司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問6
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問題
令和4年度 司法書士試験 午前の部 問6 (訂正依頼・報告はこちら)
時効に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 貸金の返還の訴えが提起された後、その訴えが取り下げられた場合には、時効の完成猶予の効力は生じない。
イ 債権者が債務者の財産に仮差押えをした場合には、時効の完成が猶予され、その事由が終了した時から、新たに時効が進行する。
ウ 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされ、時効の完成が猶予されている間に、再度、権利についての協議を行う旨の合意がされた場合においては、当該合意による時効の完成猶予の効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
エ 催告によって時効の完成が猶予されている間に、再度の催告があった場合には、再度の催告があった時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
オ 執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより財産開示手続が実施された場合には、その事由が終了するまでの間は、時効は完成しない。
ア 貸金の返還の訴えが提起された後、その訴えが取り下げられた場合には、時効の完成猶予の効力は生じない。
イ 債権者が債務者の財産に仮差押えをした場合には、時効の完成が猶予され、その事由が終了した時から、新たに時効が進行する。
ウ 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされ、時効の完成が猶予されている間に、再度、権利についての協議を行う旨の合意がされた場合においては、当該合意による時効の完成猶予の効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
エ 催告によって時効の完成が猶予されている間に、再度の催告があった場合には、再度の催告があった時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
オ 執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより財産開示手続が実施された場合には、その事由が終了するまでの間は、時効は完成しない。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
時効に関する問題です。
アは誤りです。
裁判上の請求や支払督促などの事由があるには、その事由が終了するまでの間は、時効は、完成しないと規定されています(民法147条1項)。そして、「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する」までの間は、時効は、完成しないと規定されています(同条括弧書)。本肢のように、訴えが取り下げられた場合は括弧書に当たります。
イは誤りです。仮差押えと仮処分の事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない(時効の完成猶予)と規定されています(149条)。「新たに時効が進行」(時効の更新)するわけではありません。
ウは正しいです。再度の合意による時効の完成の猶予は最長でも、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年までです(151条2項)。
エは誤りです。「催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。」と規定されています(150条2項)。何度も催告する暇があったら別の本格的な手続きに入ることができます。
オは正しいです。強制執行や担保権の実行、担保権の実行としての競売の例による競売、財産開示手続などの事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しないと規定されています(148条)。
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02
時効の完成の障害に関する問題です。
どのようなときに時効が完成するか又はしないのかを場合分けして覚えましょう。
(例:裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新,強制執行等による時効の完成及び更新,仮差押え等による時効の完成猶予,催告等による時効の完成猶予,「協議を行なう旨の合意」による時効の完成猶予等)
ア・・誤りです。
「貸金の返還の訴え」=「裁判上の請求」(民法147条1項1号)です。
そして,民法147条1項かっこ書きでは「(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては,その終了の時から6か月を経過する)までの間は,時効は完成しない。」旨規定されています。
「訴えの取下げ」は,前述の「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって・・その事由が終了した場合」に該当します。
したがって,訴えの取下げによって確定すれば,時効は完成します。
よって,本肢は誤りです。
エ・・誤りです。
民法150条1項では「催告があったときは,その時から6か月を経過するまでの間は,時効は完成しない。」と規定し,同条2項で「催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は,前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。」と規定しています。
つまり,催告が有効なのは,最初の1回だけになります。
したがって,本肢は,誤りです。
ア・・誤りです。
「貸金の返還の訴え」=「裁判上の請求」(民法147条1項1号)です。
