司法書士の過去問
令和3年度
午後の部 問58

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問題

令和3年度 司法書士試験 午後の部 問58 (訂正依頼・報告はこちら)

登記記録に次のような記録(抜粋)がある甲区分建物及びその敷地権である旨の登記がされている乙土地の権利の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
なお、甲区分建物及び乙土地には権利部(乙区)の登記記録はないものとし、各登記の申請は令和3年7月1日に行うものとする。また、乙土地に関して建物の区分所有等に関する法律第22条第1項ただし書の規約(以下「分離処分可能規約」という。)はないものとする。

ア  乙土地の甲区2番所有権移転仮登記の本登記を申請するときは、登記原因証明情報として、乙土地について新たに分離処分可能規約を定めたことを証する情報を提供することを要する。
イ  乙土地のみを目的として令和3年3月1日売買予約を登記原因とする所有権の移転請求権の仮登記を申請するときは、登記原因証明情報として、乙土地について新たに分離処分可能規約を定めたことを証する情報を提供することを要しない。
ウ  令和3年3月10日設定を登記原因とする抵当権の設定の登記は、乙土地のみを目的として、申請することができる。
エ  乙土地のみを目的として、令和3年2月1日から同年3月1日までの給料債権の先取特権発生を登記原因とする一般の先取特権の保存の登記は、申請することができない。
オ  乙土地を承役地として、令和3年4月1日設定を登記原因とする地役権の設定の登記は、申請することができる。
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この過去問の解説 (3件)

01

まず、乙土地が敷地権となった日を確認しましょう。

令和3年3月3日です。

ア × 敷地権が生じた日よりも前の日を登記原因の日付とする所有権に関する仮登記がされているときは、当該仮登記に基づく本登記を申請するためには、前提として、建物の表示の変更登記を変更し、これにより敷地権の表示の登記及び敷地権である旨の登記を抹消することを要します。

つまり、99%不可能ということです。

よって、分離処分可能規約を定めたことを証する情報を提供しても仮登記を本登記できません。

イ 〇 土地が敷地権の目的となる前に登記原因が生じたものであれば、敷地権のみを目的とする所有権移転請求権の仮登記を申請することができます。

実務では99%本登記できないので、意味のない仮登記になってしまいます。

ウ × 原則として、敷地権である旨の登記がされた後は、敷地権のみを目的として担保権の設定の登記をすることはできません。

例外として、敷地権についての抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその原因が生じたものは登記をすることができます。

敷地権である旨の登記がされた後に分離処分に当たるか当たらないかという観点を常に持ちながら問題を解きましょう。

エ 〇 一般の先取特権は債務者の総財産に及びます。

一般の先取特権という文言を見たらすぐさま総財産とういうキーワードを思い浮かべるようにしましょう。

一般の先取特権の保存登記は登記原因の日付が敷地権の目的となる前であるか後であるかを問わず、敷地権のみを目的として申請することはできません。

なぜなら、債務者の総財産の上に成立するしている以上、区分建物とその敷地権とを一体的に公示するのが相当だからです。

オ 〇 地役権について、日本の土地は狭いから皆で仲良く使おうというイメージで押さえておいてください。

土地の所有権につき敷地権である旨の登記がされている場合でも、当該土地のみを目的とする地役権の設定登記を申請することができます。

例え敷地権の登記がされても地役権だから土地を仲良く使わなければなりません。

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02

正解 1

ア 誤り

敷地のみについて所有権の移転の本登記がされると、区分建物の所有権とその敷地権とが分離されることとなるため、登記記録上、区分建物に関する敷地権の登記を残したまま、当該所有権の移転登記をすることはできません(不登法73条2項)。

イ 正しい

所有権に係る仮登記は、敷地権が生じる前に登記原因が生じていたのであれば、敷地権の登記後であっても、区分建物についてのみ効力を有する登記として登記をすることが可能です(不登法73条2項但書き)。

この場合、分離処分可能規約を定めたことを証する情報を提供することは不要です。

ウ 誤り

敷地権付区分建物には、当該敷地権のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記を申請することはできません(不登法73条2項)。

もっとも、当該敷地権のみを目的とする質権もしくは抵当権に係る登記であって、当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものであれば、登記をすることができます(同項但書き)。

エ 正しい

敷地権である旨の登記がされている土地について、敷地権を目的とする一般の先取特権の保存の登記を申請することはできません。

一般の先取特権は、債務者の総財産の上に法律上当然に生ずるものであり、専有部分のみ又は敷地権のみについてその登記を認める必要はないためです。

オ 正しい

先例(昭58.11.10 民三6400号)は、「敷地権の登記後に登記原因が生じた場合であっても、用益権の設定登記は、土地のみ又は建物のみを目的とするものとして申請することができる。」としています。

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03

ア ×

この問題では甲区2番所有権移転仮登記が令和2年12月1日にされ、その後令和3年3月3日に敷地権が設定、3月12日に敷地権の登記がされています。

このとき、分離処分可能規約をつけて乙土地の所有権移転本登記をしたら、建物には敷地権が残ったままになってしまいます。

よって、敷地権の登記抹消をしなければなりません。

イ ○

所有権移転請求権の仮登記は、敷地権の目的になる前に登記原因が生じていれば、分離処分禁止の例外となります。このとき分離処分可能規約を定めたことを証する情報の提供は必要ありません。

ウ ×

敷地権である旨の登記を行うと、区分建物と敷地利用権は一体で処分されることになります。よって、土地のみを目的として抵当権を設定することはできません。

エ ○

給料債権のような原因から生じた一般の先取特権は債務者の総財産の上に持つことが定められています。よって土地のみを目的とすることができません。

ちなみに、一般の先取特権は給料のほかには共益の費用、葬式の費用、日用品の供給があります。

オ ○

敷地権の登記が生じていても、土地のみに地役権を設定することは可能です。

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