司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問9
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問題
令和4年度 司法書士試験 午前の部 問9 (訂正依頼・報告はこちら)
物権の得喪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aの所有する甲土地の中からBが埋蔵物を発見した場合において、その所有者が判明しないときは、Bが当該埋蔵物の単独所有権を取得する。
イ Aの所有する甲土地にBの地上権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCの抵当権が設定され、その旨の登記がされた場合において、Bが甲土地の所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。
ウ Aの所有する甲土地に、Aに対する債権を被担保債権とするBの抵当権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCの抵当権が設定され、その旨の登記がされた場合において、BがAを単独で相続したときは、Bの抵当権は消滅する。
エ Aの所有する甲土地に、甲土地の使用収益の権原を有しないBが、その所有する種子をAに無断でまいた場合には、生育した苗の所有権は、Bに帰属する。
オ Aの所有する甲建物に、賃借人BがAの承諾を得て増築をした場合において、当該増築部分が甲建物の構造の一部をなし、それ自体では取引上の独立性を有しないときは、Aが当該増築部分の所有権を取得する。
ア Aの所有する甲土地の中からBが埋蔵物を発見した場合において、その所有者が判明しないときは、Bが当該埋蔵物の単独所有権を取得する。
イ Aの所有する甲土地にBの地上権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCの抵当権が設定され、その旨の登記がされた場合において、Bが甲土地の所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。
ウ Aの所有する甲土地に、Aに対する債権を被担保債権とするBの抵当権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCの抵当権が設定され、その旨の登記がされた場合において、BがAを単独で相続したときは、Bの抵当権は消滅する。
エ Aの所有する甲土地に、甲土地の使用収益の権原を有しないBが、その所有する種子をAに無断でまいた場合には、生育した苗の所有権は、Bに帰属する。
オ Aの所有する甲建物に、賃借人BがAの承諾を得て増築をした場合において、当該増築部分が甲建物の構造の一部をなし、それ自体では取引上の独立性を有しないときは、Aが当該増築部分の所有権を取得する。
- アイ
- アエ
- イウ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
所有権の特殊な形態,その他の取得形態及び混同についての問題です。
混同(民法179条),添付(民法242条),不動産の付合(民法242条),動産の付合・混和・加工(民法243条ないし246条),無主物の帰属(民法239条)などがあげられます。
これらは細かい論点ですが,知識の整理を図っておかないと出題されたときに間違えます。
そうはいっても,この論点以外に時間をかけるべき箇所がたくさんあります。
そこで,お持ちのテキストの図表などを活用して,場合によっては,スクリーンショットや写真を撮って,細切れ時間のときにスマートフォンで確認して知識の定着を図るというのが有効ではないかと思います。
ア・・誤りです。
埋蔵物については,「遺失物法の定めるところに従い,公告をした後6か月以内に所有者が判明しないときは,これを発見した者がその所有権を取得する(241条本文)」という規定があります。
ただし,例外があり,「他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については,これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する」(同条ただし書)という規定があります。
この例外規定にかんがみると,必ずしも発見者が所有権を単独で取得するわけではありません。
したがって,本肢は,誤りです。
イ・・誤りです。
民法179条に規定する混同の問題です。
民法179条1項本文は「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは,当該他の物権は消滅する。」と規定しています。
ですから,甲土地の所有権がAからBに移転し,地上権者であるBが同一人に帰属すれば,地上権は消滅するようにも思えます。
しかし,同項(179条1項)ただし書によれば,「その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない」とされています。
本肢では,甲土地には,Cの抵当権も設定されているのでCの権利を害することはできません。
