民事保全には認められていません。

エ × 民事保全手続きは、急いでいます。そして、内密に行います。

保全命令の申し立てを却下する決定及びこれに対する即時抗告を却下する決定は、債務者に対し口頭弁論又は審尋の期日の呼出しがされた場合を除き、債務者に告知することを要しません。(民保規16Ⅰ)

なぜなら、民事保全手続きは内密に行うからです。

オ 〇 裁判所が仮差押命令を発した時は、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができます。(民保26)

そして、保全異議の申し立てに、期間制限はありません。

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02

正解は2です。

ア…誤りです。仮の地位を定める仮処分など、民事保全手続に関する裁判は、口頭弁論を開くかどうかは任意とされていますが(民事保全法3条)、口頭弁論を開いたか否かにかかわらず、その裁判は「決定」をもってなされます(民事訴訟法87条1項ただし書、H16過去問)。

イ…正しいです。仮差押命令の管轄裁判所は、➀本案の管轄裁判所、または、②仮に差し押さえるべき物もしくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所、となっています(民事保全法12条1項)。本問では、140万円以下の貸金返還請求ですので、本案も簡易裁判所で扱うことができ(裁判所法33条1項1号)、保全手続の裁判も簡易裁判所に訴えることができます。

ウ…正しいです。民事保全手続に関しては、民事訴訟に関する手続が可能な限り準用されますが(民事保全法7条)、民事保全手続では、保全すべき権利または権利関係及び保全の必要性は疎明で行われます(民事保全法13条2項)。疎明は、即時に取り調べることができる証拠のみによってしなければならないので(民事訴訟法188条)、文書提出命令によって提出させなければならない書証は疎明に使うことができません。

エ…誤りです。保全命令の申立てを却下する決定、およびこれに対する即時抗告を却下する決定は、債務者に対し口頭弁論または審尋の期日の呼出しがされた場合を除き、債務者に告知することを要しません(民事保全規則16条1項)。民事保全手続は、債務者による保全目的物の処分や変更を禁止するために行われますので、申立てが却下された場合でも、債務者に通知がいくことはありません。

オ…正しいです。保全異議の申立ては、その期間に制限は特にありません(民事保全法26条、H16過去問参照)。本案の訴えがされる前後にかかわらず提起することができます。

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03

正解 2

ア 誤り

民事保全手続についての裁判は、口頭弁論を経ないで行うことができ、すべて決定の方式で行われます(民保法16条参照)。

イ 正しい

保全命令の申立ては本案の管轄裁判所も管轄します(民保法12条1項)。

したがって、100 万円の貸金返還請求権を被保全権利とする債権の仮差押命令の申立ては、簡易裁判所が管轄権を有します(裁判所法33条1項1号)。

ウ 正しい

民事保全手続における証明は原則として疎明によるため(民保法13条2項)、これに反する文書提出命令に関する規定は準用されていません(民訴法220条乃至225条)。

エ 誤り

保全命令の申立てを却下する決定は、債務者に対し口頭弁論または審尋の期日の呼出しがされた場合を除き、債務者に告知する必要はありません(民保規16条1項)。

オ 正しい

保全異議の申立ては、保全命令が有効に存在し、申立ての利益があれば、いつでも申立てることが可能です。

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