司法書士の過去問
令和3年度
午後の部 問54

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問題

令和3年度 司法書士試験 午後の部 問54 (訂正依頼・報告はこちら)

相続又は遺贈を登記原因とする所有権の移転の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
なお、法務局における遺言書の保管等に関する法律については、考慮しないものとする。

ア  相続を原因とする所有権の移転の登記の申請をするに際して、相続があったことを証する除籍又は改製原戸籍の一部が滅失していることにより、その謄本を添付することができない場合において、戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え、除籍等の謄本を交付することができない旨の市町村長の証明書を添付したときは、「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書の添付を要しない。
イ  自筆証書による遺言において指定された遺言執行者が、当該遺言に基づいて登記の申請をするときは、家庭裁判所が作成した遺言書の検認調書の謄本を遺言執行者の権限を証する情報として提供することができる。
ウ  自筆証書による遺言書に日付の自署がない場合において、当該遺言書について家庭裁判所の検認を経たときは、当該遺言書を添付して遺贈を原因とする所有権の移転の登記の申請をすることができる。
エ  被相続人Aの相続人がB及びCである場合において、Aが所有権の登記名義人である土地について、その地目が墓地であるときは、Bは、当該土地をBが取得する旨の遺産分割協議の結果に基づいて、単独でAからBへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することはできない。
オ  被相続人が所有権の登記名義人である不動産について、胎児が相続人の一人である場合において、当該胎児の母は、当該胎児の出生前であっても、当該胎児が当該不動産を単独で取得する旨の遺産分割協議を行った旨が記載された遺産分割協議書を添付して、当該胎児を代理して相続を登記原因とする被相続人から当該胎児に対する所有権の移転の登記を申請することができる。
  • アイ
  • アウ
  • イオ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

ア 〇 結論から申し上げますと、「他に相続人はいない」旨の相続人全員による証明書を提供することを要しません。

「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市区町村長の証明書で足ります。

なお、「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市区町村長の証明書が提供できない場合、除籍謄本等の交付請求書等に、市町村担当の交付不能の文言が記載されたものを代わりに提供することが可能です。

イ 〇 原則として、遺言執行者が相続人の代理人として申請人となる場合には、当該代理権限を証する情報として、遺言書、及び遺言者の死亡を証する書面を提供する必要があります。

そして、検認済みの遺言書を紛失した場合、家庭裁判所の遺言検認調書謄本を提供することができます。

ウ × 自筆証書遺言によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法968Ⅰ)

遺言は厳格な要式行為なので日付の記載が欠けていたら無効です。

なお、検認手続きは遺言書の変造・隠匿の防止を目的として遺言書の原状を確認し、証拠保全をする手続きです。

よって、遺言者の真意に基づくかどうか、有効かどうか等の実質判断をするものではありません。

エ × 結論から申し上げますと、墳墓地でも普通の宅地と変わらず移転登記できます。

ちなみに、農地でも相続なら許可が不要です。

オ × 結論から申し上げますと、胎児のために遺産分割協議はできません。

ちなみに、胎児名義の相続又は遺贈の登記を申請することは認められています。

蛇足ですが、胎児名義で不法行為に基づく損害賠償請求もできます。

胎児名義で登記できるものだけを覚えておきましょう。

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02

正解 1

ア 正しい

先例(平28.3.11 民二219号)は、「除籍または改製原戸籍の一部が滅失等していることにより、その謄本を提供することができない場合には、戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え、除籍等の滅失等により除籍等の謄本を交付することができない旨の市町村長の証明書を提供して、相続登記を申請することができる。」としています。

イ 正しい

先例(平7.6.1 民三3102号)は、「家庭裁判所の遺言検認調書の謄本を遺言執行者の資格を証する書面として取り扱うことができる。」としています。

ウ 誤り

先例(昭26.8.31 民甲1754号)は、「日付の記載がない遺言書は、無効であるから、それに基づき遺贈の登記申請をすることはできない。」としています。

エ 誤り

先例(昭35.5.19 民甲1130号)は、「墳墓地につき、共同相続人の遺産分割協議書を添付し、その一人が相続する旨の所有権移転の登記申請があったときは、受理して差し支えない。」としています。

オ 誤り

先例(昭29.6.15 民甲1188号)は、「胎児の出生前においては、相続関係が未確定の状態にあるので、胎児のために遺産分割その他の処分行為をすることはできない。」としています。

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03

ア ○

除籍などの戸籍が滅失していて「他に相続人はない」ことを証明できないときは市町村長の「除籍等の交付することができない」旨の証明書を添付すれば所有権移転登記ができます。これは先例によって認められたものです。

イ ○

遺言執行者が遺言の登記申請をする際、、家庭裁判所が作成した遺言書の検認調書の謄本を遺言執行者の権限を証する情報として提供することができます。

原則では遺言書の原本と戸籍(除籍)謄本を提出しますが、遺言書の原本が紛失したなど、原本を提出できない場合に使われます。

ウ ×

日付がない遺言書は無効になってしまいます。公正証書遺言の場合は公証人が遺言書を作成するのでこのようなことは起こりませんが、自筆証書遺言の場合は遺言者一人でも作成できるので日付を書き忘れるということが起こり得ます。また、押印もないと同じように無効になります。

エ ×

地目が墓地である土地でも相続を原因として所有権移転登記をすることは可能です。

基本的には民法897条による承継を原因とすることになっていますが、現況が墓地であるかは登記官には分からないので、相続を原因として登記することも認められています。

ちなみに墓地は祭祀財産なので、相続財産ではなく、遺産分割の対象にはなりません。

オ ×

胎児は民法886条で相続においては生まれたものとみなしているので相続人になることができ、相続登記も行うことができます。しかし、代理人を立てたとしても遺産分割協議には参加できません。出生後はもちろん協議に参加できますが、親権者と利益相反になる可能性があるときは特別代理人の選任が必要です。

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