司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問5
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問題
令和4年度 司法書士試験 午前の部 問5 (訂正依頼・報告はこちら)
代理に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 委任による代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。
イ 代理人が本人のためにすることを示さずに意思表示をした場合であっても、その権限内において本人のためにした行為は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
ウ 代理人が保佐開始の審判を受けた場合には、代理権は消滅する。
エ 同一人物が、債権者及び債務者双方の代理人として代物弁済をする場合であっても、債権者及び債務者双方があらかじめ許諾していたときは、無権代理行為とはみなされない。
オ 法人が代理人によって動産を買った場合において、売主が無権利者であることについて、当該法人の代表者が善意無過失であっても、代理人が悪意であったときは、当該法人は、当該動産を即時取得することはできない。
ア 委任による代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。
イ 代理人が本人のためにすることを示さずに意思表示をした場合であっても、その権限内において本人のためにした行為は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
ウ 代理人が保佐開始の審判を受けた場合には、代理権は消滅する。
エ 同一人物が、債権者及び債務者双方の代理人として代物弁済をする場合であっても、債権者及び債務者双方があらかじめ許諾していたときは、無権代理行為とはみなされない。
オ 法人が代理人によって動産を買った場合において、売主が無権利者であることについて、当該法人の代表者が善意無過失であっても、代理人が悪意であったときは、当該法人は、当該動産を即時取得することはできない。
- アイ
- アウ
- イオ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
代理に関する問題です。
アは誤りです。任意代理人と法定代理人、それぞれの復代理人に関する規定の相違を確実に覚えておきましょう。
「委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。」(民法104条)。
「法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。」(民法105条)。
イは誤りです。まず原則として、「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。」(99条1項)となります。そして、「代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。」(100条本文)と規定されています。「ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。」(100条但書)と規定されています。混乱しないようにしましょう。
ウは誤りです。代理権の消滅事由は、①本人の死亡、②代理人の死亡・代理人の破産手続き開始決定・後見開始審判が規定されています。補佐開始の審判は挙げられていません。
エは正しいです。「同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。」(108条)と規定されており、本肢は但書の場合です。
オは正しいです。「代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。」(101条1項)と規定されており、最高裁は、「法人における民法一九二条の善意・無過失は、その法人の代表者について決するが、代理人が取引行為をしたときは、その代理人について決すべきである。」と判断を示しています(最判昭47.11.21)。
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02
代理についての問題は引っかけが多いので,テキストや条文で基本的知識を確認しておきましょう。
ア・・誤りです。
委任による代理人が復代理人を選任できるのは,①本人の許諾を得たとき,又は②やむを得ない事由があるときの2つだけです(民法104条)。
104条は,委任による代理人についての規定ですので,法定代理人は,自己の判断で復代理人を選任できます。
しかし,委任による代理人には,自己の判断で復代理人を選任する権限はありません。
イ・・誤りです。
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は,自己のためにしたものとみなされます(民法100条本文)。ただし,相手方が,代理人が本人のためにすることを知り,又は知ることができたときは,本人に対して直接にその効力を生ずる(同条ただし書)としています。
ですから,本肢は,「相手方が・・・できたときは,」の部分が書かれていないので,誤りです。
ア・・誤りです。
委任による代理人が復代理人を選任できるのは,①本人の許諾を得たとき,又は②やむを得ない事由があるときの2つだけです(民法104条)。
104条は,委任による代理人についての規定ですので,法定代理人は,自己の判断で復代理人を選任できます。
しかし,委任による代理人には,自己の判断で復代理人を選任する権限はありません。
ウ・・誤りです。
代理権の消滅事由について,民法111条1項では,①本人の死亡,②代理人の死亡,③代理人の破産手続開始の決定,④代理人が後見開始の審判を受けたことの4つが規定されています。
しかし,代理人の保佐開始の審判は,代理権の消滅事由とはされていないので,本肢は誤りです。
イ・・誤りです。
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は,自己のためにしたものとみなされます(民法100条本文)。ただし,相手方が,代理人が本人のためにすることを知り,又は知ることができたときは,本人に対して直接にその効力を生ずる(同条ただし書)としています。
ですから,本肢は,「相手方が・・・できたときは,」の部分が書かれていないので,誤りです。
オ・・正しいです。
即時取得(民法192条)における善意無過失の有無の判断基準については,法人の場合,代表者を基準とするのが原則ですが,代表者が代理人により取引をしたときは,代理人を基準とすべきです(最判昭和47年11月21日)。
したがって,代理人が悪意であれば,法人は即時取得ができません。
ウ・・誤りです。
代理権の消滅事由について,民法111条1項では,①本人の死亡,②代理人の死亡,③代理人の破産手続開始の決定,④代理人が後見開始の審判を受けたことの4つが規定されています。
しかし,代理人の保佐開始の審判は,代理権の消滅事由とはされていないので,本肢は誤りです。
エ・・正しいです。
同一の法律行為について,代理人が当事者双方の代理人としてした行為は,代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし,債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については,この限りではありません(民法108条1項)。
したがって,本肢は正しいです。
本来,双方代理は,当事者のどちらかに不利益をもたらしかねないので,そのような結果を防止するため,無権代理とみなされるのが原則ですが,債務の履行や本人が許諾している場合は,本人の利益を害することがないので,無権代理とはなりません。
債務の履行の例として,弁済期の到来した代金の支払があげられます。
債務の履行ではありませんが,債務の履行に準ずるものとして,売買に基づく所有権移転登記の申請(大判昭和19年2月4日,最判昭和43年3月8日)があげられます。
エ・・正しいです。
同一の法律行為について,代理人が当事者双方の代理人としてした行為は,代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし,債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については,この限りではありません(民法108条1項)。
したがって,本肢は正しいです。
本来,双方代理は,当事者のどちらかに不利益をもたらしかねないので,そのような結果を防止するため,無権代理とみなされるのが原則ですが,債務の履行や本人が許諾している場合は,本人の利益を害することがないので,無権代理とはなりません。
債務の履行の例として,弁済期の到来した代金の支払があげられます。
債務の履行ではありませんが,債務の履行に準ずるものとして,売買に基づく所有権移転登記の申請(大判昭和19年2月4日,最判昭和43年3月8日)があげられます。
オ・・正しいです。
即時取得(民法192条)における善意無過失の有無の判断基準については,法人の場合,代表者を基準とするのが原則ですが,代表者が代理人により取引をしたときは,代理人を基準とすべきです(最判昭和47年11月21日)。
したがって,代理人が悪意であれば,法人は即時取得ができません。
以上から,エとオが正しいといえます。
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03
代理に関する問題です。
アは誤りです。
復代理人の選任は任意代理については本人の許可またはやむをえない理由があるときだけ認められています(104条)
これは「その人だから任せた」のに、復代理人を勝手に決められて勝手に他人に任せることになるのはおかしいからです。
イは誤りです。
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は自己のためにしたものみなします。ただし、相手方が代理人が本人のためにすることを知りまたは知ることができたときは本人に対して直接効果を生じます。(100条)
ウは誤りです。
代理人の代理権の消滅原因は、死亡・破産開始決定・後見開始の審判になります。(108条1項)
エは正しいです。
双方代理については両方の許可があれば可能です。(108条)
オは正しいです。
代表者が代理を使って取引をしたのなら、代理人を基準に考えます。(101条1項)
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