司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問23

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問題

令和4年度 司法書士試験 午前の部 問23 (訂正依頼・報告はこちら)

被相続人の配偶者の居住の権利に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、被相続人の共有持分についてのみ、配偶者居住権を成立させることができる。
イ  配偶者居住権は、居住建物の所有者の承諾を得た場合であっても、譲渡することができない。
ウ  配偶者短期居住権は、これを登記することにより、居住建物について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
エ  配偶者居住権の設定された建物の全部が滅失して使用及び収益をすることができなくなった場合には、配偶者居住権は消滅する。
オ  遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合であっても、他の共同相続人全員が反対の意思を表示したときは、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができない。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

被相続人の配偶者の居住の権利に関する問題です。

配偶者居住権と配偶者短期居住権は近年設けられた制度です(1028条以下)。

選択肢3. イエ

アは誤りです。1028条が被相続人の配偶者が配偶者居住権を取得する要件を定めていますが、但書で「被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合」は除かれています。

イは正しいです。「配偶者居住権は、譲渡することができない。」と明文で定められています(1032条2項)。

ウは誤りです。配偶者居住権は登記できます(1031条)が、配偶者短期居住権には同様の規定はありません。

エは正しいです。賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了の規定(616条の2)が準用されます(1036条)。

オは誤りです。「配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき」にも、遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができます(1029条2号)。

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02

配偶者居住権には「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」の2種類がありますが、それぞれの違いと共通点について押さえる必要があります。

配偶者短期居住権と配偶者居住権の違いについて主なものを2点説明します。

成立と登記の可否がそれぞれ異なります。最初に、配偶者短期居住権は、相続開始により当然に成立しますが、配偶者居住権は、①「遺産分割」、②遺贈、③死因贈与の3つのいずれかにより成立します。次に、配偶者短期居住権は登記できませんが、配偶者居住権は登記できます。

なお、配偶者短期居住権と配偶者居住権の共通点としては、いずれも無償であること、権利の譲渡ができない点で共通しています。これらを念頭において回答しましょう。

選択肢3. イエ

ア・・誤りです。

被相続人が居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、配偶者居住権を取得することができません(1028条1項柱書ただし書)。なぜなら、配偶者居住権は無償であり、存続期間は原則として終身ですので、この場合にも配偶者居住権を認めると、他の共有者の利益を害するおそれがあるからです。

イ・・正しいです。

冒頭に記載したとおり、配偶者居住権は譲渡できません(1032条2項)。なお、所有者の承諾を得ても、配偶者居住権を譲渡することはできません。さらに、配偶者短期居住権についても譲渡できません(1041条、1032条2項)。

ウ・・誤りです。

冒頭に記載したとおり、配偶者短期居住権は、登記等の第三者対抗要件を備えることができません。なお、配偶者居住権については、第三者対抗要件として、配偶者居住権の登記(不動産登記法3条9号、81条の2)ができます。

エ・・正しいです。

1036条・616条の2に記載されているとおりです。なお、配偶者居住権の消滅は、居住建物の全部滅失以外にも「①存続期間の満了(1036条・597条1項)、②居住建物取得者による消滅請求(1032条4項)、③配偶者による居住建物の取得(1028条2項参照。例外として、他の者がその共有持分を有するときは消滅しません)、④配偶者の死亡(1036条・597条3項)」によって消滅します。

オ・・誤りです。

冒頭に記載したとおり、配偶者居住権は遺産分割によっても取得できます。

遺産分割には、「協議」だけでなく、「審判」も含まれる(1029条参照)ので、他の相続人が反対していても、審判によって配偶者に居住権を取得させることができます。

まとめ

以上により、イとエが正しい記述になります。

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03

配偶者の居住の権利に関する問題です。

選択肢3. イエ

ア 誤りです。

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合においてその居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得しますただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りではありません。(1028条)

イ 正しいです。

配偶者居住権は譲渡をすることができません。(1032条2項)

配偶者居住権は高齢であることが多い被相続人の配偶者の保護のために、その住まいを確保する目的でできた制度です。

ウ 誤りです。

配偶者居住権は登記ができますが配偶者短期居住権は登記することができません。

エ 正しいです。

賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する(616条の2)という使用貸借及び賃貸借の規定の準用されています。

オ 誤りです。

配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるときは、遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができます。(1219条2号)

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