したがって,Bの地上権は消滅しないので,本肢は誤りです。
ア・・誤りです。
埋蔵物については,「遺失物法の定めるところに従い,公告をした後6か月以内に所有者が判明しないときは,これを発見した者がその所有権を取得する(241条本文)」という規定があります。
ただし,例外があり,「他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については,これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する」(同条ただし書)という規定があります。
この例外規定にかんがみると,必ずしも発見者が所有権を単独で取得するわけではありません。
したがって,本肢は,誤りです。
エ・・誤りです。
これは,不動産の付合(民法242条)の原則的なケースに該当する問題です。
民法242条は「不動産の所有者は,その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。」と規定しています。
本肢と同様の事例で,Aが無権限でB所有の甲土地上に植物の種をまいたときは,その種は甲土地に付合するので,Bは種から生育した苗の所有権を取得する(最判昭和31年6月19日)としています。
つまり,種が土地に付合した以上,苗の所有権は土地の所有者にあるということです。
本肢は,先ほどの判例の趣旨にかんがみて,Bが甲土地の所有権者であるAに無断で種をまいたので,生育した苗の所有権はBではなく,Aに帰属します。
イ・・誤りです。
民法179条に規定する混同の問題です。
民法179条1項本文は「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは,当該他の物権は消滅する。」と規定しています。
ですから,甲土地の所有権がAからBに移転し,地上権者であるBが同一人に帰属すれば,地上権は消滅するようにも思えます。
しかし,同項(179条1項)ただし書によれば,「その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない」とされています。
本肢では,甲土地には,Cの抵当権も設定されているのでCの権利を害することはできません。
したがって,Bの地上権は消滅しないので,本肢は誤りです。
ウ・・正しいです。
この問題もイと同様,混同の問題ですが,イが物権の混同に関する問題であるのに対し,本肢は,債権の混同の問題です。
民法520条は,「債権及び債務が同一人に帰属したときは,その債権は消滅する。ただし,その債権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない。」と規定しています。
債権混同も物権混同と基本的には同じような考え方を取ります。
本肢の場合は,BのAに対する債権を担保するため,甲土地上に一番抵当権を設定した後,Aが死亡し,Bが相続しています。はたして,Bの抵当権は,債権混同によって消滅するのか問題となります。
この場合もCという第三者がいるので,債権混同によってBの抵当権は消滅しないようにも思えます。
例えば,甲建物をAがBに賃貸し,Bが賃借権の対抗要件を備えているところ,BがAから贈与を受けたが,Bが所有権移転登記を備えるまでの間に,Aが甲建物をCに売却してCが所有権移転登記を備えたという場合は,Bに酷なので,Bの賃借権は混同によって消滅しません。
しかし,本肢の場合は,Aという主体から相続によってBに変わっただけであり,相続人は被相続人と同一とみなすことができます。
そうすると,先ほどの賃借権のケースとは異なり,Cの権利を害することになりません。
ですから,Bの抵当権は消滅します。
相続だけでなく,合併,債権の譲受けの場合は,混同によって原則どおり消滅すると覚えておけばいいと思います。
ウ・・正しいです。
この問題もイと同様,混同の問題ですが,イが物権の混同に関する問題であるのに対し,本肢は,債権の混同の問題です。
民法520条は,「債権及び債務が同一人に帰属したときは,その債権は消滅する。ただし,その債権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない。」と規定しています。
債権混同も物権混同と基本的には同じような考え方を取ります。
本肢の場合は,BのAに対する債権を担保するため,甲土地上に一番抵当権を設定した後,Aが死亡し,Bが相続しています。はたして,Bの抵当権は,債権混同によって消滅するのか問題となります。
この場合もCという第三者がいるので,債権混同によってBの抵当権は消滅しないようにも思えます。
例えば,甲建物をAがBに賃貸し,Bが賃借権の対抗要件を備えているところ,BがAから贈与を受けたが,Bが所有権移転登記を備えるまでの間に,Aが甲建物をCに売却してCが所有権移転登記を備えたという場合は,Bに酷なので,Bの賃借権は混同によって消滅しません。
しかし,本肢の場合は,Aという主体から相続によってBに変わっただけであり,相続人は被相続人と同一とみなすことができます。
そうすると,先ほどの賃借権のケースとは異なり,Cの権利を害することになりません。
ですから,Bの抵当権は消滅します。