そして,民法147条1項かっこ書きでは「(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては,その終了の時から6か月を経過する)までの間は,時効は完成しない。」旨規定されています。
「訴えの取下げ」は,前述の「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって・・その事由が終了した場合」に該当します。
したがって,訴えの取下げによって確定すれば,時効は完成します。
よって,本肢は誤りです。
オ・・正しいです。
選択肢中の「財産開示手続」は,民事執行法196条のことです。
民法148条1項4号の「民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は・・」に該当します。
そして,同条1項本文によって「次に掲げる事由がある場合には,その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによって・・・その終了の時から6か月を経過する)までの間は,時効は完成しない」と規定されています。
財産開示手続は,その事由が終了するまでの間は,時効は完成しないことになります。
したがって,本肢は正しい肢です。
イ・・誤りです。
仮差押えは,更新事由に該当しません。
民法149条では,仮差押え等による時効の完成猶予を規定していますが,時効の更新は規定していません。
なぜかといいますと,仮差押え等は,本案の訴えが提起されるまでの間,時効の完成を阻止するにすぎない手続だからです。
したがって,「その事由が終了した時から、新たに時効が進行する。」という部分が誤りです。
ウ・・正しいです。
本肢は,民法151条2項に規定されています。
同項ただし書によれば,「5年を超えることができない。」と規定されています。
これは,最初と再度がいずれも「協議を行なう旨の合意」であったときのみ完成猶予の期間を最大で5年まで延長できることを意味します。
最初が催告で,再度が「協議を行なう旨の合意」の場合や,最初が「協議を行なう旨の合意」で,再度が「催告」の場合は,いずれも完成猶予の期間は延長されません。
本肢は,最初と再度がいずれも「協議を行なう旨の合意」ですので,最大5年まで時効の完成猶予がなされます。
したがって,本肢は正しいです。
イ・・誤りです。
仮差押えは,更新事由に該当しません。
民法149条では,仮差押え等による時効の完成猶予を規定していますが,時効の更新は規定していません。
なぜかといいますと,仮差押え等は,本案の訴えが提起されるまでの間,時効の完成を阻止するにすぎない手続だからです。
したがって,「その事由が終了した時から、新たに時効が進行する。」という部分が誤りです。
エ・・誤りです。
民法150条1項では「催告があったときは,その時から6か月を経過するまでの間は,時効は完成しない。」と規定し,同条2項で「催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は,前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。」と規定しています。
つまり,催告が有効なのは,最初の1回だけになります。
したがって,本肢は,誤りです。
ウ・・正しいです。
本肢は,民法151条2項に規定されています。
同項ただし書によれば,「5年を超えることができない。」と規定されています。
これは,最初と再度がいずれも「協議を行なう旨の合意」であったときのみ完成猶予の期間を最大で5年まで延長できることを意味します。
最初が催告で,再度が「協議を行なう旨の合意」の場合や,最初が「協議を行なう旨の合意」で,再度が「催告」の場合は,いずれも完成猶予の期間は延長されません。
本肢は,最初と再度がいずれも「協議を行なう旨の合意」ですので,最大5年まで時効の完成猶予がなされます。
したがって,本肢は正しいです。
オ・・正しいです。
選択肢中の「財産開示手続」は,民事執行法196条のことです。
民法148条1項4号の「民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は・・」に該当します。
そして,同条1項本文によって「次に掲げる事由がある場合には,その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによって・・・その終了の時から6か月を経過する)までの間は,時効は完成しない」と規定されています。
財産開示手続は,その事由が終了するまでの間は,時効は完成しないことになります。
したがって,本肢は正しい肢です。
以上から,ウとオが正しいといえます。
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03
時効に関する問題です。
アは誤りです。
裁判上の請求は「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合」にあたるため,その終了の時から6か月を経過するまで時効は完成しません。
ですので訴えが取り下げられた場合は6か月間は時効の完成は猶予されます。(民法147条1項)
イは誤りです。
仮差押え、仮処分の場合にはそれらが終了したときから6か月間の間は時効は完成しません。(149条)新たに時効が進行するということではありません。
ウは正しいです。
権利についての協議を行う旨の合意が書面でされ、時効の完成が猶予されている間に、再度、権利についての協議を行う旨の合意がされた場合は再度完成猶予がされますが時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることはできません。
エは誤りです。
協議を行う旨の合意がされた時とは違いこの場合は催告を繰り返しても猶予期間は延長されません。
オは正しいです。
強制執行や担保権の実行、財産開示手続または第三者からの情報取得手続の申立ての取下げまたは取消しによって手続が終了したときはその終了の時から6か月を経過するまで時効の完成は猶予されます。(148条)
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