司法書士の過去問
令和3年度
午後の部 問66

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問題

令和3年度 司法書士試験 午後の部 問66 (訂正依頼・報告はこちら)

株式会社の吸収合併による変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア  消滅会社の資産に存続会社の株式が含まれる場合には、吸収合併により消滅会社から承継することによって存続会社の自己株式となる株式を含めて、消滅会社の株主に交付する存続会社の株式の数を定めた合併契約書を添付して、吸収合併による変更の登記を申請することができる。
イ  吸収合併における承継債務額が承継資産額を超える場合には、当該吸収合併による変更の登記の申請書には、存続会社の株主全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。
ウ  消滅会社が債権者保護手続に係る公告を官報及び定款の定めに従って電子公告の方法によりした場合には、不法行為によって生じた消滅会社の債務の債権者がいるときであっても、吸収合併による変更の登記の申請書には、当該債権者に対して各別の催告をしたことを証する書面を添付することを要しない。
エ  株式会社Aを存続会社とし、株式会社B及び株式会社Cを消滅会社とする吸収合併の場合に、合併契約書が1通で作成されたときは、吸収合併による変更の登記の申請書には、登記すべき事項として株式会社B及び株式会社Cを合併した旨を一括して記載しなければならない。
オ  消滅会社の資産に存続会社の株式が含まれる場合には、吸収合併による変更の登記の申請書には、存続会社が当該株式に関する事項を存続会社の株主に対して通知したことを証する書面を添付しなければならない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

ア 〇 吸収合併消滅会社が吸収合併存続会社の株式を有する場合、吸収合併存続会社は吸収合併により吸収合併消滅会社から承継する吸収合併存続会社の株式を消滅会社の株主に交付することができます。

イ × 実務では株主全員の同意はほぼ無理ゲーという感じで捉えられています。

吸収合併存続会社が承継する吸収合併消滅会社の承継債務額が承継資産額を超える場合、取締役は、株主総会において、その旨を説明しなければなりません。

「株主の皆さん。わが社はあえて、借金まみれの会社を吸収します。」という具合です。

ウ 〇 本肢は吸収分割の知識との混同を狙った引っ掛け問題です。

吸収合併消滅会社が債権者保護手続きに係る公告を二重公告でした場合は、例え不法行為債権者がいても各別の催告の必要はありません。

これに対し、吸収分割の場合は不法行為債権者がいたら各別の催告が必ず必要です。

エ × 2社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を1通の吸収合併契約書に基づき同時に行う場合、消滅会社ごとに登記すべき事項を記載しなければなりません。

合併は会社にとって非常に重大なことなのです。よって、まとめて記載することはできません。

オ × 承継する吸収合併消滅会社の資産に存続会社の株式が含まれる場合、取締役は、吸収合併契約の承認に係る株主総会において当該株式に関する事項を説明しなければなりません。

「株主の皆さん。今回の合併によってやむを得ない事由により自己株式を取得してしまいますよ。」という具合です。

しかし、当該株式に関する事項を存続会社の株主に対して通知したことを証する書面を添付しなければならないとする規定はありません。

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02

ア ○

吸収合併をするときにおいて、消滅会社の資産に存続会社の株式が含まれている場合、取締役が株主総会でこの株式について説明した後、吸収合併契約書を添付すれば、吸収合併の変更登記を申請することができます。

イ ×

吸収合併によって承継債務額が承継資産額を上回った場合、つまり合併で損が生じた場合、取締役はそのことを株主総会で説明しなければなりません。

そして、株主総会の決議も必要ですが、株主全員の同意までは必要ありません。

ウ ○

債権者保護手続きを官報に公告する以外にも電子公告など、定款で定められた公告方法の二つの公告(いわゆるダブル公告)を行った場合は当該債権者に対する各別の催告をする必要はありません。

エ ×

複数の消滅会社を吸収合併するときにおいて、まとめて1通の合併契約書を作成する場合でも、消滅会社ごとに合併した旨を登記すべき事項として記載しなければなりません。

オ ×

アでも述べたように、消滅会社の資産に存続会社の株式が含まれている場合、取締役は株主総会で当該株式に関する事項を説明する必要はありますが、当該株式に関する事項を存続会社の株主に対して通知したことを証する書面の添付までは必要とされていません。

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03

正解 1

ア 正しい

存続会社は、合併前から保有していた自己株式だけでなく、合併時に消滅会社から承継する自己株式も、消滅会社の株主に交付することができると解されています。

したがって、合併の対価として消滅会社から承継する自己株式を含めて、消滅会社の株主に交付する存続会社の株式の数を定めた合併契約書を添付して、吸収合併による変更の登記を申請することができます。

イ 誤り

存続会社における吸収合併の承認は、原則として株主総会の特別決議によることになります(会社法795条1項、309条2項12号)。

これは、承継債務額が承継資産額を超える場合であっても同じです。

ウ 正しい

吸収合併消滅会社では、官報公告のほか、定款所定の公告方法によって債権者保護手続に係る公告を行うことにより各別の催告を省略することが認められています(会社法789条3項)。

この場合、吸収合併存続会社が行う吸収合併による変更登記の申請書には、これらの方法により公告したことを証する書面を添付すれば足り(商業登記法80条8号)、不法行為によって生じた吸収合併消滅会社の債務の債権者がいるときであっても、各別の催告をしたことを証する書面を添付する必要はありません。

エ 誤り

先例(平20.6.25 民商1774号)は、「存続会社が1通の合併契約書により複数の消滅会社との間で吸収合併をする場合であっても、吸収合併は消滅会社ごとに各別に行われたものであるため、吸収合併による変更の登記の申請書には、登記すべき事項として、各消滅会社ごとに各別に合併した旨を記載しなければならない。」としています。

オ 誤り

消滅会社の資産に存続会社の株式が含まれる場合、取締役は、吸収合併の承認に係る株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければなりません(会社法795条3項)。

もっとも、この場合において、吸収合併による変更登記の申請書に、存続会社が当該株式に関する事項を存続会社の株主に対して通知したことを証する書面の添付を要する旨の規定は存在しません。

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