選択肢4. ウオ
ウ・・正しいです。
この問題もイと同様,混同の問題ですが,イが物権の混同に関する問題であるのに対し,本肢は,債権の混同の問題です。
民法520条は,「債権及び債務が同一人に帰属したときは,その債権は消滅する。ただし,その債権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない。」と規定しています。
債権混同も物権混同と基本的には同じような考え方を取ります。
本肢の場合は,BのAに対する債権を担保するため,甲土地上に一番抵当権を設定した後,Aが死亡し,Bが相続しています。はたして,Bの抵当権は,債権混同によって消滅するのか問題となります。
この場合もCという第三者がいるので,債権混同によってBの抵当権は消滅しないようにも思えます。
例えば,甲建物をAがBに賃貸し,Bが賃借権の対抗要件を備えているところ,BがAから贈与を受けたが,Bが所有権移転登記を備えるまでの間に,Aが甲建物をCに売却してCが所有権移転登記を備えたという場合は,Bに酷なので,Bの賃借権は混同によって消滅しません。
しかし,本肢の場合は,Aという主体から相続によってBに変わっただけであり,相続人は被相続人と同一とみなすことができます。
そうすると,先ほどの賃借権のケースとは異なり,Cの権利を害することになりません。
ですから,Bの抵当権は消滅します。
相続だけでなく,合併,債権の譲受けの場合は,混同によって原則どおり消滅すると覚えておけばいいと思います。
オ・・正しいです。
本肢は,選択肢エと異なり,不動産の付合の例外的なケースの問題です。
民法242条ただし書では「他人が権原により不動産に附属させた物の所有権は,その他人に留保される」としています。
もっとも,不動産に附属させた物が独立の存在を失い,不動産の構成部分となっている場合(強い付合)には,同条ただし書は適用されず,物の所有権は他人に留保されません(最判昭和44年7月25日)。
この判例だけ読んでもわかりにくいですが,強い付合の例としてベランダを作った場合を想定するといいかもしれません。
ベランダだけですと,独立の存在が認められない場合に該当します。
そのような場合には,本肢のように,Aの所有する甲建物に、賃借人BがAの承諾を得て増築をした場合において、当該増築部分が甲建物の構造の一部をなし、それ自体では取引上の独立性を有しないときに該当します。
したがって,Aが当該増築部分の所有権を取得しますので,本肢は正しい肢といえます。