未成年者の取消及び効果についての知識を問われています。
未成年者を含む制限行為能力者(未成年者のほか,成年被後見人,被保佐人,被補助人)の取消に伴う法律関係については,それぞれの制限行為能力者の項目だけでなく,民法120条以下の取消の項目(特に返還すべき範囲についての121条の2第3項)についてもテキストや条文で確認しておきましょう。
ア・・正しいです。
民法5条1項ただし書のとおりです。
5条1項本文では,未成年者が法律行為をするには,法定代理人の同意が必要と規定しています。
しかし,未成年者が権利を得るだけ(本問の債務の免除のほか,未成年者を受贈者とする負担付ではない贈与契約をすること等も含まれます)であれば,未成年者を含む制限行為能力者の保護という観点にも資するので,法定代理人の同意が例外的に不要となります。
イ・・誤りです。
民法102条本文では,「制限行為能力者が代理人としてした行為は,行為能力の制限によって取り消すことができない。」としていますので,本肢は,誤りです。
ウ・・誤りです。
民法120条1項では,行為能力の制限によって取り消すことができる者について,制限行為能力者本人だけでなく,代理人,承継人若しくは同意をすることができる者をあげています。
したがって,未成年者は,法定代理人の同意がなくても,単独で取り消すことができます。
エ・・正しいです。
未成年者は,一種又は数種の営業を許された未成年者は,その営業に関しては,成年者と同一の行為能力を有する(民法6条1項)ので,法定代理人の許可があった範囲については,成年者と同じです。
ですから,未成年者は,法定代理人から営業を許された行為については,取り消すことでができません。
オ・・誤りです。
取り消された行為は,初めから無効であったものとみなされます(民法121条)。
そして,民法121条の2第1項では,「無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は,相手方を現状に復させる義務を負う。」としています。
給付を受けた者は,相手方である未成年者に対し,原状回復義務を負いますが,その際,回復の範囲に限定はありません。
本肢の「債務の履行として給付を受けた相手方は、現に利益を受けている限度において、その給付について返還の義務を負う。」という部分は,「現に利益を受けている限度において」という箇所を削除すれば正しくなります。
おそらく,本肢は,「行為の時に制限行為能力者であった者は,現に利益を受けている限度で,返還の義務を負う(民法121条の2第3項後段)」という知識との混同を狙ったものと思われます。
前記の121条の2第3項は,未成年者等の制限行為能力者の保護を図るための規定と考えれば,本肢は誤りと判断がつきやすくなると思います。