相続だけでなく,合併,債権の譲受けの場合は,混同によって原則どおり消滅すると覚えておけばいいと思います。
オ・・正しいです。
本肢は,選択肢エと異なり,不動産の付合の例外的なケースの問題です。
民法242条ただし書では「他人が権原により不動産に附属させた物の所有権は,その他人に留保される」としています。
もっとも,不動産に附属させた物が独立の存在を失い,不動産の構成部分となっている場合(強い付合)には,同条ただし書は適用されず,物の所有権は他人に留保されません(最判昭和44年7月25日)。
この判例だけ読んでもわかりにくいですが,強い付合の例としてベランダを作った場合を想定するといいかもしれません。
ベランダだけですと,独立の存在が認められない場合に該当します。
そのような場合には,本肢のように,Aの所有する甲建物に、賃借人BがAの承諾を得て増築をした場合において、当該増築部分が甲建物の構造の一部をなし、それ自体では取引上の独立性を有しないときに該当します。
したがって,Aが当該増築部分の所有権を取得しますので,本肢は正しい肢といえます。
エ・・誤りです。
これは,不動産の付合(民法242条)の原則的なケースに該当する問題です。
民法242条は「不動産の所有者は,その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。」と規定しています。
本肢と同様の事例で,Aが無権限でB所有の甲土地上に植物の種をまいたときは,その種は甲土地に付合するので,Bは種から生育した苗の所有権を取得する(最判昭和31年6月19日)としています。
つまり,種が土地に付合した以上,苗の所有権は土地の所有者にあるということです。
本肢は,先ほどの判例の趣旨にかんがみて,Bが甲土地の所有権者であるAに無断で種をまいたので,生育した苗の所有権はBではなく,Aに帰属します。
オ・・正しいです。
本肢は,選択肢エと異なり,不動産の付合の例外的なケースの問題です。
民法242条ただし書では「他人が権原により不動産に附属させた物の所有権は,その他人に留保される」としています。
もっとも,不動産に附属させた物が独立の存在を失い,不動産の構成部分となっている場合(強い付合)には,同条ただし書は適用されず,物の所有権は他人に留保されません(最判昭和44年7月25日)。
この判例だけ読んでもわかりにくいですが,強い付合の例としてベランダを作った場合を想定するといいかもしれません。
ベランダだけですと,独立の存在が認められない場合に該当します。
そのような場合には,本肢のように,Aの所有する甲建物に、賃借人BがAの承諾を得て増築をした場合において、当該増築部分が甲建物の構造の一部をなし、それ自体では取引上の独立性を有しないときに該当します。
したがって,Aが当該増築部分の所有権を取得しますので,本肢は正しい肢といえます。
以上から,正しい肢は,ウとオになります。
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02
物権の得喪に関する問題です。
アは誤りです。細かい知識ですが、民法241条で「埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。」と規定されています。
イは誤りです。「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。」(179条本文)のが原則ですが、「ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」(同条但書)との規定もあり、本肢はそれに当たります。
ウは正しいです。本肢では、Bの被担保債権が混同により消滅(520条)することで、抵当権も付従性により消滅します。
エは誤りです。「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」(242条)と規定されており、権原を有さないBは所有権を有しません。
オは正しいです。「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」(242条)と規定されていますが、賃借権や承諾があっても適用はないとされます(最判昭44.7.25)。
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03
物件の得喪に関する問題です。
アは誤りです。
埋蔵物は他人の物の中から発見されたときは発見者及びその物の所有者が両者で等しい割合でその所有権を取得することになっています。
イは誤りです。
この場合Bの地上権付きの土地をCは取得することになります。
抵当権設定時にBへの地上権設定は登記されているのでCはそのことについてわかっているはずだからです。
ウは正しいです。
この場合債権は混同するため消滅してしまいますので抵当権も消滅します。
エは誤りです。
苗は土地にも付合しているため土地の所有者であるAに所有権が帰属されます。
オは正しいです。
賃借人が増設した部分について独立性がない場合は賃貸人のAに所有権は帰属します。
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